TL眺めていてもやもやしたので、とりあえず言語化。タイトルの通り「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」というのはどういうスキームを想定しているのかが知りたい。
私の立ち位置
2020年8月ぐらいまではいわゆる「検査抑制派」だった、具体的には「PCR検査をするかどうかは医師の判断による」。今でも2020年前半ぐらいについては以下のように考えている。
いわゆる「PCR抑制論者」狩りがすごいな。まず、「PCR抑制論」とはどういう条件を満たす言説で、その上で、どういう状況の下だとそれが不適切なのかを明らかにした上で批判しないと、たんなる後知恵の難癖になっちゃう。そうすると不完全情報下で発言したり、判断したりする人がいなくなっちゃうよ。
— next49 (@next49) 2021年4月12日
たとえば「PCR拡大論」について「日本国民全員にPCR検査を実施するのは無理難題だ」という風に批判したいた人に対して「日本国民全員にPCR検査を実施しろなんて誰も言っていない」みたいな反論をよく目にした。これは「PCR拡大論」がどういう言説なのか合意とれていないからの話。
— next49 (@next49) 2021年4月12日
「PCR検査抑制論者」への批判でPCR検査の偽陽性率に対する話があるけど、たぶん検査の一般論から話を始めると当然でてくる話。ただ、その後の検査体制の充実や熟練の結果、偽陽性率はあまり気にしなくても良くなってきたというのが私の認識。いつの発言なのかで批判が適当かどうかは変わる。
— next49 (@next49) 2021年4月12日
2020年秋から2021年春までに民間会社にPCR検査を発注できるようになったので、医者にかかってPCR検査を受けられなかったという時期はなくなったと認識している。以下の厚生労働省のページ「PCR検査の実施件数」を見ると2020年末で6万件~8万件ぐらい。現在は10万件~12万件ぐらい実施されている様子。
www.mhlw.go.jp
2021年8月現在の私のPCR検査についての考えは以下の状態が好ましいと思っている。受検できる場所は病院でも特設検査所でも構わない
- 「自分がPCR検査を希望すれば(数千円程度で)いつでも受験できる」
この考えからすれば、今のPCR検査体制は不十分であると認識している(濃厚接触者の定義を狭めるという話が聞こえてくるので)。緊急事態宣言や蔓延防止措置がでている地域については、保健所による濃厚接触者の追跡はあきらめて、陽性者当人から濃厚接触者と思われる人々に個別に連絡してもらうことにし、自発的にPCR検査受けてもらうようにしてもらえばよいのではないかと思う。
本題
「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」が実現した状態はどういうものなのだろうか?
PCR検査を実施するという点だと以下のやり方があると思う。
- 1. 医師あるいは保健所の判断の下でPCR検査が受けられる(現状の行政検査?)
- 2. 本人の希望の下でPCR検査が受けられる(PCR検査を受ける際の前提条件、例えば有症状や濃厚接触者であるとかの条件が無く本人の希望のみで受けられる)
- 3. 行政の判断の下で、ある特定の施設 or 職種 or 属性を持つ人全員に対して強制的にPCR検査を実施する
- 4. 行政の判断の下で、ある特定の施設 or 職種 or 属性を持つ人全員に対して強制的にPCR検査を定期的に実施する
陽性者の対処に対しては以下のやり方があると思う。
- a. 何も対処しない
- b. 保健所と連携しない&自主隔離(隔離するかどうかは任意)
- c. 保健所に報告&自主隔離(隔離するかどうかは任意)
- d. 保健所に報告&強制隔離(自宅 or ホテル or 病院)(現在の行政検査で陽性となった場合?)
組み合わせると以下のとおり。
PCR検査実施法/陽性者への対処 | 1: 医師判断 | 2: 本人希望 | 3: 強制単発 | 4: 強制定期 | |
a: 対処しない | × | × | × | × | |
b: 無連携&自主隔離 | 1-b | 2-b | 3-b | 4-b | |
c: 連携&自主隔離 | 1-c | 2-c | 3-c | 4-c | |
d: 連携&強制隔離 | 1-d | 2-d | 3-d | 4-d |
現状は1-dで、主として保健所のキャパシティによりPCR検査の実施が限界を迎えていると私は認識している。それに加えて、症状の急激な悪化可能性があるため、強制隔離の際に病床手配が必要となり、それが限界にきているという状況でもある。
ワクチン接種率があがり、重症化数が減れば2-d or 2-cにできるようになる(ただし、保健所の負担を下げるため、ICTを用いた緩い連携体制、自宅療養時の体調変化を察知する通報システムの構築が別途必要)。
「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」が実現した状態は2-dなのだろうか?それとも3-d, 4-dなのだろうか?
追記(8/25)
2020年8月のCOVID19有識者会議の記事。東京都の人口30%ぐらいをスクリーニング検査するときどのくらいの検査数が必要かが記載されていた。
www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp
従って、地域住民に対して、幅広く検査を行う事が効果的であるのは、市中感染が蔓延して有病率(事前確率)が高くなっており、かつ、十分な解析規模で実施することが前提条件となる。米国のニューヨーク州では、この考えでPCR検査が実施されており、新規感染者数の減少、死亡者数の減少を実現している。ニューヨーク州の7月30日現在のPCR検査の実施数は、5,746,822である[1]。ニューヨーク州の人口が、 1,945万人であるので、全人口の約30%に対して検査をしていることになる。東京都の人口の1,400万人に当てはめて考えれば、420万の検査数に相当する数字である。