メモ:乳腺外科医が準強制わいせつに問われた事件

リンク集

一審

控訴審

再現実験の話

実際、本訴訟の弁護側はもし被告人医師が乳房をなめた場合、どのくらいのDNA量が抽出できるか、大掛かりな再現実験も実施した。事件当日と時間帯・室温等をおおよそ同じ条件に設定し、病室のベッドの上で被告人医師に4人の女性の乳房をなめてもらう実験だった。

その結果、DNA量は0.005~0.122ナノグラム/マイクロリットルと、検察側データより数値が低く、さらに、ばらつきが生じた。このほかにも起訴内容に見合う4種類の再現実験を実施したが、DNA量1.612ナノグラム/マイクロリットルという数値との関連性は見いだせなかった。
福原麻希: 乳腺外科医の「わいせつ事件」で求刑、医療現場悩ます麻酔の幻覚より)

再鑑定云々の話

高橋正人弁護士は、今回の無罪判決を「非科学的な判決」と批判し、「鑑定資料を再鑑定できないかのように報道されているがそれは間違い」と話す。

警察庁の通達では、DNA鑑定の運用指針について、原資料の残りまたは鑑定後に生じた試料の残りを保存することとされており、今回の事件では、女性の胸が原資料で、胸を拭ったガーゼが試料にあたると指摘。

警視庁科学捜査研究所は、まずガーゼを半分に切り、もう半分を保存。片方のガーゼから抜いた4本の糸からアミラーゼを検出し、4本を抜いた後のガーゼから抽出液を作ってDNAを検出したという。

高橋弁護士は「今回、科捜研が廃棄したのは抽出液でありガーゼの半分は残っている」と指摘。

「判決は抽出液を捨ててはダメと言っているが、結果しか出ていないものを残しても信用性はない。経過が大事なので、再現可能性を残すため試料を残さなければならない。しかし、裁判官はそこに一言も触れていない」と批判する。

出口絢: 手術後わいせつ事件、女性を支援する弁護団結成 「非科学的な判決」と批判より)

確かに検察側証人の証言通り、論文投稿では検量線データの提出は求められない。だが、検量線があるから、第三者による検証が可能になる。今回は数字だけがワークシートに記載された。

 あるいは、検量線データがない場合、再度、検査をやり直せばいいが、そのために必要な前出のDNA抽出液も廃棄された。
リアルタイムPCR機器。下方の引き出しに検体を入れると、自動で数値が表示される
リアルタイムPCR機器。下方の引き出しに検体を入れると、自動で数値が表示され る

 このDNA抽出液の廃棄について、検察は「ガーゼの半分は残されているので、再鑑定は可能である」と主張する。検察側証人からも「再鑑定時はまったく触れられていないものを試料として使うことが大事」と証言があった。一方、大川裁判長は判決で「試料の残余(DNA抽出液)の保存は、ぜひとも必要だった」と指摘した。

 その理由は、前述したように唾液は変性し劣化しやすい。半分に切って残ったガーゼ片で再鑑定しても信用性に乏しいと判定される可能性が高い。

福原麻希: 手術後に胸なめた罪に問われた医師に無罪判決、問われた鑑定試料の保存より)

自慰していたという論点は?

一方、起訴状では、犯罪とされる事実として次の1つの行為のみが書かれている。

▽午後2時55分から3時12分頃までの間、

患者の着衣をめくって左乳房を露出させ、その左乳首をなめるなどした

勾留の時点では、第1行為の後、「患者が気づいたため、いったん退室」と記載され、2つの行為は分断されていたことが明記されていた。

ところが起訴状では、第2行為である自慰行為が消え、犯行は左乳首をなめるという第1行為のみとなり、それが行われた時間帯が変わった。

第2行為に関しては、勾留理由開示公判で弁護人が、ベッドの高さや関根医師の身長などから、ベッド上の患者は同医師の股間は見えないと指摘し、被害供述の信用性に強い疑問を投げかけていた。検察側は、立証困難な第2行為を落とす一方で、第1行為については鑑定結果で裏付け可能と判断したのだろう。
江川紹子:準強制わいせつで医師を起訴~広範な証拠開示が必要より)

第2回公判で医師の弁護団が《性的に過激な表現の多い作品に出ている女優》と評した話

以下の部分についてそんなことあり得るの?と思ったら、本当にそういう戦略とったみたい。

第2回公判で医師の弁護団は《性的に過激な表現の多い作品に出ている女優》などと純子さんを評した。純子さんは「私は芸能関係の仕事をしていますが、そんな仕事ではありません」と憤る。そのほかにも事件にまったく関係のない主張を続け、まるで純子さんが1日中、性的なことばかり考えているかのように貶めたという。
週刊女性PRIME: 乳腺外科医のわいせつ裁判で無罪判決、被害女性が涙の反論 より)

一体、何を狙って以下のことを証拠申請したのか。

なお、初公判の弁護側の冒頭陳述では、Aさんが露出度の高いビキニ姿で性的刺激が極めて強い容態を収録したDVDの発売発表会において、自らが自慰行為の対象になっていることを想像しながら収録に臨んだ旨を発言したことを報じたウエッブサイトのページを証拠申請したところ、裁判所は受け入れなかった。Aさんが自らのブログで、絆創膏が貼付された患側乳房を露出した写真や摘出した腫瘍の写真を公開していることも同様の扱いとなった。
佐藤一樹: Vol.036 柳原病院事件:女性患者をより不幸にする控訴に反対するより)