私は天皇制を維持するためには女系天皇を容認するしかないと考えているので、2024年10月の国連女性差別撤廃委員会の最終見解で皇位継承に触れられていることには異存はないが、なんで、国連が内政干渉っぽいことしてきたの?と疑問を持った。そこで、どういう経緯なのかネット検索して調べた結果をメモ。
www.sankei.com
国連女性差別撤廃委員会とは
大前提として、日本が「女子差別撤廃条約」を締結しているので、女性差別撤廃委員会の審査対象となっている。
女子差別撤廃委員会 (Committee on the Elimination of Discrimination against Women, CEDAW)とは、1979年12月の国連総会で採択し1981年に発効した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(通称「女子差別撤廃条約」、以下「条約」)に基づき、1982年に設置された条約の履行状況を監視する団体です。条約締約国による選挙で選ばれた女性の権利に関する専門家23 名が個人資格で委員を務め、日本からも1名が任命されています(委員の任期は4年、2年ごとに半数が改選)。なお、締約国は2024年6月現在で189か国、日本は1985年に締結しました。
どういう流れで審査が進むのか
Q 審査の仕組みは?
A 委員会の作業部会は、締約国についての懸案をもとに質問のリストをつくり、それぞれの政府がリストに基づいて報告する。NGOからの情報提供や、政府への対面の審査を経て、勧告を含む最終所見が出される。日本への審査は直近では2016年に行われた。
締約国が、条約上の義務をしっかり護るように、「国家報告制度」という仕組みがあります。
①締約国が定期的に国連に実施状況報告書を提出し、
②委員会が締約国代表を招いて「建設的対話」を行って、
③審議の結果を「総括所見」として締約国に勧告します。
その際、NGOが国内での女性のおかれた実態や性差別の状況を委員会に伝えることができます。
審査委員はどう選ぶのか
日本からの選出委員が審査委員に入ることはないとのこと。
こうした人権条約機関の委員は、人権分野において能力を認められた締約国(条約を批准している国)の国民の中から、締約国会議において選出され、個人の資格で職務を遂行しています。
ところで、その出身国について、委員会が調査をするとき、選出国出身の委員は公正な判断ができるのか、いろんなロビー活動が政府やNGO両方からあって、公平性がゆがめられるのではないか、ということが心配になります。
というわけで、各国の報告審査については、すべての人権条約機関は、公平性を維持するため、当該国出身の委員は審査に関わらないことを慣例とし、かつその作業方法を明文で確認しています。
女性差別撤廃委員会も、1998年の決定18/III「報告書の検討」において、「女性差別撤廃委員会は、実質においても外見においても最高度の不偏不党性を維持するため、委員会の委員は、自分がその国民である国の報告書の検討のいかなる側面にも参加することを控えるべきであるというこれまでの慣行を再確認する」としています(UN Doc. A/53/ 38/Rev.1 (1998), p.3.)
日本は何回審査対象となったのか
山下泰子: 女性差別撤廃条約と日本によると2009年時点で「条約の実施状況に関するレポートも国連に 6 回提出し、それらの CEDAW における審議も、4 回行われてきた。」とのこと。2009年以降は2016年、2024年と審査されているので、審査自体は6回目になるのかな?
外務省のページでは今回を含めて条約の実施状況に関するレポートが9回提出されているみたい。
www.mofa.go.jp
皇位継承の話はいつから質問対象となったのか
2016年の審査の際に質問対象になっている様子。2016年の最終所見/総括所見/最終見解に皇位継承についての勧告が含まれていたのを日本政府の抗議により、削除させたらしい。以下、2016年の記事。
国連女子差別撤廃委員会が日本に関してまとめた最終見解案に皇位継承権が男系男子の皇族だけにあるのは女性への差別だとして、皇室典範の改正を求める勧告を盛り込んでいたことが8日、分かった。日本側は駐ジュネーブ代表部を通じて強く抗議し、削除を要請。7日に発表された最終見解からは皇室典範に関する記述は消えていた。
菅義偉官房長官は9日午前の記者会見で、国連女子差別撤廃委員会の日本に関する最終見解に関し、当初案は男系男子による皇位継承を定めた皇室典範の見直しを求めていたことを明らかにした。政府が抗議して削除を求め、最終的に削られた。菅氏は「皇位継承のあり方は、女子に対する差別を目的としていない。皇室典範を取り上げるのは全く適当ではない」と指摘した。
政府関係者によると、当初案は、日本が女性天皇を認めていないことに懸念を表明したうえで、皇室典範を改正するよう勧告していたという。
2016年の総括所見案に皇位継承に関する勧告が入っていたのはなぜ?
理由探せず。
今回の女性差別撤廃委員会の審査において皇位継承について質問されているのを日本政府はいつからわかっていたのか
2020年の段階で質問が提示視され、2021年に日本政府は回答書を作成している。「女子差別撤廃条約実施状況 第9回報告」が当該の回答書。
www.mofa.go.jp
「女子差別撤廃条約実施状況 第9回報告(仮訳)」の4ページより該当の質問。
2 前回の最終見解(パラ 10、11、12 及び 13)に照らして、また、本条約第1条及び第2条に沿って、国家及び非国家主体による直接的及び間接的差別並びに公的及び私的な差別を含む、女性に対する差別の包括的な定義を導入するために講じた具体的な措置につき情報を提供されたい。
マイノリティ・グループに属する女性及び女児に対する複合的/交差的な形態の差別を禁じ、彼女たちをハラスメント及び暴力から守る包括的な反差別法につき、情報を提供されたい。締約国におけるマイノリティ・グループに属する女性に対する差別を撤廃するために講じられた措置の影響を監視又は評価する独立の専門家組織の設置の障害につき、詳述されたい。
皇室典範に関し、現在、女性皇族には皇位継承が認められないとする規定が含まれているが、女性が皇位を継承することを可能とするために締約国がとろうとしている手続の詳細を提供されたい。
皇位継承についての日本の回答
7 我が国の皇室制度も諸外国の王室制度も、それぞれの国の歴史や伝統を背景に、国民の支持を得て今日に至っているものであり、皇室典範に定める我が国の皇位継承の在り方は、国家の基本に関わる事項である。女性に対する差別の撤廃を目的とする本条約の趣旨に照らし、委員会が我が国の皇室典範について取り上げることは適当ではない。
2016年の際は総括所見案が提示されていたが今回は提示されなかったの?
それについての記事探せず。
関連リンク
- 国連女性差別撤廃委員会:2024年の審査(英語)
- 国連女性差別撤廃委員会の今回の審査のプレスリリース(英語)
- 外務省:女子差別撤廃条約:いずれ総括所見の和訳が掲載される。今回は第9回となる。