卒業研究が不安で不安でたまらないあなたへ

まとめ

  • 「やったことがない」「終わりが見えない」など「わからない」ことが不安をより大きくする原因です。自分が取り扱える程度に見える化しましょう
  • 「やったことない」ことに不安を抱くのは当たり前です。あなたが弱いわけでも、ダメなわけでもありません。不安を抱く自分を責めないようにしましょう
  • 卒業研究を通して、あなたにとって一番役立つことは「未知」の物事に対するあなたの認識の仕方、取り組み方、そして、逃げ方について自分で知ることができるという点です。自分の新たな一面と「こんにちは」しましょう。
  • 卒業研究は良い結果を出すことが目的ではありません。卒業研究はあるテーマに向けて一定の間、取り組み続けることが目的です。取り組み続けた結果としてうまくいかなくても、9割5分ぐらいの大学教員は卒業研究として認めます。
  • あなたの卒業研究に取り組むのは必ずあなた一人ですが、卒業研究に取り組むあなたに関わる人はあなた一人ではありません。あなたを扇の要として、いろいろなバックアップ体制の下で卒業研究に臨みましょう

はじめに

過去に書いたことと重複するかもしれませんが、いくつか不安解消に役立つかもしれないことを書こうと思います。すべての話があなたに役に立つわけではありません。「これは合わない」と思ったら遠慮なく読み飛ばして無視してください。「これはちょっとできそう/役立ちそう」と思ったら、それをちょっとやってみてください。もちろん、カスタマイズしてもらって良いですし、なんなら、これを「こういうこと言っている人がいますけど、どう思います(笑)」と話のタネにして指導教員や先輩から話を聞き出すきっかけに使っていただいて構いません。

あなたに求められている「卒業研究」「卒業論文」は正味のところどのレベル?

私もそうですが、多くの教員は「理想的な」卒業研究の目的を学生に伝えます。でも、実際にはもろもろの事情により「理想的な」目的を達成する学生はほとんどいません。最低限の話はどこで調べればよいのかといえば、先輩たちの卒業論文を読んでみるより仕方ありません。まずは、内容がわかろうがわかるまいが直近2~3年分、本数にして10本分の卒業論文を読み通してみましょう。これをやる目的は、どのぐらいのことをやれば卒業論文して成立するのか(卒業した実績があるのか)。書式はどんな雰囲気か。卒業研究のテーマはどういうものがあるのか。などの相場観を得ることです。この相場観が得られれば、内容は半分ぐらいわからなくても問題ありません。「やばい、何もわからない。勉強しなくちゃ!」と思えたならば最高の効果です。

そもそも先輩の卒論ってどこにあるの?

上のことをやろうとするとまずこれに気づくと思います「そもそも先輩の卒論ってどこにあるの?」。素晴らしい気づきだと思います。ぜひ、研究室の過去資産について把握しましょう。

そもそも卒業研究って何するの?卒業論文って何?

指導教員や先輩に尋ねるか、図書館の司書さんに尋ねて、自分の分野にあった卒業研究のやり方・卒業論文の書き方が書いてある本を2冊ぐらい読んでみましょう。1回で完璧に理解する必要はありません。1回目は2回目以降読むときのインデックス(目次)作りのために読めば結構です。どうせ、研究やり始めたり、論文書き始めたら、もう一度読むことになるので。

どのくらいの難易度なの?

あなたの所属ゼミ、研究室の直近5年間の卒業生の数を調べましょう。毎年何人配属されて、何人卒業していますか?所属学部・学科・コース・専攻の卒業生の数はどうでしょう?文部科学省:学校基本調査であなたと同じ学部の卒業生が毎年何万人いるか直近5年間を調べてみましょう。

あなたがとても出来が悪く、かつ、不真面目な学生かもしれません。でも、あなたはそんなに悪い学生ですか?もし、そうでないならば他の学生と同じように卒業できるとある程度までは信じてよいのではと私はお思います。

「卒業研究が不安でたまらない自分はダメな奴だ」って本当?

私が学生のときもそうでしたが、9割5分ぐらいの学生は卒業研究をやり遂げられるか不安です。毎年、研究室配属後に学生に「何か聞きたい事ある?」と尋ねますが、毎年「私は卒業できるでしょうか?」と質問されます。もし、私の主張を信じられないならば、以下のエントリーのコメント欄やリンク先を読んでみてください。また、Googleの検索欄に「卒論」と打ってみてください。検索キーワード候補に「卒論 つらい」とでます。「卒業研究が不安でたまらない自分はダメな奴だ」が本当ならば、同じ同級生も等しくダメな奴です。

卒業研究はうまく進まないのが当たり前

卒業研究はうまく進まないのは当たり前です。なぜならば、あなたにとって初めてのことばかりだからです。そして、不安を目の前にしてバイトや趣味、遊びに逃避してしまうからです。どの程度うまくできないか、どのくらいのストレスや不安に対して逃避行動をとってしまうのかは個人差ありますが、うまくいかないこと、逃避してしまうことは万人に共通です。なんせ、逃避行動に名前付いていますから。

自分をなだめて、ごまかし、動かす

逃避してしまうことは万人に共通なので、いつまでも逃避していて良いかといえば、それはダメです。ダメですが、自分について自分で完全に制御できている人はほとんどいません。なぜ、断言できるかといえば、自分で完全に制御できる人ばかりならば、ライフハックとか、自己啓発とか、ハウツー本とかこのブログとか不要だからです。自分で自分を制御できないからこそ、うまい方法をみんなが求めているわけです。

一方で、万人に効果のあるうまい方法はありません。私たちは一人ひとりは、考え方や経験、認識のあり方が違っています。ですから、自分にあった自分を制御する方法を見つけて、それを利用して自分をなだめて、こまかして、何とか自分にとって良い方向に自分を動かすしかありません。私にとっては、そこそこ効果があるのが虚栄心と諦めですが、あなたにとって良い方法は、あなたがちょっとずつ探ってみるしかないと思います。

卒業研究というのは未知の事柄で、うまくいくかどうか自信もなく、うまくいかなければ卒業できないのですごいストレスを感じるという、あなたにとって結構な代物です。しかし、所詮は教育という枠組みの中で用意されたものに過ぎないのですから、大学の後に経験する「未知」「自信を持てない」「将来を左右する」事柄に比べればどうにでも取り返しがつくものです。

「未知」「自信を持てない」「将来を左右する」事柄に対して自分はどういう反応を示すのか?現在の自分のうれしくない反応をどうやればマシなものにできるのか?自分一人でどうにもならないときに誰にどういう手助けを求められるのか?求めた結果どうなったのかなど、実験してみる機会として卒業研究は適切です。どんなにしょうもないおっさん・おばさんであったとしても、大学から給料もらっている教員というお助け人員がいるのですから、最後は彼ら/彼女らに助けを求めることができます。いろいろやってみましょう。

卒業研究の位置づけ

卒業のための長期課題&研究の体験学習が卒業研究だというのが私の認識です。研究の体験学習なので「取り組んでいること」が重視され、試験でもあるので「取り組んでいること」がわかる「証拠」が必要なのだと思っています。ですから、最重要なのは取り組み続けることであり、成果は取り組んだ結果として出てくればうれしいなという程度です。「~しようといろいろやりましたが、ダメでした。理由はダメだった理由は~」というものでも良い卒業研究です。なぜなら、次の人はその方法でやる必要がなくなるからです。良い結果を得られるかはとりあえず棚にあげて、問いの答えを得るために必要なことをやってみましょう。

バックアップ体制の構築をしましょう

結構な人が朝起きるのに目覚まし時計を使っています。これは寝坊を防ぐためです。春になると花粉症の人はかゆみ止めを飲んだり、マスクやメガネをしたり、できるかぎり屋外にでないようにして防御します。夏は涼しい恰好をして、外出するときには水筒やペットボトルを持ち歩く人が多いです。これは、脱水症を防ぐためです。話変わって、私はクレジットカードで買い物しすぎちゃうのが怖いのでクレジットカードに使用制限額をかけていますし、酒を買い置きしておくと無くなるまで飲んじゃうので酒を買い置きしません。何かわからないことがあれば、とりあえずGoogleで調べますし、知っていそうな人に尋ねます。

このように、生活を送る上で、あるいは何かの目的を達成するために、自分に欠けている点、不得意な点、耐えられないことがあれば、道具やシステムを利用して、あるいは、人に頼って、その不利な点を有利に、少なくとも不利じゃなくするのは当たり前に行われています。

同様に、卒業研究に取り組む上で、自分に欠けている点、不得意な点、耐えられないことを全部ひとりで解決する必要はありません。私たちが普段行っているのと同じように、道具やシステムを利用し、人に頼りましょう。たとえば、以下のような方法はどうでしょう?

  • 不安の制御がやりづらい → 学内カウンセリングサービスを定期的に利用する。日記を書く(言語化する)。友達や家族にお願いして愚痴を聞いてもらう。
  • 人と話すのが慣れない → 手紙やメールを使う。本を読む。他人の議論や説教を横で聞く。
  • ~がわからない。知らない → 調べる。尋ねる。メモする。
  • ~をするのをわすれてしまう → ToDoリスト・システムを使う。カレンダーを使う。他人を巻き込んで一緒に作業する。
  • ~があるのが家/研究室なので***をできない → Google DriveやDropboxなどの共有ストレージを使う。Mendeleyを使う。
  • 報告書や発表スライドの書式を整えるのめんどくさい → 各種ソフトのテンプレートや先輩が作ったファイルをもらって、書式を流用する。

不安になるほど自分が弱い立場・状況にあると思うのならば、ちゃんと自分を支える環境や状況を構築しましょう。

おわりに

私が好きな小説の「影武者徳川家康」に登場したセリフを贈ります。

お読みいただけたでしょうか?良く検討して、その時点でできる範囲のことをやったら、あとはどうにもならないので諦めるしかないのです。正直なところ、いくらできる範囲のことをやったとしても、卒業研究への不安は卒業研究が終わるまで消えません。卒業できるかどうかは、教員による卒業判定が終わるまでわかりません。なので、「どうやったら不安は消えるか?」は間違った問いです。「不安とどうやって付き合えばよいのか?」が適切な問いです。不安が消えないと行動がとれないという姿勢を止めて、不安だけど少しマシにするために行動するという姿勢になるのが良いと思います。私もそんなことできていませんが。

関連過去エントリー

すでに大量にリンクしてありますが。