ベン・バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」 – 道草で翻訳されているバーナンキ前FRB議長(以下、バーナンキ)の件で以下のような記事がでている。
diamond.jp
バーナンキ前FRB議長は以下のように言っているので「金融政策」だけではだめだったと言っているわけで「金融政策」がダメだったとは言っていない。
特に、初期の文章の中では、金融政策のみで可能なことと、どれほど財政政策との連携が必要になるのか、その限界をはっきりと見定めていなかった。
以前もクルーグマンの皮肉を見出しにした新聞記事があったけど、それと同じに見える。
next49.hatenadiary.jp
バーナンキの日銀での講演の要旨の翻訳。
hirokimochizuki.hatenablog.com
バーナンキ vs 日本経済新聞
政府が経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。財政健全化の目標として、2020年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化に加え、国内総生産(GDP)に対する公債残高の比率引き下げも明記した。新目標が財政健全化の先送りにつながるようなことはあってはならない。
PBの黒字化は、その年度の政策的経費を、借金に頼らずにその年度の税収などの収入でまかなえるようにする目標だ。PBが黒字になっても、過去に発行した国債などの借金返済が残るので、PB目標は財政再建の一里塚にすぎない。その後は1000兆円を超す国・地方の借金を減らし累積赤字を縮小させる必要がある。
(安倍政権は財政健全化から逃げるな :日本経済新聞)より
バーナンキの提案は財政ファイナンスして、社会福祉や再雇用訓練に充てよう
しかしながら、状況は完全に満足いくものではない。インフレ率は2%にほど遠く、確実に目標に向かっているとは言いがたい。そして、過去数年使われたツールは先ほど話した通り限界に達しようとしている。特に、利子率は短期だけでなく全ての期間構造を通じて、実質的な下限近くにあり、現在のインフレ率が上昇する気配がないので、予想インフレ率は低いままに留まっている。この時に当たって、日銀がさらにやるべきことは明らかではないが、将来の可能性を排除するべきではない。今この時になって、残されたツールキットは何か?
~中略~日本政府が所得政策を採用しようとしまいと、政府は、総需要がより高い賃金と物価を支えるのに十分だと言うことを確信させなければならない。再び、数年経って、インフレ率が回復していなかったら、どのようなことができるのか? 中央銀行単独の行動が限界に達している時、普通は財政政策が代替策になる。だが、日本では既に存在する高水準の債務残高対GDP比の結果として、財政政策でさえ制約に直面しているのかもしれない。そうなると、金融政策と財政政策の連携の話に行かざるを得ないと私は考えている。そうした連携策を実行する手段は数多くあるが、実行可能なアプローチの鍵となる要素は、(1) 政府が新たな支出か減税プログラムを約束する事と、(2)そのプラグラムが日本の債務残高対GDP比に与える影響を相殺するのに必要な手段を実行すると中央銀行が約束することです。
私が言ったように、この約束を実現するには様々な方法がある:~中略~ 金融政策で財政プログラムをファイナンスするという約束です。~中略~
ここでは、この仮想的な財政プログラムの内訳には立ち入りません。ただ、このプログラムをアベノミクスの3本目の矢である構造改革を前進させるために使うと有益であると指摘しておきます。そして、構造改革は長期的な成長率を上げるために欠かせないものです。例えば、再訓練プログラムや所得補助は非効率部門を改革する際の抵抗を和らげることができるし、照準を定めた社会福祉は女性や高齢者の労働参加を増やすのに役立てることができる。
~中略~しかしながら、私の提案の文脈は、一般大衆はインフレ率をオーバーシュートさせるという中央銀行の主張を信じる必要はなく、政策当局者や法案立案者だけが信じればいいと言うことです。おそらく、政府が、マクロ的な状況からそれが正当化できる時に、拡張的な財政プログラムを承認しないことの鍵となる理由は、結果として国の債務が積み上がることを心配するからです。もし法案立案者が、金融政策はその積み上がった債務を相殺するために使われると信じるなら、彼らはもっと積極的に行動するかもしれない。さらに言えば、彼らは、金融政策は財政政策と相反するものでなく、財政乗数を増やし、「対価に見合う価値」以上のものをもたらすものだと理解するでしょう。~後略~
(ベン・バーナンキ「日本の金融政策に関する考察」 – 道草より)