岩田規久男「日銀日記 ──五年間のデフレとの闘い」

以下にツィートしたものの転記。

岩田規久男「日銀日記 ──五年間のデフレとの闘い」を読んでいる。現在、日銀が金融緩和の限界を認識していると思われていたイールドカーブコントロールの当たり。

  1. 年金生活者は金融緩和政策で雇用増えても物価上昇により生活悪化で消費にマイナス効果
  2. 銀行や生命保険会社が国債頼りで利益だしているので、国債の残存期間による金利差がフラットになると業績悪化し、それが株価に悪影響
  3. 2の影響は国が国債発行しないから。

という理由で量的緩和に慎重になったからっぽい。

結果として外からの金融緩和政策の限界を裏付けてしまったように感じる。あと、岩田さんの立場から書いているせいかもしれないけど、こんなに総裁と副総裁はコミュニケーションとらないのかとびっくりする。副総裁同士は結構連絡とっているっぽいのに総裁とのやりとりがでてこない。

岩田さんは民主党議員との国会でのやりとりがよっぽど怒り心頭だったんだなぁと。あと、高橋洋一さんの八面六臂の活躍がすごい。表で週刊誌やWeb連載、政策立案機関を通しての政策提示、岩田さんとの金融議論。行動力すごい。

本当に消費税増税は愚策だった。あと、2011年の時点で民主党の代表が馬渕さんになっていたら、その後の展開は全然違っていたんだなと。あの時点で金融緩和していたら民主党のイメージもすごく変わっていて、安倍政権が成立しない。

後半、特に岩田さんが体調崩したあたりからは、日銀内でのやりとりや国会でのやりとりの記述が減り、岩田さんの考えを説明する内容になっていたので「なぜ、日銀は外から見るとリフレ的動きじゃないのか」を解明する資料としては残念

量的緩和ができなかった理由が 1) 無職者(年金生活者含む)への物価上昇の影響が無視できない 2) 国債市場に収益を頼っている会社(銀行、生保)へ影響が無視できない で、1)は安倍政権が初期段階で生保や年金をデフレ状況に合わせて減額したのが原因、2)は財政規律重視にしているのが原因。結局、コミットメントとはなんぞという話なのだと思う。人々の予想(期待)に働きかける政策に関する理解と広まりが足りない。

2年間でデフレを脱却し、インフレ率2%を目指すと言っている主体が、今はデフレなので年金や生活保護費を減額していたら、「ああ、2年間でデフレ脱却を信じていないんだな」と予想するのは当たり前。

話し変わって、日銀日記やここ2〜3年の国会スキャンダルからわかることは、責任のとり方として辞任はベストじゃないということ。説明責任を果たすが最優先で、その後に、必要に応じて辞任する/辞任を求めるべき。

森本学園問題で安倍首相が関与していたら辞任するといったこと、岩田さんの就任時の「辞任」に関する発言をしてしまったこと、前者は辞任と言ってしまったのでそれを回避するためにぐちゃぐちゃになったし、後者はそればっかり追求するようになってしまった。

公人の責任のとり方はまずは説明責任を果たす。ここからスタートしないと責める方も責められる方も建設的な方向に議論がすすまない。