「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」というのはどういうスキームを想定しているのか?

TL眺めていてもやもやしたので、とりあえず言語化。タイトルの通り「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」というのはどういうスキームを想定しているのかが知りたい。

私の立ち位置

2020年8月ぐらいまではいわゆる「検査抑制派」だった、具体的には「PCR検査をするかどうかは医師の判断による」。今でも2020年前半ぐらいについては以下のように考えている。

2020年秋から2021年春までに民間会社にPCR検査を発注できるようになったので、医者にかかってPCR検査を受けられなかったという時期はなくなったと認識している。以下の厚生労働省のページ「PCR検査の実施件数」を見ると2020年末で6万件~8万件ぐらい。現在は10万件~12万件ぐらい実施されている様子。
www.mhlw.go.jp

2021年8月現在の私のPCR検査についての考えは以下の状態が好ましいと思っている。受検できる場所は病院でも特設検査所でも構わない

  • 「自分がPCR検査を希望すれば(数千円程度で)いつでも受験できる」

この考えからすれば、今のPCR検査体制は不十分であると認識している(濃厚接触者の定義を狭めるという話が聞こえてくるので)。緊急事態宣言や蔓延防止措置がでている地域については、保健所による濃厚接触者の追跡はあきらめて、陽性者当人から濃厚接触者と思われる人々に個別に連絡してもらうことにし、自発的にPCR検査受けてもらうようにしてもらえばよいのではないかと思う。

本題

「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」が実現した状態はどういうものなのだろうか?

PCR検査を実施するという点だと以下のやり方があると思う。

  • 1. 医師あるいは保健所の判断の下でPCR検査が受けられる(現状の行政検査?)
  • 2. 本人の希望の下でPCR検査が受けられる(PCR検査を受ける際の前提条件、例えば有症状や濃厚接触者であるとかの条件が無く本人の希望のみで受けられる)
  • 3. 行政の判断の下で、ある特定の施設 or 職種 or 属性を持つ人全員に対して強制的にPCR検査を実施する
  • 4. 行政の判断の下で、ある特定の施設 or 職種 or 属性を持つ人全員に対して強制的にPCR検査を定期的に実施する

陽性者の対処に対しては以下のやり方があると思う。

  • a. 何も対処しない
  • b. 保健所と連携しない&自主隔離(隔離するかどうかは任意)
  • c. 保健所に報告&自主隔離(隔離するかどうかは任意)
  • d. 保健所に報告&強制隔離(自宅 or ホテル or 病院)(現在の行政検査で陽性となった場合?)

組み合わせると以下のとおり。

PCR検査実施法/陽性者への対処 1: 医師判断 2: 本人希望 3: 強制単発 4: 強制定期
a: 対処しない × × × ×
b: 無連携&自主隔離 1-b 2-b 3-b 4-b
c: 連携&自主隔離 1-c 2-c 3-c 4-c
d: 連携&強制隔離 1-d 2-d 3-d 4-d


現状は1-dで、主として保健所のキャパシティによりPCR検査の実施が限界を迎えていると私は認識している。それに加えて、症状の急激な悪化可能性があるため、強制隔離の際に病床手配が必要となり、それが限界にきているという状況でもある。

ワクチン接種率があがり、重症化数が減れば2-d or 2-cにできるようになる(ただし、保健所の負担を下げるため、ICTを用いた緩い連携体制、自宅療養時の体調変化を察知する通報システムの構築が別途必要)。


「徹底したPCR検査」「PCR検査の拡大」が実現した状態は2-dなのだろうか?それとも3-d, 4-dなのだろうか?

追記(8/25)

2020年8月のCOVID19有識者会議の記事。東京都の人口30%ぐらいをスクリーニング検査するときどのくらいの検査数が必要かが記載されていた。
www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp

従って、地域住民に対して、幅広く検査を行う事が効果的であるのは、市中感染が蔓延して有病率(事前確率)が高くなっており、かつ、十分な解析規模で実施することが前提条件となる。米国のニューヨーク州では、この考えでPCR検査が実施されており、新規感染者数の減少、死亡者数の減少を実現している。ニューヨーク州の7月30日現在のPCR検査の実施数は、5,746,822である[1]。ニューヨーク州の人口が、 1,945万人であるので、全人口の約30%に対して検査をしていることになる。東京都の人口の1,400万人に当てはめて考えれば、420万の検査数に相当する数字である。

追記(8/25)

後にくっつけていた話は別エントリーにしました。

採点のおともに聞いていたYouTube動画

採点のおともにYouTubeをラジオのように聞いていたのだけど、政権批判系動画でもいろんなスタンスがあり、それぞれ「なるほどなぁ」と思うところがあり面白かった。

ポリタスTV

この動画を見て「お金払って支えないと」と思ったのでメンバーシップ会員になっている。それ以来、ラジオのように聞いている。
youtu.be

今回採点中に聞いたのは以下の動画。Sessionでいつも聞いている荻上チキさんがゲストの立場で話しており新鮮だった。社会的抑うつ調査は聞けば聞くほど非常に重要で、新型コロナウィルス感染症への対応にも利用可能なことが示唆されていた。
youtu.be

お時間がある方はぜひ聴いて、お金に余裕があったらこの調査を支援してほしいと思う。私は1万円コースで支援した。
camp-fire.jp

どっちか先だか忘れたけど、こちらも聴いた。Session 22や宇多丸のウィークエンドシャッフルで辻田さんの存在を知っていたが、この動画を見て辻田さんがおっしゃる総合知と専門知の関係に興味がでて、YouTubeで辻田さんの出ている動画を探した。
youtu.be

ゲンロン YouTube Official:新プロパガンダ論

ポリタスTVはどちらかというとお堅い内容だけど、こちらは時事放談形式。

もともとAmazonのおすすめで興味を持っていたこととポリタスTVの辻田さんの動画を見て、見つけたのがこちら。西田亮介さんもSession/Session 22やTwitterで存じ上げていたものの、Sessionにでたときの話し方が「煮え切らないなぁ」と思っていた。ところが、こちらの動画見て、西田さんのスタンスがおぼろげながら理解でき、そういう話し方になるかと納得した。どちらもとても面白く、示唆に富むものだった。
youtu.be
youtu.be

特にどっちの動画での発言か忘れたが東さんの「この対談は何かの情報を伝えることが目的でなく、考える時間を提供することが目的である。」という主旨の話には感動した。それに続けて辻田さんもおっしゃっていたが専門家の説明だとチャット欄が無言か「なるほど」しかないのに対して、専門外のことも自分の考えの下で話してしまう放談形式だとチャット欄も喧々囂々のコメントがあふれる。放談というのが考えるきっかけとなり得るので、これはこれで需要があり重要であるという主旨の話を聞き、ポリタスTVで行っていた総合知の重要性というのはこういう側面からの話かと納得した。

新プロパガンダ論買います。

ダースレイダー x プチ鹿島 ヒルカラナンデス

東京ポッド許可局で知ったプチ鹿島さんが出ているのでたまに聞いている。こちらはダースレイダーさんとプチ鹿島さんがちょっと俗な視点から政治ニュースを語る番組。政局報道の必要性についてハッとさせられる回だった。緊急事態宣言延長はなぜ9月12日までなのかの解説は感心しきりだった。
youtu.be

当該の朝日新聞記事。プチ鹿島さんのコメントもある。
digital.asahi.com

複数の政府関係者によると、「9月下旬」などいくつかの腹案から、最後は首相が「12日」を選んだという。透けるのは、衆院解散や総裁選の日程と、今回の宣言の期限の関連だ。

 首相の自民党総裁としての任期は9月末。首相は就任当初から、総裁選前に解散に踏み切り、衆院選に勝利することで総裁選を無投票で乗り切るという「再選戦略」を描いてきた。衆院選の勝利を掲げて総裁選に臨めば、いまの執行部への不満や批判を封じることができ、党内の幅広い支持を取り付けることができるとの計算からだ。

 総裁選は9月17日に告示し、29日に投開票することで調整が進む。宣言中に衆院を解散することには、首相に近い党幹部らも困難とみる。宣言を解除したうえで、総裁選前に衆院解散の可能性を探る――。その答えが「12日の期限」というわけだ。

今回の横浜市長選の結果を受けての特別編の放送があるとのこと。
www.loft-prj.co.jp

今回の市長選の結果。
digital.asahi.com

ラムダ株上陸についての五輪中発表見送り疑惑

どこを論点として対立しているのかがわからない。「意図的に政府が隠ぺいしていた」という部分で対立しているのかな?

前提:ラムダ株について(2021年7月16日の記事)

natgeo.nikkeibp.co.jp

ラムダ株(C.37系統)は2020年8月にペルーで初めて確認され、ラテンアメリカを中心とする29カ国に広がっている(編注:日本では未報告)。ペルーでは新型コロナの新規感染におけるラムダ株の割合が、2020年12月には0.5%未満だった。ペルーのウガルテ保健相は、2021年3月末から4月にかけて感染の「第2波」が起きたことについて、ラムダ株が原因だった可能性が高いと記者会見で述べている。

発端:津田さんのツイート

上への批判:おもちさんのツイート

国内報道

www.tokyo-sports.co.jp

 そうした中で厚労省は6日に、ペルーに滞在歴がある女性が7月20日に羽田空港に到着した際に新型コロナ陽性が判明し、それがラムダ株だったことを発表した。

 しかし米メディア「デーリービースト」は発表までの経緯を疑問視。「東京五輪の期間中に報道発表から故意に致命的な新型コロナ変異種の発表を外した」と追及した。同メディアによると、当該女性のウイルスがラムダ株だったことは7月26日に国際機関に報告されており、この事実を再三厚労省に問い合わせたが返答はなし。さらに「厚労省は、その情報をプレスブリーフィングやリリースから意図的に除外した」と隠蔽だと糾弾。

自民党 佐藤正久参院議員のコメント

www.chunichi.co.jp

番組では羽田空港で陽性反応が出た30代女性からラムダ株を解析、7月26日に国際機関に報告したという国立感染症研究所の「日本では懸念すべき変異株、注目すべき変異株のどちらにも指定されていない」とのコメントを紹介。五輪があるから発表しなかったのではと問われた佐藤部会長は「(検疫は)もっと早く問い合わせがあれば答えたという感覚。ラムダ株に対する意識の高さがなかった。空港検疫で見つかったとあれば発表すべき。それは内閣官房関係者も同じ意見だ」と語った。

山添 拓 参議院議員のツイート

当該感染者がオリンピック関係者だったという話

anond.hatelabo.jp

一般人を相手に6日後にGISAIDに登録まで済ませるなんてことは、直近の通常の検疫体制から考えても、相当考えにくい。

となると、問題の女性は、オリンピック関係者だったのではないかという疑念が持ち上がる。

(先に挙げたウガンダのオリンピック選手は5日でGISAIDへの登録を済ませている)

8月12日追記: まとめると、わたしが考える厚労省が改善すべき点は、次の3点となる。

  • VOIやVOCの指定をWHO基準に合わせる。「日本での感染・蔓延がない」という理由で指定しないのは、水際対策の観点からは、まったくの本末転倒である。
  • 空港検疫での報道発表の有無と、入国後の強い隔離措置を、VOI基準に引き下げる。これでラムダ株も対象とすることができるし、デルタ株の発表が2ヶ月遅れになることもなかった。
  • 入国後の指定施設による隔離措置を、14日間や21日間などの強い基準に改める。人手が足りないという記事を見たことがあるが、当然何を差し置いても増強すべきというだけで、理由にならない。(むしろ8月14日からインドからの入国後の措置を10日から6日に短くしたりしていて、ひっくり返る)

上の考察が裏付けられたニュース。
nordot.app

新型コロナウイルスの変異株で南米ペルー由来とされる「ラムダ株」の感染者と国内で7月に初確認された女性は、東京五輪関係者だったことが13日、政府関係者への取材で分かった。

メモ:記録を残さない与党、政府

現在進行形で新型コロナウィルス感染症が拡大しているのと並行して、1年後、5年後、10年後、100年後にこの新型コロナウィルスに対して行政や立法府がどのように対応したのかがわからない恐ろしい事態が進行中。

現自民党政権はこういう取り決めをしている。
www.nhk.or.jp

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は今回の事態を行政文書の管理に関するガイドラインに基づき、国家や社会として記録を共有すべき「歴史的緊急事態」に指定することを決め、関連する会議の議事録などの作成が義務づけられることになりました。

政府

2020年3月22日の記事
mainichi.jp

安倍政権が「記録」と「議事録」を巧妙に使い分けている。新型コロナウイルス感染症を3月10日に公文書管理ガイドライン(指針)に基づく「歴史的緊急事態」に指定した。ただ、「しっかり記録を残す」と強調する一方で、議事録が必要な会議を絞ろうという姿勢も垣間見える。

2020年5月31日
www.jcp.or.jp

政府が新型コロナウイルスに関する専門家会議について、発言者を明示した議事録を作成せず、議事概要にとどめていたことが29日分かりました。専門家会議での議論はコロナ危機への対応に実質的に極めて重要な役割を果たしており、将来、今の政府の対応を検証するのが困難になる可能性があります。新感染症に対する政府の姿勢が問われるもので野党からは批判の声が上がっています。

2021年3月6日の記事
www.chunichi.co.jp

安倍晋三前首相らが官邸で新型コロナウイルス対策を議論した「連絡会議」を巡り、昨年一〜五月の議事の記録に安倍氏や関係閣僚の発言が記載されていないことが判明した。初の緊急事態宣言発令・解除など重要な時期に当たっており、複数の関係者は「安倍氏が意見を述べ、重要な政策が決まることがあった」と証言する。意思決定過程の明確化を求める公文書管理法の趣旨に合わないとの批判が出そうだ。

2021年4月3日最終更新の記事
mainichi.jp

政府が新型コロナウイルスへの対応を「歴史的緊急事態」に指定したことに伴い、公文書の作成・保存を徹底する対象とした会議19件のうち、発言者や発言内容を明記した議事録などを作成するよう義務付けたのは4件にとどまることが、毎日新聞の情報公開請求で判明した。残る15件は、進捗(しんちょく)状況や確認事項などを記載した文書の作成のみで済むという。事後の検証に支障を来す恐れもあり、政府の政策決定の「透明性」に疑念が生じそうだ。

2021年4月18日の記事。
www.tokyo-np.co.jp

政府は、新型コロナウイルス感染症への対応を「歴史的緊急事態」に指定し、公文書管理を強化するとしてきた。だが、事態に対応すると位置付けた19会議のうち、議事録や議事概要の作成を義務付けたのは4会議のみ。初指定にもかかわらず「歴史的」の枠組みが骨抜きにされ、政府がコロナにどう対応したのかを事後検証するのは困難なのが実態だ。

2021年8月6日の記事。
www.tokyo-np.co.jp

だが、首相や西村氏ら関係閣僚が参加する「5大臣会合」などの非公式協議や、昨年9月までの安倍政権で開催されていた「連絡会議」は、いずれも意見交換が目的との位置付け。実際には政策決定プロセスの核心部分とされるが、政治家同士のやりとりを記した議事録などは残らない。

自民党と公明党

2021年8月3日の記事。
digital.asahi.com

加藤勝信官房長官は3日午前の記者会見で、新型コロナウイルス対応のための「政府与党連絡会議」は「党が主催した会議だ」とし、「政府において、議事録や議事概要を作成することは考えていない」と述べた。公文書管理のガイドラインが定める作成基準には該当しないという。

政府は昨年3月、新型コロナの感染拡大を公文書管理のガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定。この指定を受けると、「政策の決定または了解」が行われた会議では、発言者や発言内容を記載した議事録などの作成が義務づけられる。

連絡会議は7月28日に開催。政府から加藤氏や西村康稔経済再生相ら4閣僚、与党から自民、公明両党の幹事長らが出席し、ワクチン供給や酒類提供停止などについて協議した。だが、加藤氏はガイドラインで議事録作成が定められた会議に該当しないと強調した上で、「内容は与党側からブリーフィング(説明)がされたところだ」と述べた。(菊地直己)

与党もきっちり党の会議の議事録を公文書として残していかないと。
next49.hatenadiary.jp

メモ:2020年4月の日本財団「新型コロナ軽症者のための1万床計画」はどうなった?

Twitterやはてなブックマークのコメントでたまにみかけた「日本財団の軽症者用病床」の話について検索した結果のメモ

まとめ

  • 2020年4月に発表した軽症者用の病床1万床(お台場に千床、茨城県つくば市に9千床)は、2021年8月現在、お台場に100床程度準備し東京都に無償提供という形で終了している。
  • つくば市に9千床の計画は実施されなかった。
  • お台場に千床の計画は、2020年7月にパラアリーナに100床程度、屋外に100床程度の計250床程度を準備し、東京都に無償提供した。しかし、パラアリーナ分は2021年2月に撤去することになり、屋外の100床程度のみが引き続き提供されている。

2020年4月「1万床計画」発表

日本財団の笹川会長より2021年8月現在から考えると至極まっとうな提言と計画が発表される。なお、以下の動画の概要欄では、なぜかつくば市が埼玉県にあることになっている。
youtu.be

www.nikkei.com

日本財団(東京)は3日、感染拡大が続く新型コロナウイルスの感染者を受け入れるため、傘下団体が運営する東京都品川区の「船の科学館」と、茨城県つくば市の所有地に計約1万床の整備を目指すと発表した。医療体制や収容の対象者など具体的な点については今後、都や政府と協議して決めるという。

日本財団によると、まず月内に船の科学館の敷地内に大型のテント9棟を建て、既存のスポーツ施設も含めて約1200床を確保する。7月末からはつくば市の所有地でも受け入れを始め、約9千床の提供を想定している。

www.nikkansports.com

日本財団が3日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、東京・お台場の「船の科学館」敷地内にあるパラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」など首都圏の2カ所に最大で計約1万床の病床整備を目指すと発表した。
~中略~
笹川会長は「こちらは場所や設備を提供する。運営については東京都や厚生労働省と協議していく」と話しており、運営や医療従事者の派遣については都や厚労省に相談し、任せていく方針を示した。さらに「これらの施設が使われないで終わることが最大の願い。備えあれば憂いなし。作っていくことが重要だ」と強調した。

この提言の下になったドイツとフランスにおける医療体制準備の差の分析。
www.nippon-foundation.or.jp

分析によれば、両国の通常時の病床数の差に加え、感染者急増前における医療提供体制の拡充施策の差が、死亡率の差につながっているとあります。このことから、我が国でも、早急な医療提供体制の拡充が求められます。日本財団としても、より一層スピード感をもって緊急策に取り組んでまいります。

上のページにリンクがある三菱総研のレポート。
www.mri.co.jp
www.mri.co.jp

両国における新型コロナウイルス感染者数の急増日を見ると、フランスが3月10日、ドイツが3月11日と、ほぼ同じである。感染拡大防止に向けた各種対策もほぼ同時のタイミングで実施されており、大差はない。

一方、医療提供体制については、両国の施策に違いが見られる。既存病床数を比較すると、人口1,000人あたりの病床数は、ドイツが6.0、フランスが3.2と、もともとほぼ倍の差がある(前回レポート1参照)。フランスは、感染者数急増前に病床数の確保に着手し、急増直後に緊急性の低い診療を抑制するなど病床の拡充・確保を図っている。しかし、十分な病床の確保等が間に合わず、特に感染者数急増後に野戦病院等の設置など想定外の対応を余儀なくされた可能性が高い。これに対してドイツは、既存病床数の多さという強みを活かしつつ、想定外の事態を引き起こさないための準備が十分になされ、これを迅速かつ具体的に実現したことが伺える。具体的には、既存病床の活用方法の工夫、さらに既存病床の負担軽減を目的としたホテルの活用などにより、感染者の急増後も十分な医療提供体制を維持できたと考えられる。

~中略~

現状の日本においては、オーバーシュート一歩手前の状況といわれており、感染者数の急増に備えた病床数や軽症者の宿泊先の確保が第一であると考えられる。例えば感染者数が急増している東京都の1,000人あたりの病床数(高度急性期及び急性期)は4.9で(前回レポート1参照)、フランスの3.2よりは多いもののドイツの6.0より少なく、十分な病床数が確保されているとは言えない可能性がある。また、ドイツ・フランス両国ともに、退職した医師や医学生、軍などを動員し、国が主体となって医療スタッフを拡充している。日本においても、感染者数が急増した場合に備えて、医療従事者を十分に確保するための具体策が必要であると思われる。

お台場「船の科学館」敷地内の病床

2020年7月にパラアリーナ内と「船の科学館」敷地内駐車場に新型コロナウイルス感染者の宿泊療養施設「日本財団災害危機サポートセンター」として250床ほどの準備が整い、マスコミに公開された。
toyokeizai.net

パラアリーナとはどんな施設なのか?

国内感染者が4000人に達したが、障がい者の情報は伝わってこない。パラアリーナはパラスポーツの専用施設なので、「ユニバーサルデザイン」を採用したバリアフリーの施設だ。

トイレ、洗面所、シャワーなど、障がい者が使いやすいように設計されていて、点字ブロックも随所にあり、障がい者が感染した場合に、既存の施設に比べてあまり不自由を感じずに過ごせるだろう。

パラアリーナ全体で3000平方メートルの場所を確保できるといい、その多くを占める体育館は、自然災害時の学校体育館の避難所のようにベッドと仕切りがあればすぐにでも使用可能だ。感染者が対象なので、医療関係者がきちんと防護すれば、他に感染することもない。

マスコミ公開の様子
www.businessinsider.jp

7月31日、東京では1日に確認された新型コロナウイルスの感染者が400人を超えた。

その前日、日本財団は東京・お台場にある船の科学館駐車場と日本財団パラアリーナに建設した新型コロナウイルス感染者の宿泊療養施設「日本財団災害危機サポートセンター」を報道陣に公開した。

250床分の施設を宿泊療養者(無症状感染者、軽症者)向けの施設として東京都に提供するとしている。

具体的な稼働時期は未定だが、今後感染者が増え続けていけば、実際にこの施設で療養する人が出てくることになるだろう。

しかしながら、東京都側は使いあぐねる。以下は2020年7月30日の記事
www.tokyo-np.co.jp

新型コロナウイルスに感染した軽症患者らが滞在する療養施設として、日本財団が障害者スポーツ専用体育館「パラアリーナ」(東京都品川区)内に整備した100床が2カ月間、1度も使われていない。財団は都の利用を想定したが、都は板で仕切った住環境をプライバシー保護などの点から、「宿泊療養に使うのは難しい」と説明。都内で感染が再拡大する中、活用方法は宙に浮いたままになっている。
~中略~
都内では、軽症患者らが滞在する療養施設が逼迫。都は28日、3カ所のホテルを療養施設として追加で指定した。アリーナと異なり、財団が新たに設けた個室の150床は「ホテルなどと同じ」として、活用を検討しているとした。

それから2か月後、東京都の使い方が決まる。2020年10月に開所。
www.nippon-foundation.or.jp

日本財団が2020年4月より建設を進め、同年7月に完成した「日本財団災害危機サポートセンター」は、2020年10月9日から東京都により新型コロナウイルス感染症の療養施設として開設されることとなりました。受け入れるのは、陽性者のうち入院治療等を必要としない軽症・無症状者で、室内飼育が可能なペット(犬・猫・ウサギ・ハムスター)を同伴して宿泊療養することが可能です。

mainichi.jp

日本財団は新型コロナの病床不足に対応するため、船の科学館の駐車場や、隣接する東京パラリンピック強化拠点の体育館「日本財団パラアリーナ」を使い、プレハブハウスを含めた臨時の療養施設「災害危機サポートセンター」として整備。7月に完成後、都に引き渡していた。

都は活用方法を検討していたが、犬や猫などペットの預け先が見つからず、ホテルに行くことができない感染者がいたことから、ペットを同伴して滞在できる施設として活用することを決めた。9月にペットも宿泊できるよう日本財団と協定を締結しており、都は早期の運用開始に向けて詰めの作業を行っている。

以下の2021年2月の記事によるとパラアリーナ屋内の病床は使われなかったとのこと。屋外の駐車場の方の施設の利用状況はわからなかった。
www.sankei.com

しかし、施設はその後、第3波で感染者が急拡大しても宿泊療養施設として用いられることは一度もなかった。各ベッドがパーテーションで区切られただけの施設は、宿泊療養を「個室」とする厚生労働省のマニュアルに沿っておらず、療養施設としての活用は緊急的な意味合いが強かったためだ。

こうした状況から、複数の競技団体がパラアリーナの利用を希望する要望書を提出。日本財団側も考慮の末、方針を転換し、パラ競技団体への貸し出しを再開する方向で都との協議を始めた。

2021年2月にパラアリーナの方は元のパラアスリートの練習施設として返還された。2021年4月から稼働開始。屋外の病床は引き続き東京都へ提供。
prtimes.jp

日本財団は、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決定する以前から、長年にわたって障害者支援を行ってきました。2018年6月に開所した日本財団パラアリーナは、昨年新型コロナ療養施設となり、練習施設としての使用を中止していました。この度、開催まで半年を切った東京2020パラリンピックの開催に向け、再びアリーナとして運営することとなりました。

~中略~

※なお、日本財団災害危機サポートセンターのうち、船の科学館駐車場に設置している個室型プレハブハウス及び大型テントについては、引き続き新型コロナの療養施設として使用されます。

今に至る。

茨城県つくば市の病床

日本財団の以下の方針がつくば市と合わなかったことから、計画倒れに終わってしまう。

笹川会長は「こちらは場所や設備を提供する。運営については東京都や厚生労働省と協議していく」と話しており、運営や医療従事者の派遣については都や厚労省に相談し、任せていく方針を示した。

直後の報道。
mainichi.jp

新型コロナウイルスに感染した軽症者の病床を確保するため、日本財団(本部・東京都)が茨城県つくば市の財団所有地に約9000人滞在の施設を整備するとした計画が波紋を呼んでいる。3日に発表された計画について、つくば市側は寝耳に水だったといい、「大規模な患者の受け入れについて住民の合意を得ていくのは難しい」と困惑している。

2020年4月の日本財団の1万床計画に対するつくば市長のコメント
www.city.tsukuba.lg.jp

本日、日本財団の尾形理事長が来庁され、つくば市での新型コロナウイルス陽性患者受入施設の整備構想について説明を受けました。

4月3日に日本財団の笹川会長が記者会見をし、日本財団が所有するお台場の施設に約1000床、同じく財団が所有するつくば市内の研究所跡地に約9000床の軽症者受け入れ施設を整備することを発表しました。現在お台場については工事を終え、東京都に提供しどのような活用があるかを検討しているとのことです。そして、つくばの施設については具体的なことはまだ一切決まっていないとのことでした。私からは「市民から多くの不安の声が寄せられている。地域医療に与える影響が極めて大きいため、9000床という大規模な施設で県外からも多くの患者を受け入れる現在の計画は受け入れることはできない。つくば市内では公共施設やホテルでの軽症者受け入れを行っているが、現在全国各地で公共施設やホテルの活用が計画をされている。医療崩壊を防ぎ各地で患者を受け入れることが可能になるような形で日本財団の資源を活用していただきたい」旨をお伝えしました。

日本財団側からは「日本財団は施設を作るのみで、それを利用する主体が決まらなければそもそも事業は実施されない。日本財団が勝手に進めることはない。行政の意見をしっかりと聞いた上で進める。」と明確なお返事をいただきました(この発言を公表することについても日本財団の了解を得ています)。その上で、今後の活用のために施設の解体だけは行いたいというお話がありましたので、今後どのような形の事業を計画されるのかを教えていただくよう依頼をしました。

以前コメントした通り、日本財団のみなさまが医療崩壊を防ぐために自ら私財を投じて活動をされようとすることには心から敬意を表するものです。全国に広がる日本財団のネットワークを活用し、医療崩壊を防ぎ、国民・市民の命を守るためにお力をいただければと考えていますし、その点でともに活動をできることがあればと考えています。

2020年5月の報道。
www.tokyo-np.co.jp

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本財団がつくば市内で無症状や軽症の感染者の大規模な滞在施設を整備する計画について、五十嵐立青市長は八日の定例会見で「県外からも大勢の患者を収容する現在の計画は受け入れられない」と反対する考えを示した。

2020年6月の報道。
newstsukuba.jp

五十嵐市長は4月30日に「日本財団が勝手に進めることはない。行政の意見をしっかりと聞いた上で進めると明確な返事をいただいた」とコメントを発表した。しかし、日本財団からのつくば市や県への説明は4月30日の尾形理事長の来庁以外にはなく、日本財団は市にも県にも「意見をしっかり」聞くということは行っていない。現在は、つくば研究所跡地の解体作業のみが進行している状況だ。

2020年9月のつくば市のコメント
www.city.tsukuba.lg.jp

令和2年4月30日、同財団の尾形理事長が来庁して市長と面会しました。財団からはこの整備構想について、現在お台場については工事を終え、東京都に提供しどのような活用があるかを検討している段階であるものの、つくばの施設については具体的なことはまだ一切決まっていないとの説明がありました。

市長から財団に対しては、「本件について市民から多くの不安の声が寄せられている。地域医療に与える影響が極めて大きいため、9,000床という大規模な施設で県外からも多くの患者を受け入れる現在の計画は受け入れることはできない。つくば市内では公共施設やホテルでの軽症者受け入れを行っているが、現在全国各地で公共施設やホテルの活用が計画をされている。医療崩壊を防ぎ各地で患者を受け入れることが可能になるような形で日本財団の資源を活用していただきたい」という旨を伝えました。

これに対し財団側からは、「日本財団は施設を作るのみで、それを利用する主体が決まらなければ事業は実施されない。財団が勝手に進めることはない。行政の意見をしっかりと聞いた上で進める。」との返答がありました。その上で、今後の活用のために既存施設の解体だけは行いたいという話があったため、市としては、今後どのような形の事業を計画するのか示すよう依頼しています。それ以降のやり取りはありません。

そのまま9千床計画は終了してしまったのだと思う。

感想

政府が「病床を増やす」という発言をするたびに医療者の方々が「病床とは単にベッドを準備すればよいということではない、人とセットで病床だ」と言っているのが良くわかる事例だった。日本財団の1万床計画の背景知識となっていた三菱総研の分析「また、ドイツ・フランス両国ともに、退職した医師や医学生、軍などを動員し、国が主体となって医療スタッフを拡充している。日本においても、感染者数が急増した場合に備えて、医療従事者を十分に確保するための具体策が必要であると思われる。」というのが、この1万床計画に反映されていたら、2021年8月の希望となっていたのだと思う。とても、残念な話。

一方で、日本財団は屋外に軽症者療養施設100床を3か月で建てるノウハウを持っているわけなので、政府や東京都は、第6派に向けて無駄になるのを覚悟で数百床の軽症者療養施設を建てておいたらどうだろうか。

DMAT

日本財団の1万床計画にDMAT的な「オペレーション+医療スタッフ」が組み合わされればうまくいったかもと思う次第。
www.dmat.jp

www.tmd.ac.jp