加計学園問題でいらいらすること

「加計学園問題は何が問題なの?」という意見

首相の利益相反が疑われるのだから、野党が問題視して「利益相反事案ではない」という説明を政府に求めるのは当然。いくら、安倍首相じゃないとリフレ政策の維持ができないからといって、利益相反が疑われる事例に関しては、ちゃんと問題ないということを説明してもらいたい。

安倍首相の余計な発言

3月13日の参院予算委員会で安倍首相が「働きかけていると言うんであれば、何か、確証を示してくださいよ。で、私はね、私はもし、働きかけて決めてるんであれば、これは私責任取りますよ。当たり前じゃないですか。」と言わなければ、すぐさま、システムの修正の話になったのに、これを言うから野党も色気出してどんどん話がずれていっているのがイライラする。

news.yahoo.co.jp

政府側の答弁がおかしすぎる

基本的に政府側の答弁はTBSラジオのSession 22で紹介されている国会音声を聞いているだけなので偏っているのはわかっているが、それにしたってちゃんと答えていないように聞こえる。そもそも、国家戦略特区ワーキンググループの文科省や農水省へのヒアリングの際に、そもそも学部新設の許認可で獣医師の数の需給調整するのはおかしいとWGの委員が何度も何度も指摘している。また、制度的に獣医師育成に問題があると指摘している唐木さん(参考:加計学園「半世紀ぶり獣医学部」は不要か | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online)も加計学園関係者として存在している。しかも、文科省自体が2013年の段階で獣医学部での教育について問題があると認識している(文部科学省:獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議)。

なのに、山本大臣をはじめとする答弁がなんで新設の獣医学部の認可をしたのか説明できていない。真正面から今日、安倍首相が述べた通り「そもそも、大学の設置認可で需給調整するのがおかしい」という主張で押せばよかったのに、いまさら言うから。
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そのうえで、安倍総理大臣は「半世紀以上守られてきた硬い岩盤に風穴を開けることを優先し、獣医師会からの強い要望を踏まえ、まずは1校だけに限定して特区を認めたが、中途半端な妥協が国民的な疑念を招く一因となった。改革推進の立場からは限定する必要は全くない。速やかに全国展開を目指したい」と述べ、獣医学部の新設をさらに認める方向で検討を進める考えを示しました。

国家戦略特区ワーキンググループでの医師に関しては大学の定員管理で需給調整を許し、獣医師に関しては大学の定員管理での調整を許さない理路は以下の通り。

  1. 原則として、医師も獣医師も質の保証は国家試験で行うべきで、大学の定員管理で需給調整をするのはよろしくない(政府が産業政策行っても失敗するという経済学の知見より)
  2. しかし、医療費は健康保険制度によって上限があるため、医師の数を自由に増やすためにはいかない。よって、医師に関しては大学の定員管理で需給調整をするのはいたしかたない
  3. 一方、獣医師による治療は自由診療であるため、適正な獣医師数を市場に任せても財政的に負担にならない。よって、獣医師に関しては定員管理で需給調整をするのはよろしくない

国家戦略特区ワーキンググループのヒアリングでは議論されていなかったが、加計学園が私立大学であるというのもポイントなのだと思う(国立大学の場合は文科省が設置認可を制御するのは理屈にあっている)。

この理屈を前面に出して答弁したら「じゃあ、なんで加計学園1校だけ?」「いや、育成の段階で税金が投入されるわけなので、文科省が設置認可を制御するのは当然だろう」など反論はあるとは思うが、規制緩和という観点では筋が通っている。

文書が出てこないのはあまりにもひどい

自衛隊の日報問題、森本学園への国有地売却に関する問題、加計学園の獣医学部設置認可問題など、公文書の扱いがあまりにもひどい。情報公開クリアリングハウスの三木さんの言う通りだと思う。後日、過去の政策や立法過程が良かったのかどうかという評価を行うためにも公文書をちゃんと残しておかないといけない。
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以下は、アステイオン 86巻(2017年5月)掲載の「奈良岡聰智:よりよき公文書管理制度のために ― イギリスとの比較に基づいて」についての感想
next49.hatenadiary.jp

もっとも、わが国の公文書管理制度は、他の先進諸国に比べればまだ「周回遅れ」という感が否めない。端的に言えば、日本の公文書館の規模は、諸外国に比べて著しく見劣りしている。職員数だけを見ても、日本の国立公文書館(47人)は、アメリカ(2720人)、ドイツ(790人)、イギリス(600人)などの欧米先進諸国は言うまでもなく、韓国(340人)など東アジア諸国にも大きく水を開けられている(2008年の国立公文書館の調査による)。また、2014年に内閣府が実施した調査によれば、協力した地方公共団体914中、公文書管理の条例化を行っている団体は88(4都道府県、84市町村)、公文書館を設置している団体は80(28都道府県、52市町村)にとどまっている。
「奈良岡聰智:よりよき公文書管理制度のために ― イギリスとの比較に基づいて」の冒頭部より

前川前文科省事務次官の天下りに関して総括されていない

それはそれ、これはこれで、何かについて不祥事起こしたからと言って、その人の発言や人間性がすべてダメというわけではなけいれども、大学行政を著しくゆがめる天下りや現役出向の責任者であった前川さんが「行政をゆがめる」といって安倍首相を批判しているのであれば、マスコミはある程度のスペースや時間をとって「じゃあ、あなたの行った天下りや現役出向はどうなのですか?」と総括を求めるべきだと思う。とりあえず、私が見聞きした前川さんのインタビューなどではこの件が触れられていない(だからこそ、逆に天下りや現役出向を指示した人間なのだから、彼の発言を一切聞く必要がないみたいな意見もでてきて非建設的)。ちなみに、加計学園問題関連のSession 22での報道で唯一不満なのがこの点について述べない点。

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結局、予算の問題なので財政均衡を重視する政府と獣医師の供給問題は矛盾している

産業動物診療の獣医師が足りない問題は待遇が悪いから。供給量が少ないのが本質的な問題ではない。感染症対策などを問題視するのであれば国が各自治体に予算をつけて産業用動物を診察する獣医師の待遇改善を図るのが最も適切な政策割り当てだと思う。

○八田座長
獣医さんの平均所得に関する統計というのはあるのですか。

○荻窪課長補佐
これは平成25年になるのですが、日本獣医師会のほうが全国の獣医師向けに調査をした結果でございますけれども、小動物診療の獣医師であれば、雇用者のほうであれば平均年齢49
歳でございますが、1,300万円弱でございます。常勤の被雇用者、これは60歳以下でございますが、平均年齢にすると33歳程度で500万円強というような数字が出てございます。

また、一方、産業動物診療の獣医師でございますが、こちらについては雇用者のほうでございますが、平均年齢が56歳程度の中で1,000万円程度。常勤の被雇用者であれば35歳平均ですけれども、500
万円程度という数字が出てございます。

平成26年8月19日 国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)より)

参考:公務員の職種、勤続年数別平均年収が知りたい - 発声練習

閣僚の発言や国会議事録になかなかアクセスできない。会議録の公開が遅い

共謀罪の議論のときも思ったけど、議事録の公開が遅い。

"まずは、国会審議から2ヶ月半も経つのに、議事録がホームページに掲載されていないこと自体、非常に不当でしょう。
加計学園問題の原点:安倍首相の3月13日の参院予算委での答弁を分析する(渡辺輝人) - 個人 - Yahoo!ニュースより)

どれくらいで議事録は公開されるのか古い情報源だけど2週間程度とのこと。

一般に,会議録原稿を印刷送付するまでに約1週間,委員会議録は印刷期間が3日~6日であるから2週間程度で発行できる。ただし,本会議録は印刷期間が長いため発行までに1か月程度かかっているのが現状である。
猿谷 豊: 衆議院における音声認識を利用した会議録作成業務, 情報管理, Vol. 55, No. 6, pp. 392-399 (2012) より)

議事録の公開が遅いというのは現政権の陰謀を疑うよりも、行政の他の部署と同様に予算削減のため人員を割くことができず、仕事が回っていないのではないかと予想。人工知能を用いた国家戦略の最初として、音声認識+テキスト化+マークアップ化+オープンアクセス化を半自動的に行えるシステムを国会に導入してほしい。そうすると、以前、朝日新聞が行っていたような定量的な国会論戦分析も頻繁にできるようになる。

www.asahi.com

追記:乗り換え先と成れない野党

共謀罪、森友学園問題、加計学園問題と国民ががっかりする展開が目白押しにも関わらず安倍自民党以外を選択できないのは、ただ一点、経済政策が他と比べて(自民党内も含めて)マシだから。


www.nikkei.com

自民党税制調査会の野田毅最高顧問ら有志議員が16日、財政再建に向けた勉強会を発足させた。勉強会を通じて安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」に警鐘を鳴らすのが目的。野田氏が代表発起人を務め、中谷元・前防衛相や野田聖子元総務会長が呼びかけ人となった。野田毅氏は「財政破綻の足音が聞こえてきており、このまま放置するわけにはいかない。財源の裏付けがないまま、惰性に流されるのはあまりにも無責任だ」と語った。16日は日本の社会保障制度などについて議論。今後は日銀の金融政策などをテーマにする予定。

www.nikkei.com

「私が政治生命をかけて取り組んできた3党合意も風前のともしびになってしまった。消費税を政争の具にしないという精神が失われた」。14年秋に消費増税延期を決め衆院解散に踏み切った首相を野田氏がこうなじると、首相は書類に何ごとかペンを走らせた。

野田氏は財務相を経験した増税論者で、12年に民主、自民、公明3党が消費増税で合意したときの当事者。与党の民主党が参院で過半数に満たない「逆転国会」の下で「決められない政治」が常態化するなかで、3党合意はそれを克服する政治の知恵とも呼ばれた。それを首相は踏みにじったとの批判だ。

主張/日銀金融政策検証/破綻した政策 固執し続けるな

今求められるのは、日銀の異常な金融政策だけでなく、安倍政権の「アベノミクス」そのものを中止し、根本的に転換することです。日銀が国債を大量に買い上げているため、安倍政権が発行する大量の国債が事実上日銀で賄われています。異常な金融緩和と「アベノミクス」の継続は金融と経済、財政のゆがみを拡大するだけです。

安倍自民党の金融政策だけをそのまま拝借し、あとは再分配などを追加して提示する政党があればそっちを支持したい人は私を含めて多くいると思うので、ぜひ、野党は選択肢になってほしい。

この件に関する私の知識源は以下の通り。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

この経済政策が民主主義を救う: 安倍政権に勝てる対案

緊縮策という病:「危険な思想」の歴史

良い経済学 悪い経済学 (日経ビジネス人文庫)

選挙の経済学

私の立ち位置
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関連:TBSラジオ Session 22の加計学園関連メインセッション

私の情報源はだいたいこちら。

ラジオクラウド
www.tbsradio.jp
上記のラジオクラウドリンク

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