瀬畑源:公文書問題 日本の「闇」の核心

読了。

公文書問題 日本の「闇」の核心 (集英社新書)

公文書問題 日本の「闇」の核心 (集英社新書)

出版された時期の関係で主に安倍政権下の公文書問題(南スーダン日報問題、もりかけ問題)および小池都政の豊洲問題を話題にしているけれども、基本的には日本の行政組織は公文書を作成すること、残すこと、保管することに消極的なことが示されている。

私の中で、経済政策の観点でぼろぼろの評価であった民主党政権、特に岡田衆議院議員が情報公開に関しては大変頼もしい人だったというのは驚きだった。いろいろな章でちょくちょくでてくるけれども第四章「外交文書を公開する意義」の節「岡田克也衆議院議員の外交文書公開論」で述べられている。
www.asahi.com
www.nikkei.com

情報公開や公文書管理は、野党に転じた時に与党と戦う武器になるため、政権交代が定期的に起こらないとなかなか情報公開や公文書管理の重要性が国会議員に染み渡らないのかなぁというのが一読した感想。
h-sebata.blog.so-net.ne.jp


情報公開の重要性について第二章「情報公開はなぜ必要か」より

米国では、この情報公開の理念を掲げる際に、ジェームズ・マディソン(第四代大統領)が1822年にW・T・バリーに宛てた手紙の一節がよく用いられます。

「情報が行き渡っていない、あるいは入手する手段のない『人民の政府』なる存在は、笑劇か悲劇の序章か、あるいはその両方以外の何者でもない。知識は無知を永遠に支配する。だから、自ら統治者となろうとする人々は、知識が与える力で自らを武装しなければならない」(筆者訳)(next49注:筆者=瀬畑さん)

主権者であろうとするためには、情報を入手して自らの考え方を鍛える必要があるのです。

今回の公文書問題に安倍政権が対応するためには、行政府の長としての官僚に対する統制に失敗したことを認めた上で、一種の被害者として公文書管理改革をするのが比較的無難なところだと思う。野党の提案にもっと与党ならではの踏み込んだ提案を加えて法案だしたら評価変わるのじゃないかと思うのだけど。第17章「公文書管理法改正を考える」より

2017年6月9日には、民進党・共産党・自由党・社民党の野党四党は、衆議院に公文書管理法改正案を共同提案しました。これは特定秘密保護法案の対案の一つとして2013年に民主党(当時)が提案したものをベースとし、安保法制の成立後に改訂し、今回さらにバージョンアップさせて野党共同の法案にしたものです。

mainichi.jp

この法案について著者の瀬畑さんがまとめたポイントは以下のとおり。

  1. 行政文書の三要件(職務上作成・取得、組織的に用いる、保有している)のうち、「組織的に用いていないから私的メモ」として抜け道に使われがちな「組織的に用いるを削除」。
  2. 電磁気的記録(PCなどで作った文書)及び当該行政機関以外の者と接触した記録は、「一年未満」の保存期間にすることができない。
  3. 行政文書をまとめる際には「保存期間を同じくする」を削除して決定と経過を一つの行政文書とし、保存期間を最も保存期間の長い文書に合わせることにする。
  4. 保存期間が満了した行政文書であるにも関わらず、移管も廃棄もされずにとどめられている文書は、現用の行政文書扱いとする。
  5. 「行政文書の管理に関するガイドライン」を法定化し、ガイドラインに従うことを徹底させる。公文書管理委員会の権限を強化し、恣意的な公文書管理への歯止めとする。

上の野党案は情報公開クリアリングハウスが作成した「公文書管理法の改正に関する意見」が反映されているのではないかとのこと。
clearing-house.org

上に引き続き野党は法案を出しているとのこと。

なお、2017年12月5日には、野党案を若干手直ししたものを、野党六会派(立憲民主党、希望の党、無所属の会、日本共産党、自由党、社民党)が共同で衆議院に提出しました。野党側は、森友問題なの解決策として、公文書管理法の改正を目指しています。

mainichi.jp
www.youtube.com