中野信子氏「日本人は、脳科学的に英語が下手」であった以下の部分。
中野: 脳内には「セロトニン」という神経伝達物質があって、これが十分にあると、安心感を覚え、やる気も出ます。このセロトニンの量を調節しているのが、セロトニントランスポーターというたんぱく質。神経線維の末端から出たセロトニンを再び細胞内に取り込む役割を担っています。この数が多いと、セロトニンをたくさん使い回せるので、気持ちが安定し、安心感が持てます。逆に少ないと不安傾向が高まります。
日本人は、このセロトニントランスポーターの数が少ない人の割合が世界で一番多い。つまり世界一、不安になりやすい民族なんです。
編集部: そうなんですね。反対に、セロトニントランスポーターの数が多い人の割合が世界一なのはどの国ですか。
中野: 現時点でデータのある国の中では、南アフリカです。自分の腕だけでのし上がらなければならないという環境からの圧力が高く、不安を強く感じる人は遺伝子を残しにくいのでしょうね。あとは、ダイヤモンドを掘り当てようと、一獲千金を夢見る人たちが集まったからかも。
一方で、南アフリカにも少数派ながらセロトニントランスポーターの少ない人が存在しています。だから、そういう人たちが生き延びられる環境も、局所的にはあるのだと思います。
編集部: 日本人にも、セロトニントランスポーターの数が多い人はいるのですか。
中野: はい。3%くらいはいます。残り97%は不安になりやすい。一方、アメリカ人の場合、32%の人が、セロトニントランスポーターの数が多い。日本の10倍以上いるわけです。アメリカの大学で行われたある調査によると、教授になった人に、「あなたは同僚の教授たちよりも優れていると思うか」と聞くと、なんと94%の人が「Yes」と答えたのです。この自信の源がセロトニンといえるかもしれません。
本当かよと思って、Googleで検索した結果この論文っぽい。
この論文のTable 1 "Genotype and allelic distribution of 5-HTTLPR in normal populations in different countries"に国別の調査結果と南アフリカとの比較があるのだけど、L/Lを「セロトニントランスポーターの数が多い人」とすれば、上で述べている数字は間違ってはいない。S/Sだけだと65%になるけど(この表では一番S/Sの割合が多い)。
この表の日本の調査の元論文は以下の論文。山陰地方に住む19歳から81歳までの501名(232男性、269女性、平均年齢 47.9±10.4歳)で調べた結果とのこと。
元記事は、単にセロトニントランスポーターの数が国によって違うから教育方法も国によって変えた方が良いかもぐらいの話で終えておけば良い記事だったろうに。
追記:不安遺伝子があるのと実際にそれが影響するかはどうかは別とのこと
教えていただいた論文。フィンランド人のサンプルにて不安遺伝子を持っているかどうかと損害回避性(harm avoidance)と神経症的傾向を持っているかどうか調べたところ関係があるという証拠はないという結果が得られたという論文
- クロニンジャー理論の気質:損害回避はこれの区分のひとつ
- パーソナリティとBMIとの関連について:EPQ-Rの説明が途中にある
- セロトニントランスポーター遺伝子,ストレスイベント,うつ病リスクの相互作用:メタ解析:うつ病と関連というあるとは言えないという結果
- うつ病発症と遺伝子/ 環境相互作用:S型とL型の2種類に分けるのは不適切ではないかという指摘もあるという話。