今月も歴史コミュニケーション研究会にお邪魔してきた。今回のお題は、第4回研究会:せんだい歴史学カフェ×歴コミュ研「銀幕から読み解く歴史像」。
定期的に、西洋史を中心とした歴史学の話題をUstreamで提供されているせんだい歴史学カフェのみなさんがゲストということで、これは見に行かねばということで行ってきた。自分の研究課題を社会にフィードバックしなければというのは常に思っているけど、思うのと実際に行動に移すのには大きなギャップがある。それを定期的につづけられているというのは非常に素晴らしいと常々思っている。
18:00ちょっと過ぎから始まり、終わったのは20:30。トラブルありとはいえ長丁場の会だった。せんだい歴史学カフェのみなさん、歴史コミュニケーション研究会のみなさん、お疲れ様でした。以下、感想を思いつく限りメモ。
大谷哲さん(東北大・古代ローマ史) 「映画『アレクサンドリア』における古代末期社会と宗教の表象―皇帝、司教、修道士、哲学者―」
映画自体が面白そうだった。
- エジプトの都市のアレキサンドリアにて、キリスト教がどんどんと勢力を広げていっていたというのは驚き。冷静に考えれば、ローマ帝国がキリスト教を国教として定めたあとは、地中海世界のローマ帝国領土にてキリスト教が広まっていったのは当たり前のこと。それでも、エジプトにキリスト教というのはそれだけで意表を突かれた気がした
- 史実にしたがえば、キリスト教は映画ほど影響力はなかっただろうとのこと。ということは、映画製作者は意図的にキリスト教を悪者(抑圧者)側に見せるという選択をしたということ。カソリックのスペインにおいて、キリスト教の抑圧的な側面をあえてアピールすべき社会的文脈がこの映画の公開時にあったのだろうと思う。それはなんだろう?
永本哲也さん(東北大/東海大・ドイツ近世史 「『キング・フォー・バーニング』に見る、史実とフィクションの関係」
- 日本ではマイナーな話でも、ドイツではドラマが作られる程度にメジャーな話であるという当たり前の事実
- 今の大河ドラマの話だって、海外ではマニアックな歴史エピソードだものね。
- 史実とは反しているが、人々の持っているイメージの再生産 or イメージの強化に寄与する歴史ものについて、歴史家やわれわれはそれにどう向き合うのか?という問い。
柳原伸洋(東海大・ドイツ現代史、本研究会の主催者) 「3本の映画に見る東ドイツ ―『グッバイ、レーニン!』『善き人のためのソナタ』『東ベルリンから来た女』」
さすがのプレゼン力。少なくとも『グッバイ、レーニン!』は見ようと思った。残り二つは精神的に耐えられるかわからない。
- 映画をより楽しむためのスパイスとしての歴史的知識を提供する。東ドイツでは秘密警察の非公式協力者が100人に1人いるということを知っているのと知らないのでは映画鑑賞時のスリルが違う。同様に東ドイツでは秘密警察による電話の盗聴が当たり前だったことを…。
- 「〜で絶賛」「〜で〜賞受賞」という映画を日本に持ってくるとき、映画そのものだけでなく、映画を楽しむための前提知識も一緒に持ってこないと、肩透かしに会うかもしれない。
懇親会
今回もいろいろと面白い話を伺った。
- 初期キリスト教(〜3世紀ぐらいまで)は裕福層が対象。交易を通して点で広まっていった。
- 殉教者がカレンダー埋めるほどに増えたのは、キリスト教がマジョリティーとってから。各地域に広まっていったキリスト組織を束ねていく過程で、その土地土地の風習を盛り込む形で殉教者が使われたのでは?とのこと。取り込む風習が先にあり、都合の良い殉教者を探すという展開があったのではないか?
- 聖人も同様。
- 初期キリスト教の組織構築過程の研究が十分進んだら、「白いたい焼き」屋とかのローカル食べ物屋が日本全国に散らばっていくさまと比較してほしいところ。「〜系」ラーメンののれん分けの歴史とかでも面白そう。
- 「ヨーロッパの成り立ち」という授業。でも、ヨーロッパって何?でつまづく。ロシアはなんでヨーロッパに入れてもらえないのか、入らないのか。
- 「第3のローマ」。あの半島は「第三〜」好きだなぁという感想。
- ミュンスターとミュンヘンを間違える痛恨のミス。再洗礼派の話好きなのに間違えた。
おまけ
懇親会でご紹介した世界史厳しいと実感させてくれるパラドクスゲームたち。強い国は強く、弱い国はつぶされる。それがパラドクスゲームの掟。なんで、うまい人はあんなにいろいろできるの?
- クルセイダーキングスII:十字軍の時代のゲーム。ヨーロッパの婚姻による領土拡張が味わえ、かつ、モンゴルに蹂躙されるゲーム。私のポーランド王国がロシア帝国とハンガリー王国にいちゃもんつけられて大変な状態でフリーズしている。
- ヨーロッパユニバーサリスIII:未プレイ。ナポレオン戦争あたりのゲーム
- ヴィクトリア2:前作をプレイ。ヴィクトリア女王の時代から第一次世界大戦まで。イギリスにアリのように踏みつぶされるゲーム。ドイツ帝国成立のくだりが面白くていつも成立させるのだけど、そのあと詰んでしまっている。
- ハーツ オブ アイアンIII:未プレイ。第二次世界大戦のゲーム