わからない。
もう少し具体的に考えてみよう。グリーンランドが例にあげた放射線被ばくのモデルをそのまま使ってみる。次のような単純なモデルだ。調査対象は4人である。放射線被ばくをしたのはそのうち2人、残りの2人は被曝しなかった。ほかの条件は全く同一であったと仮定する。そしてそれぞれを50歳から80歳まで観察する。被曝した2人がそれぞれ60歳と70歳で亡くなり、一方で被曝しなかった2人はそれぞれ70歳と80歳で亡くなった、という結果が得られたとする。
被ばくした2人について考えてみよう。被ばくがなければ彼らはそれぞれ70歳と80歳まで生きたはずである。彼らに生じた健康への影響には2つのケースがありうる。
ケース1:2人のうち、1人は被ばくしなければ80歳まで生きたのであるが、発がんが20年早くなって60歳で亡くなった。もう1人に影響はなく70歳で亡くなった。
ケース2:2人とも影響を受け、それぞれ10年づつ発がんが早く起き、亡くなった。ケース1の場合、放射線被ばくを原因として亡くなった確率(原因確率と呼ばれる)は1/2、0.5である。ケース2の場合、被ばくの原因確率は2/2であり、1.0となる。個人レベルで考えると全く異なっているふたつのケースであるが、集団で考えた時に平均寿命は同じ65歳となる。被ばくによる過剰相対リスクはどれだけになるだろうか。
A_1 = N_1 = A_0 = N_0 = 2
R_1 = R_0 = RR = 1
ERR = RR - 1 = 0
過剰相対リスクは0。つまりただの一人も放射線被ばくによって健康被害を被らなかったという結論が導かれる。極端な例であるが、これは被ばくによる影響の議論が盛んだった一年ほど前、一部にみられた「いずれどうせ死ぬ」という意見の定量的な表現である。
(kom’s log:過剰相対リスクの意味より)
以下のようになるのでは?
被ばくの有無 | 総数(N) | 発症者(A) | 平均発症率(R) | ||||
被ばくあり | 2 | 1 | 0.5 | ||||
被ばくなし | 2 | 0 | 0.0 |
- 相対リスク(RR) = R1/R0 = 0.5/0.0 = NaN or Infinity
- 過剰相対リスク = RR -1 = NaN or Infinity
それとも、観察している集団の全員が発がんしたという前提なのならば上の計算は筋が通っている。