メディアまで「うまいレッテル」で情報処理してしまうのはまずい

放射線被ばくの健康影響については、まだ研究途上にある。だからこそ、次代を担う子どもたちの安全を願う親たちの不安は深刻なのだが、そんな折も折、低線量被ばくの問題点を指摘したNHKの番組に、原発と深い関わりを持つ団体が抗議の矛先を向けた。このバトル、どうなるのか。【根本太一】

論調は「原発と深い関わりを持つ団体が反省の色もなく、低線量被ばくの問題点を指摘したNHKに文句を言っている。メディアは暴走する専門家に屈してはいけない」みたいな論調。この論調は、原発と深い関わりを持つ団体が反省の色もなく文句を言ってきているので、文句を言われている方の主張は正しいという結論を導いている。これはまずい。

低線量被ばく 揺らぐ国際基準 - NHK 追跡!真相ファイルについては、放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説で、停戦量低線量被曝について問題視されている田崎さんも良いところもあったし、悪いところもあったという是々非々の評価をしている(2011/12/29(木)の日記、もっと強い批判はこちらbuveryの日記:NHKはDDREFのことを知らない。)。当然のことながらこの番組が完璧なわけでない。たぶん、適切でないところがたくさんある。それを「原発と深い関わりを持つ団体が反省の色もなく文句を言ってきているので、文句を言われているNHKの番組は正しい」というフィルタリング処理してしまうと、適切でないところが改善されない。

私も、うまいレッテルをどう貼るかで書いたように「他者が検証しやすい形で情報を提供している人はまともな可能性が高い」と考え、そういう姿勢をとる人の言うことを信じて、そうでない人を信じないという素人向け情報判断を書いたけれども、NHKを初めとするテレビ局や全国紙までもが素人向け情報判断してしまうのはまずいと思う。

福島第一原発事故が起こった今となっては原発と深い関わりを持つ団体は「他者が検証しやすい形で情報を提供している人はまともな可能性が高い」というフィルタリングで落ちる人たちなのは確か。素人は聞き流した方が良いと思う。でも、国民の知る権利を委託されて、かなりの特権を持つテレビ局や全国紙が同じスタンスで動くならば、国民はどこで「専門家のちゃんとした意見」を知れば良いのかわからなくなる。

国民の知る権利を委託されて、かなりの特権を持つテレビ局や全国紙は、誰が言ったかで正当性の判断をするのではなく、言った内容のどれが正しいかを適切な伝え方で知らせるべき。それができないとしても、それができる人を見つけて場を設けるべきと思う。批判者は実名で抗議文出しているのだろうし、それと対決する人材も今はたくさんいるだろう。そして、私のようにその対決を見たいと思う視聴者も存分にいる。