続:成長度テスト

わだいのたけひこのざっき:大学生に成長度テストでご批判いただいたように、誰の発案だ?:大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へでは単なるくさしだったので、生産的かどうかわからないがちゃんと意見を書いてみる。と思ったけど、長い版の記事を読んだら、別にやってもいいんじゃない?と思ったので意見を述べるのをやめる。(と思ったけどTwitterでつぶやいた私的メモ:「大学生に成長度テスト検討 「勉強しない」汚名返上へ」から始まるつぶやき

ベネッセの報告書をみるかぎり、教養および基礎能力を測定することを目的(特に大学の教育能力を見ることが目的)であり、「学生が勉強しない」を変えるテストではない様子。

長い版

日本の大学生は勉強しない――。そんな汚名を返上しようと、文部科学省は、現役学生向けの「共通テスト」を開発する検討に入った。入学後と卒業前に2度受験すれば、在学中の学習成果の伸びが客観的にわかるようにする。結果を分析してカリキュラムの改善に役立てたい考えだ。

大学生の「能力測定」と位置づけ、年に1回、読解力、論理的思考力、批判的な思考力、文章表現力などを問うことを想定。大学の講義にどれくらい主体的に参加しているかといった学習態度のアンケートも課す。同じ学生が2度受ければ、成長度を「可視化」できると期待する。

対象は全国の大学。大学として参加するかどうか、何人の学生を受験させるかなどは、各大学の判断に任せる。文科省は、伸びが著しい大学の取り組みを公表するよう促すなど、成果重視の仕組みを作る。文科相の諮問機関である中央教育審議会の大学教育部会で具体的な検討を進める。

文科省によると、米国インディアナ大学は、学生が教員や他の学生とどう関わり、しっかり学習しているかどうかなどを評価する調査方法を開発。この調査に米国とカナダの1千校以上が参加し、経年比較や大学間の比較に使っている。米国では、学士課程前半の一般教育の到達度として、文章表現力や数学的能力を問うテストもしている。同省はそれらの事例も参考にしたいという。

日本の大学生の平均学習時間は1日4.6時間。1日8時間程度とされる欧米と大きな差がある。授業などを除いた1年生の学習時間をみると、日本の学生の半数以上が週5時間以下だ=グラフ。また、日本の大学教員は受け持つ講義のコマ数が多いため、講義の準備時間が足りず、学生の興味を引くような講義をできていないとの指摘もある。学部や学科の「縦割り」がカリキュラムの体系化を阻んでいる面もある。

 文科省はそうした問題点を考慮し、グローバルに活躍する人材の育成のため、「学習時間の確保と学習密度の向上が必要」と判断。各学長から「学生が何を身につけたか」を重点的に聞き取る調査も初めて実施する方針だ。

 文科省の担当者は「個々の学生の能力を比べるためのものではない。共通のものさしで各大学が自らの『教育力』を把握し、改善につなげてほしい」と話している。(花野雄太)

既に確立された方法があるらしい。

アメリカにおける教養を測定するテスト

検索したら以下の記事が見つかった。たぶん、朝日新聞の記事はこれを指していると思われる。以下のエントリーの著者は羽田 積男さん。

各評価機構の基準に対して、評価を受ける大学側は学生の学習成果についてエビデンスをもって応えことになったが、どのようなエビデンスや資料が必要かは、評価機関も大学側双方も現時点ではあまり明らかにしていない。いずれにしても教育の内容や質を保証するのは、当然のこと大学個々の課題ではあるが、これを外部から支援するシステムの構築もまた緊要なように思われる。

例えば、A大学の外国語学部の英語クラスBの期末試験の平均点77点は、どのような意味があるのか。学生も真面目に学び、担当講師の努力も推し量られるが、平均点77点は、例えば海外留学に十分な実力を保証しているであろうか。それにはやはりTOEFLのスコアの方が国際的な通用性や説得力においてはるかに確かであろうと、誰もが言うであろう。ここに外部の教育調査や標準的試験などの効用があろう。外部の教育調査機関の出番である。

しかし、学生に対して直接的な試験を実施するといっても、学生の学習はその内容や方法など、大学によって千差万別であり、これらを一つの試験で済ませようとするには無理がある。ところがアメリカの学士課程の教育は、基本的には教養教育中心なのである。あるいは一般教育と言い換えてもよい。つまり、ここをターゲットにして調査や試験が可能となろう。

この直接的調査に参入している調査機関は、高校から大学へ進学する際の進学適性試験を実施している有力な機関などである。SATとACTである。100年の歴史をもつSATは、CAAP(College Assessment of Academic Proficiency)という一般教育の学習成果を測定する標準化試験を開発している。読解力、作文、数学などの試験である。他方、半世紀の経験をもつ後者は、WorkKeysと名づけられた、学生のキャリア教育の実効性を測定する試験を開発している。

これらはいずれも非営利の大手試験機関によって開発された試験であり、大学と学生の間に入って学生の調査や試験を行うことには長い歴史と経験を持っている。一般教育やキャリア教育であれば、千差万別の背景を持つ学生に向けても投網をかけて彼らの学習成果を把握できよう。

上の共通テストをどう使うかについてアメリカでも以下のような議論を経て普及に至った様子。

文科省がすでにこれらのテストについて調査させていた様子。オーストラリアとアメリカの共通テストについて以下の調査がある