社会教養のための技術リテラシー

科学と技術の違い?続・科学と技術の違い?で意見交感した際にshowgotchさんに紹介していただいた本「社会教養のための技術リテラシー」を読んだ。

一番知りたかったのは「技術と科学の違いは何か?」と「技術リテラシーというのは具体的にどういうものなのか?」ということ。

技術と科学の違いは19ページから20ページにかけて詳しく列挙されていた。

科学と技術の相違点をまとめてみると、

  • 第1の違いはその目的である。技術には目的がありそれは人間の必要や欲求を満たすことである。科学には知識の獲得以外の目的はない。〜中略〜
  • 第2の違いは科学は正解を求めて研究を行うが、技術の問題には唯一の正解と呼ばれるような解はなく、与えられる条件のもとでの最適解だけがある。〜中略〜
  • 第3は知識の寿命である。技術知識の半減期という表現もあるほど技術知識、特に先端技術と呼ばれる種類の技術知識は新陳代謝が早く、すぐ陳腐化するものが多い。これに対し科学の知識はそれが誤りと証明されない限り永久的なものである。〜中略〜
  • 第4には科学者には広義の研究者と教育者(伝道者)とそれらを支える人々しかいないが、技術者の多くは研究者でも教育者でもなく、製品やシステムを計画、設計、製作、販売、点検保守する実務家である。 〜中略〜
  • 第5に技術は人工物を自然界に導入し必然的に自然を改変することになるが科学には自然を変える意図はない。 〜中略〜
  • 第6の違いは、科学は社会に影響を与えることがあるが、社会は科学の研究テーマの選択に影響することはあっても自然科学の結論に影響するものではない。これに反し社会は常に技術に影響を与えるものであり、社会を離れて技術を考えることはできない。 〜中略〜

科学は自然現象を分析し、できるだけ少ない原理原則に還元する学問であるが、技術は各種の要素を統合して人間の役に立つものにする手段であると考えれば、以上まとめた6つの違いのある所以を概念的に理解することができよう。
(pp. 19 -20)

科学と比較されている技術の定義は以下のとおり。

本書では、技術とは人間が人間の要求や欲求のために集積してきた知識や情報の集積であると定義したい。
(p.7)

技術は製品やシステムを作るための手段であり、その仕事をするためには、道具、機械、材料、情報、エネルギー、人間の労力とスキル、資本、そして時間何度の資源が必要である。
(p.7)

科学の定義はないけれども、技術の定義に準じるならば「集積してきた原理や原理を見出すための情報の集積」が科学なのだと思う。理論系や実験系の研究者は理論や原理、メカニズムを見出すことを目的にしているので科学系の研究者、応用系や開発系の研究者は、理論や原理に基づき役にたつものを作り出すことを目的としているので技術系の研究者ということになる。この定義が正しいという前提の上で、科学と技術の違いには納得。

また、科学リテラシーと技術リテラシーの違いも説明されていた。

簡単にまとめれば科学リテラシーは効率的コミュニケーションを目的とするものであり技術リテラシーは技術に関係した的確な意思決定を狙いとしている。
(p.20)

ただし、じゃあ、具体的に科学リテラシーと技術リテラシーは何が違うのか、また、この二つのリテラシーはどういう関係にあるのかは、本書ではわからなかった。

上記以外に気になった点を抜きだし。

  • (p.7)技術で作られるものは人工物(artifact)とよばれ、自然物と区別される。
  • (p. 10)技術に利用される科学は技術科学(technological science)と呼ばれ、最近広く用いられる用語になった。しかし、広く用いられている科学技術なる用語にははっきり定義された概念は存在しない。この用語は正確に定義されておらず、あいまいな状態で、一般的に『科学と技術』の意味の表現に使われている。
  • (p. 19)科学と技術はもともと独立に発展してきたものであったが、産業革命以後、科学的知見が技術上役に立つことが分かってくるにつれてその区別が不明になり、19世紀から20世紀初頭にかけては、科学も技術も区別なく扱われることが多くなった。
  • (p .45)社会と生活の返歌によって教育現場でのスキルの訓練は常に固定した教科の枠内でなされるべきであるとは限らないことを銘記すべきである。