備忘録として。
ファクトチェックの記事がでた誤情報
- 学術会議OBは学士院で死ぬまで年金250万円
- アメリカ、イギリスの「学者団体には税金は投入されていない」
- 学術会議が「レジ袋有料化を提言」
- 日本学術会議、答申が出ていないため「活動が見えていない」
- 日本学術会議が「中国の軍事研究に参加」「千人計画に協力」
- 日本学術会議幹部が「北大総長室に押しかけ研究を辞退させた」
- 任命拒否6人、ツールで低評価だから学者と言えない
- 学術会議が科研費4兆円を再配分
- 防大卒業生が大学院に行きたくとも東大など各大学は断る (2020年10月16日追記)
はじめに:日本学術会議の歴史的経緯と位置づけ
誤情報拡散経路について (2020年10月16日追記)
学術会議OBは学士院で死ぬまで年金250万円
日本学術会議の任命拒否問題に絡み、フジテレビの5日昼の情報番組「バイキングMORE」で、平井文夫上席解説委員が「会員OBは日本学士院会員になり、死ぬまで250万円の年金をもらえる。そういうルールになっている」と発言し、インターネット上で拡散された。同様の発言をする与党議員もいたが、日本学士院などに確認すると、日本学術会議OBが学士院会員になるというルールはなく、発言は誤りだった。
そもそも双方は独立した組織。学士院の会員にはなるためには推薦、選考が必要であり、学術会議の所属がその資格になるわけではない。フジテレビの解説委員や国会議員が拡散した情報は、ネット上で大きく広がりを見せている。
アメリカ、イギリスの「学者団体には税金は投入されていない」
「学者がよく口にするアメリカとイギリス。両国の学者団体には税金は投入されていないようだ」とTwitterに投稿した橋下徹・元大阪府知事。しかし、この情報は誤りだ。
学術会議が「レジ袋有料化を提言」
- ファクトチェック:「学術会議がレジ袋有料化を提唱」ツイートは不正確 提言はプラごみ削減 - 毎日新聞
- 【ファクトチェック】レジ袋有料化は日本学術会議が提言したせい?→政府の海外への環境対策アピールでした | BUZZAP!(バザップ!)
- 学術会議が「レジ袋有料化を提言」は誤り。ネット上で拡散、実際の内容は?
拡散のきっかけになっているのは、東京新聞が10月8日に報じた日本学術会議・大西隆元会長の寄稿だ。しかし、レジ袋の有料化は政府が2018年ごろから進めてきたもので、担当する環境省も学術会議の関与を否定している。
微細なプラスチック片が分解されずに海に滞留し、摂取した魚、さらに人に害を及ぼすから、プラスチックの利用を大幅に削減しようというキャンペーンが、レジバッグ有料化やマイバッグ携帯につながった。このきっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱であった。
日本学術会議、答申が出ていないため「活動が見えていない」
「日本学術会議」の新たな会員として推薦された学者6人の任命を、菅義偉首相が拒否したことをめぐる問題。
自民党の下村博文・政務調査会長は日本学術会議について10月7日、「政府に対する答申は2007年以降出されていない」とした上で、「活動が見えていない。ちょっと色々な課題があるのではないかと我々は思っております」と語り、「会議」の在り方自体を検討し直す必要があるとの認識を示した。
自民党は独自のワーキンググループを設置し、政府に対し提言を行う方針だ。だが、この下村政調会長の発言はミスリードだ。
日本学術会議が「中国の軍事研究に参加」「千人計画に協力」
軍事転用への懸念などがアメリカで示されている中国政府による「千人計画」に対して、日本学術会議が協力しているという根拠のはっきりしない情報が広がっている。発端は自民党の甘利氏の発言にあるとみられるが、学術会議側は、これを否定している。
「日本学術会議が中国の軍事研究『千人計画』に積極的に参加している」という真偽不明の情報がネット上で広がっている。日本の軍事研究には批判的なのに中国には協力するというのは矛盾しているという趣旨だ。日本学術会議は「千人計画への参加は決定していない」と否定したが、委員会質問をした自民党議員やテレビ番組で立川志らくさんらが次々とこの情報を引用する事態に発展している。「千人計画」に参加して中国で研究を続ける日本人研究者は、こうした日本の状況をどのように感じているのか。匿名を条件に参加条件や待遇などを赤裸々に語ってもらった。
「日本学術会議」が推薦した新会員6人を菅義偉首相が任命しなかった問題で、野党合同ヒアリングが15日、国会内で開かれた。「日本学術会議が中国の軍事研究『千人計画』に積極的に協力している」などの情報が拡散していることについて、元会長は「悪質なデマ」と断言し、内閣府も「関わりありません」と明確に否定した。詳報は以下の通り。
日本学術会議幹部が「北大総長室に押しかけ研究を辞退させた」
北海道大学のある研究について、日本学術会議の幹部が「北大総長室に押しかけ研究を辞退させた」という情報が拡散している。元記事では、この情報は訂正されているが一人歩きしている状況だ。
誤情報発信元
【訂正】
当初の原稿では「学術会議幹部は北大総長室に押しかけ、ついに2018年に研究を辞退させた」としましたが、学術会議幹部が北大総長室に押しかけた事実はありませんでしたので、「学術会議からの事実上の圧力で、北大はついに2018年に研究を辞退した」と訂正します。
任命拒否6人、ツールで低評価だから学者と言えない
日本学術会議の新会員候補6人を菅義偉首相が任命しなかった問題に関し、「6人を学術評価ツール『スコーパス』で調べたら全員低評価で、国際的にはとても学者とは言えない」とする内容の投稿がツイッターで広がった。このツイートは削除されたが、ネット番組でも同じ内容が紹介され、拡散している。しかし、スコーパス(Scopus)は英語中心の文献データベースで日本語の論文はほとんど収録しておらず、これを基に日本の人文社会系の研究者を評価するのは適切でなく、誤りだ。
ライデンマニュフェスト
文の被引用数等の計量データは、適切に利用されれば専門家(ピア)による評定をより妥当、公正にするための補完となり得るが、データに主導された評価や、指標の意味・性質の不十分な理解による誤用がしばしば見られる。このような状況に対して、研究評価における計量データの利用についてのベストプラクティスを示した「研究計量に関するライデン声明」(“The Leiden Manifesto for research metrics”)が、2015 年に Nature 誌上で公表された。本稿では、このマニフェストの成立の経緯を述べた後、10 項目の原則の全訳を紹介する。このマニフェストは、研究者、管理者、評価者の全てにとって、計量データに立脚した研究評価のガイドラインとなるものと考えられる。
(小野寺 夏生, 伊神 正貫: 研究計量に関するライデン声明についてより)
学術会議が科研費4兆円を再配分
この科研費と学術会議の関係について言及したのは、ネット番組の「Front Japan桜」。
男性キャスターが学術会議について「裏がある」とし、「学術会議のメンバーが中心となって科研費の再配分をやっているわけですよ。学術会議の看板使って一種の圧力団体と化しているわけ。これで科研費ということになると4兆円とか、科研費がらみなんていうと6兆円とかですね」などとした。
さらに「彼らだけがやるわけじゃないですよ」としつつも、「予算配分、予算按分に大きな力を持っているので、本当に適正であって必要であるのかは当然議論になるわけです」とした。
この部分を切り取った動画がTwitterにアップされると、1100回以上リツイートされ、動画の再生回数は11万回を超えた。
しかし、この情報は誤りだ。
まず科研費の予算は文部科学省の令和2年度予算で公開されていて、2373億5000万円だ。「4兆円」がどこから出たものかは不明だが、近いものとして文科省の「文教及び科学振興」のうち「文教関係費」の総額が4兆346億円となっている。
ただし、この文教費は「国立大学法人運営費交付金等(1兆807億円)」など、科研費と関係のない予算も合わせたものに過ぎない。
防大卒業生が大学院に行きたくとも東大など各大学は断る (2020年10月16日追記)
日本学術会議の任命見送り問題に関連して、ジャーナリストの櫻井よし子氏が「防衛大学の卒業生が大学院に行きたくとも、東大を始め各大学は『防衛省の人間など入れない』と断る」などと指摘した。だが、実際には、防衛大出身者や自衛隊出身者で大学院に進学した経歴を持つ人は複数確認できる。(楊井人文)