日本政府の立場からすれば蓮舫氏は二重国籍だったことはない

タイトルのとおり。蓮舫氏は、日本政府の立場からすれば二重国籍だったことはない。理屈は以下の記事で説明されている。

synodos.jp

ポイントを抜粋。

  1. 1985年まで日本の国籍法では父親が日本国籍でないと子が日本国籍にならなかった。
  2. 1972年の日中国交回復により、それ以降、日本において中華民国(台湾)は国として認めず、中華民国籍(台湾国籍)は中華人民共和国籍(中国国籍)扱いになった。
  3. 中国は多重国籍を認めておらず、国民が他国の国籍を取得した際に自動的に中国籍を失う。
  4. 1985年の国籍法改訂により、母が日本国籍の場合に子も日本国籍を取得できるようになった。

蓮舫氏の国籍変動年表は以下のとおり

蓮舫氏の国籍 イベント 備考
1967 台湾 蓮舫氏日本で誕生 父:台湾国籍、母:日本国籍 
1972 中国 日本政府が台湾国籍者を中国国籍者に取り扱い変更 日中国交回復
1985 日本 蓮舫氏、日本国籍取得 日本の国籍法改正。中国国籍の自動喪失

産経新聞が2017年に以下の記事を出している。産経新聞は日本政府と立場を異なり、台湾を国として承認していると考えられる。
www.sankei.com

民進党の蓮舫代表(49)が30年以上も国籍法に違反、台湾籍と日本国籍の「二重国籍」だったことがはっきりした。

蓮舫氏は18日、「二重国籍」問題で、昨年9月に台湾籍を離脱、翌10月に日本国籍の選択宣言をしたことを示す戸籍謄本の一部などを開示した。蓮舫氏は17歳の時に日本国籍を取得していた。国籍法は日本国籍を選択する場合、22歳までに選択宣言をする必要がある。

2024年になっても産経新聞は同じ主張をしている。
www.sankei.com

二重国籍の問題を指摘され続けてきた民進党の蓮舫代表が、日本国籍の選択宣言をしたことを証明するため、戸籍謄本の一部を公表した。

台湾籍離脱を示す台湾当局の「国籍喪失許可証書」と、離脱手続きの際に提出した台湾旅券のコピーも公開した。

台湾との二重国籍の解消について、一応の説明をした格好だが、25年以上も国籍法が定める義務を果たしていなかった。

日本政府が台湾国籍を認めず、中国国籍として取り扱っている事例が以下の記事で紹介されている。
www.nippon.com

では、日本国籍と中華民国国籍を両方所持していた場合はどうだろうか。そもそも、1972年に日本は中華民国と国交を断絶し、中華人民共和国を認めたため、現在に至るまで日本は「中華民国」を国家として承認していない。

個人的な話になるが、台湾人の父を持つ筆者は、日本の役所に提出された自分の「出生届」のコピーを見たことがある。その「出生届」に必要事項を記入したのは父だ。届け書には「生まれた子の父と母」の本籍(外国人の場合は国籍)を記載する欄があり、父は「台湾」と記入していた。ところが、十数年経ち書類を開示して見たところ、父が書いた「台湾」の二文字は、日本の役所によって赤で消され、「中国」に書き換えられていたのである。そうであるなら日本において筆者は、法的には「中国人」の父と日本人の母の間に生まれたことになる。この話からも分かるように、これはもはや当人の知らないところで起こっていることなのである。

上記の記事内で2017年に日本政府(法務省)が蓮舫氏を二重国籍者として扱わなかったということが記載されている。

蓮舫氏は日本国籍を選択したことを宣言するに当たり、中華民国の「国籍喪失許可証」を添付した外国国籍喪失届を日本の行政機関に提出した。しかし、日本の法務省はこれを「不受理」としたのである。台湾人にとって受け入れがたい話かも知れないが、それは日本が中華人民共和国を承認し、中華民国を国家として承認していないという立場からの判断である。そのため、蓮舫氏は日本国籍の選択を「宣言した」以上にできることはないのだ。

以上のことから、以下の記事で行われているような蓮舫氏の二重国籍に関する批判は不当なので、批判するなら別の事柄で批判した方がよい。

diamond.jp

蓮舫氏は、生まれたときは父と同じく台湾(中華民国)籍だったが、17歳のときに法律改正で母の日本国籍も取れることになったため取得。23歳になるまでに国籍選択をすべきなのに放置し、しかも、参議院選挙の立候補時には「日本に帰化」したと選挙公報に虚偽記載した。

そもそも、日本の国籍法が1985年まで母親の日本国籍を無視していたのが問題。1984年以前生まれ(2024年現在40歳以上)の父親が外国籍で母親が日本国籍の方は等しくこういう二重国籍問題が発生している。典型例は自民党の小野田 紀美参議院議員。ja.wikipediaの記載に従った小野田氏の国籍変動経緯は以下のとおり。

小野田氏の国籍 イベント 備考
1982 米国 小野田氏米国で誕生 父:米国国籍、母:日本国籍 
1983 米国 岡山で生活開始
? 日本、米国 1985年以降に日本国籍取得。 当人のFacebookによる25歳までには取得している様子
2004 日本、米国 小野田氏22歳。国籍法第14条で定める国籍選択の義務の期限 18歳成人になったため現在は22歳から20歳へ引き下げられた。
2015 日本、米国 日本国籍選択と米国籍放棄手続きを実施 米国は多重国籍を認めているため、自動的には国籍は失効しない。
2016 日本、米国 参議院議員になる 第24回参議院議員通常選挙
2017 日本 小野田氏米国籍放棄 蓮舫氏の二重国籍疑惑の余波で二重国籍であることに気づき手続き(参考

余談ながら、米国籍保有者は資産に課税されるので大変とのこと。
www.bloomberg.co.jp

いわゆる「偶発的米国人」と呼ばれる人々の間で、米国籍の放棄に向けた動きが広がっている。偶発的米国人とは、米国籍を持つ親から生まれた、もしくは米国で生まれたという理由で米国籍を持つものの、米国には住んでいない人のことだ。そうした人が国籍放棄を望む理由として、内国歳入庁(IRS)への保有資産報告義務がある。

脱税防止を目的に2010年に成立した外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)は、米国外に住む米国籍保持者にとって頭の痛い法律だ。同法では、米国外在住の米国人が資産を預ける外国金融機関に対し、その資産をIRSに報告するよう義務付けている。そうした状況を背景に、金融機関によってはコンプライアンス違反となった場合の手数料支払いを回避するため、米国籍を持つ人に対する口座開設やサービスを拒むケースもある。

米国籍を放棄する場合には2350ドル(約35万5000円)の申請料が必要になり、放棄を望む偶発的米国人はこの申請料の高さに不満を抱いている。ただ、この申請料を巡り訴訟が提起されたことを受け、国務省は年内に450ドルに引き下げることを提案している。

米国は出生地主義なので、両親とも日本国籍でも子供が米国籍を持つ場合もある。こちらの方はその例。
tsunapon.hatenablog.com