東日本大震災により被害を受けた博物館・美術館、図書館、文書館、公民館の復旧を間接支援により手伝うことで被災地の復興を支援しているボランティア活動saveMLAKの2012年活動の報告会を聴きに行ってきた。参加の理由は、 Wikipedia Conference 2013の懇親会で伺ったsaveMLAK活動の話が面白そうだったため。
- saveMLAK報告会2013 〜社会教育・文化施設の救援・復興支援〜
- Ustream:saveMLAK報告会2013横浜会場
- Ustream:saveMLAK報告会2013京都会場
- Togetter:#saveMLAK 報告会2013「社会教育・文化施設の救援・復興支援」
正直な感想を言うと、思ったよりも内輪向け(saveMLAKの活動を知っているという前提向け)の報告会だったなと思った。
基調講演:鎌倉幸子氏 :「走れ東北!移動図書館プロジェクト」
大変勉強になり、かつ、感動的な講演だった。公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会(SVA)が実施している走れ東北!移動図書館プロジェクトの報告。仮設住宅を回る移動図書館を企画し、2011年の7月から実行されている件についてお話いただいた。
今回のお話でまず衝撃をうけたのは「 シャンティ国際ボランティア会の緊急支援における10か条」だった。以下、スライドから転載。
- 鍵を握るのはボランティア・コーディネートである
- 救援物資を第2の災害にしてはならない
- 被災者とボランティアには心の溝がある
- 地域制を理解して行動する
- ボランティア(救援者側)にも心のケアは必要である
- 地元の人々や団体と連携する
- 活動を始める際には、撤退の時期を念頭に置く
- 行政だけに頼らず、市民相互の協力の輪を
- 想像力を働かせて行動する
- 救援活動は自らの実情に即した方法で
さすがは緊急支援の経験を積んでいる組織であると思った。特に2番「救援物資を第2の災害にしてはならない」と7番「活動を始める際には、撤退の時期を念頭に置く」は緊急支援の性質を良く考え抜いていると思う条項だと思った。
また、講演の中で震災前から緊急支援を行うNPO同士で連絡をとっており、緊急支援の経験がある組織はアクセスの関係で支援を受けられなさそうな仙台以北を目指して支援に入ることが決められていたというのは、さすがは緊急支援の経験を積んでいる組織であるとまたまた思わされた。
移動図書館開始までの時間的経緯は以下のとおりだったとのこと。
- 3/15:現地入り(炊き出し、生活物資配布開始)
- 4/26:緊急支援フェーズの次の段階を検討するための執行部会議
- 5/02:岩手県でのニーズ調査開始
- 5/23:事務所確保&人員探し
- 6/06:事務所開設(ただし、この時点では被災者の方々は避難所にいたとのこと)
- 7/17:移動図書館開始(被災者の方が仮設住宅に移動されたので)
そのときそのときで必要とされる支援が異なるので、適宜現地でのニーズ調査をして、支援活動をしている。シャンティ国際ボランティア会は海外にて図書館を設置する活動を行っているので図書館関連の支援が得意ではあるけれども、それを避難所にいるときに始めても受け入れてもらえなかっただろうと説明されていた。
本に関しては移動図書館という形式をとった理由は、当初は本を被災者の方々に寄贈するという案もあったが、それに対してお子さんを持つ親御さんたちから反対意見がでたとのこと。曰く、子供が支援慣れしてしまうのが怖いとのこと。いつかは日常に戻るので物をもらえるのを当たり前と感じてほしくないとのこと。また、避難所では本を置くスペースの問題もあるというのも本の寄贈に反対する理由だったらしい。
で、岩手県の図書館担当者の方々に相談しつつ、移動図書館を実施すると決めたとのこと。そのとき、言われたこと・懸念されたことがあったとのこと。
- 図書館には現地の書店を守るという役割もある
- 移動図書館をやるというのは市民との「約束」なので半端な覚悟でやってもらっては困る(何月何日何時に行くといったら必ず行かないといけない)
シャンティ国際ボランティア会は支援活動の重要な点として、現地で入手できるものは現地で入手するというものを掲げているので、書店が営業を再開したあと移動図書館の蔵書は現地の書店から入手しているとのこと。
本を読むという文化の力についていろいろと感動的な事例をご紹介いただいた。電気を使わず、もち運び可能で、かつ、かなりの時間を楽しむことができるという性質を持つ本は、確かに優秀なメディアだと思う。また、本のジャンルによっては数十分〜数時間だけでも別の世界に精神を旅立たせることができるというのも重要な点だと思う。映画やゲームも同じように数十分〜数時間だけでも別の世界を提供するが、いかんせん楽しむために必要な条件が厳しい。
講演の中で、紹介されていた以下の本の一節にまつわる話が読書のもう一つの力を感じさせてくれた。
神よ、願わくば私に 変えることのできない物事を 受け入れる落ち着きと 変えることのできる物事を 変える勇気と その違いを常に見分ける知恵を 授け給え
(カート・ヴォネガット・ジュニア:スローターハウス5より)
また、震災から1年後の2012年には、これまで読まれなかった3・11について記述した本を読む人がでてくるようになったとのこと。
とりとめもないけど、基調講演のメモは以上。
saveMLAK 2012年度活動報告
2012年度の活動報告として、全体について、K:公民館について、M:博物館について、L:図書館について、A:文書館についての報告が10分ずつあった。
以下、メモ
全体
- SlideShare:saveMLAK報告会2013 「社会教育・文化施設の救援・復興支援」
- saveMLAKは、間接支援を行う集まり。間接支援とは直接支援を行う人の手助けを通して被災地・被災者の方の支援をすること
- 支援活動の内容としては
- いろいろと課題があるが「急がず、しかし休まずに」続ける
- ボランティア活動に参謀はいらない(これはフロアディスカッションのときの発言だったけれども同じような主旨の発言をしていたのでここで記述)
公民館
- SlideShare:saveMLAKとK(公民館)の2年間
- 公民館などの担当職員も被災時には被災者支援に駆り出されるので、公民館の被災状況や復旧活動の業務に移れるのは緊急時対応が終わってからになる
- よって、公民館などの被災状況を報告する人もいないし、報告を受け取る人もいない
自分があまり使っていなかったので地域における公民館の位置づけが良くわかっていない。なので、復旧の重要性もあんまりピンとこない。
博物館
- saveMLAK活動開始のあたりでインターネットミュージアムからデータ提供をもらったのでいきなり5000件ぐらいのデータを用意できた。
- 博物館はよほどひどくない限りは被害状況を表にださない傾向にあった
- それよりも、復旧し、開館したときの情報を広げることの方が重要
- 東日本大震災 ミュージアムにおける震災情報──「saveMLAK」の設立にあたって
図書館
- SlideShare:saveMLAK2013報告 ―図書館分野での活動―
- いろいろとアウトリーチされているようだった
文書館
基調講演 松崎太亮氏「震災復興、図書館に何ができるか? -阪神・淡路大震災を越えて-」
京都会場からのUstream中継でスライドが表示されなかったのであまり理解できなかったが、ポイントは10年後、20年後の「震災の記憶」は、そのとき残っている資料や記録と同じになってしまうので残しておかなければならないという点。この点を阪神・淡路大震災のときの例とその後の記憶の風化、記録の散逸を提示しつつ説明していただいた。以下、メモ。
- 阪神・淡路大震災のときにとにかく撮りまくった写真がその後の震災教育や説明などで使われている。だから、記録は集めて使えるようにしておかなければならない
- 被災から時がたつと、被災者も被災地から離れて、そのときの記憶を伝える人がいなくなる。そのときに、記録が記憶の代わりになる
- 記録も時とともに散逸する(いろいろな目的の資料として貸し出されて、それが帰ってこない)
- 記録が散逸し、何が記録されていたのかを知る人がいなくなると、その資料の価値がわかる人がいなくなり、捨てられる(next49注:捨てる人に悪意はない)
- 記録を残すために図書館が中心的な役割を果たせるのではないか
- 震災を知らない人が多くなり、非日常から日常へ移ると、次の災害で人やモノを守るために行っている保険的なもの(冗長なもの)を「意味ない」とみなして削減しようとしてしまう。それをどう防ぐか。
- 今回の大震災では、一般の人々が携帯電話などでたくさんの記録をとっている。それをどう集めて、後世の減災に役立てるのかは課題
その他
- 一番記憶に残ったし、「ああ、私は口だけだな」と思わされたのは「ボランティアに参謀はいらない」という岡本さんのぶっちゃけトーク。最近、いろんな集まりに参加させてもらっているけど、私は口だけだものなと反省した。
- 大船渡津波伝承館の活動。
おわりに
いろいろと学ぶことができて有意義な会だった。以上、雑多なメモながらイベント参加記終わり。