「アールト大学の誕生(フィンランド)」と「フィンランドの大学改革」

熟議:国立大学法人の課題やその改善方策は?:「国立大学」の法人化とは何だったのかのツリーでSuomi7さんがご提示くださった記事「アールト大学の誕生(フィンランド)」と「フィンランドの大学改革」がとっても興味深い。下記のPDFファイルで読める。

今、そのフィンランドに「アールト大学 (Aalto University / Aalto-yliopisto <フィンランド語>)」という名の大学が生まれようとしている。注1) この新生真近い大学はフィンランドの大学革新の一つの具現であるが、同時進行している同国内の他の大学革新スキームの中では際立って特徴的である。というのは、今までに各々の分野で同国の (あるいは世界的に) 指導的役割をはたしてきた名門3大学が融合して、新規な「価値 (value)」を求め且つ創生する大学として新生しようとしているからである。

これら3大学とは、同国最古の工科大学であるヘルシンキ工科大学 (Helsinki University of Technology / Teknillinen korkeakoulu: TKK <1849年開校; 1908年大学>)、「工業デザイン学」で世界屈指のヘルシンキ芸術デザイン大学 (University of Art and Design Helsinki / Taideteollinen korkeakoulu: TaiK <1871年開校; 1973年大学 >) および同国トップのビジネススクールであるヘルシンキ商科大学 (Helsinki School of Economics / Helsingin Kauppakoekeakoulu: HSE <1904年開校; 1911年大学>)である。現在の学生数はそれぞれ約15,000人 (TKK), 2,000人(TaiK), 4,000人 (HSE) であるので、アールト大学は2万人を越す学生が学ぶアカデミアとなる。

〜中略〜

新生大学にとって重要な「『新型』の予算」の歳入は、(a) 国の寄与5億ユーロおよび民間寄付金2億ユーロの計7億ユーロからなる基金の運用益と、(b) いままで通りの国からの運営交付金プラス競争的研究費 (推定4億ユーロ/年) との二本立てになる。歳入 (a) のための基金の民間寄付金が目的額を越えだんだん大きくなってゆくことが期待されている。歳入 (b) は本年度の額より、最初の5年間は、毎年増えてゆき、その後5年間は、同じ額が交付されるが、10年目からはそれまでの増加分がなくなり本年度の水準にもどる。目標 (2) が達成できていれば、歳入 (a) が増加しているはずと考えるのであろう。職制も大きく変わり、アールト大学には4トラックが施行され、うち3つがアカデミックトラックである。伝統的な教授・上級助手 (講師同等で研究と教育を行うがこう呼ばれていた) ・講師 (実質的に教育に特化していた) および外部からの非常勤講師 (docent) という構成から、(i) 研究に重きをおいた教授3職位、(ii) 教育に重きをおいた教育教授3職位、(iii) 特殊性の高い分野で外部から招請する実践教授3職位の制定により、大変広いアールト大学の全分野をカヴァーするとともに、世界的に理解されやすいものにしようとしている。どのトラックどの職位の教授も研究と教育の双方をこなす能力と責任感が要求されていることは言うまでもない。

〜後略〜
(「アールト大学の誕生(フィンランド)」より)

上記のレポートの参考文献にあがっていたブログ。

2009 年6月16日、フィンランドにおいて新しい大学法案が国会で可決された。同法は、大学がより一層、運営・経営面での自律性を確保できるよう、大学改革を実現するために改訂されたものである。改革の中で特筆すべき点は、国立大学の法人化である。大学法の定めに基づく公的な法人への全面的な移行とともに、同法には新たに財団運営の大学という規定が設けられ、既存の国立大学から私法に基づく財団による運営への移行が可能となることである。これを受けて、現在、フィンランド内にある3つの国立大学、ヘルシンキ工科大学, ヘルシンキ商科大学、ヘルシンキ芸術デザイン大学は2010年1月に統合し、私法の定めに基づき財団により運営されるアアルト大学に改編される。この他、同法では、財団運営化ではないが、トゥルク大学とトゥルク経済大学の統合、ヨーエンスー大学とクオピオ大学の統合を定めている。フィンランド教育省は、今後、必要な大学統合を進め、現在の20大学及び26ポリテクニクス(専門大学)を2012年までに16大学、ポリテクニクスを18程度に統合するとしている。フィンランド教育省では、大学統合に際して、数カ年にわたる追加的な財政支援を実施している。
〜後略〜
(「フィンランドの大学改革」)