免責無しで自分の悪事をばらす奴なんていませんよ。

あと一月で科学研究費補助金の申請シーズン。大学教員になる前は、研究にこんなお金がかかるなんて知らなかったよ。研究室を維持して(学生や自分に本や消耗品を買って)、2回ぐらい国際会議に参加して(旅費抜きで参加だけで10万ぐらいかかるよ)、学術雑誌の別刷り代を支援して(一回20万くらい?学生ががんばってくれるほど赤字に)で100万円がすぐに飛んでいく。怖い。

で、研究費の不正流用があるので文部科学省経由で研究費の不正使用に関する調査依頼が大学に来ているみたいなのだけど、その調査方法がとほほ。「各大学ごとに最善と思う方法で調査してください」って。

普通の大学は捜査組織を持っていないよ、どうやって調査すんの?大学内に一人はマープル女史や市原悦子さんやコナンくんがいれば、いろいろとわかるんだろうけど、そんなんいないって。せいぜい、5分で終わる会議を3時間引き延ばす180分教授がいるくらい。やばい、33分探偵とトレードしたい。あと、内部告発者が大学に告発できるわけないじゃない。普通は、専門窓口で告発者の匿名性を守った上で告発させるでしょ。大学ごとに調査を依頼してどうするの。内部告発者の身元がすぐにわかっちゃう。そしたら、怖くていえないでしょうに。しまいにゃ、うちの大学は各教職員に聞き取り調査してるんだけど、これまでの不正流用に対する免責がないのに自分から不正使用しましたなんていう奴が存在するの?

これって、まさしく「文部科学省や大学は研究費の不正使用を許さないという断固たる態度をとっています」というポーズそのものではないの?研究費の不正使用なんてしないけど、こんな調査方法とっているなんてなんかすごいがっかりする。調査をやらせるほうも、やるほうもこんなことに時間使うなんて嫌じゃないですか?

まずは、内部告発者が不利益を受けないように内部告発できるホットラインを文部科学省(あるいは学術振興会)に用意しましょうよ。もちろん、私怨や嫌がらせの告発も大量に来ると思うけど、それは想定内だからしょうがないじゃないですか。こういうのに予算つけましょう。海外旅行のときに入る保険と一緒ですって(ちなみに、うちでは海外出張時の保険料は自腹)。め組の大吾のおばあちゃんが行っていたけど「何もないのが一番いいんだ。」保険料が無駄になったときが基本的にはめでたいことなんだって。

あとは、不正使用を自主申告したらある程度免責になる仕組みを用意しましょうよ。人はインセンティブのために動くのが普通なのだから、自分が責任追及され、職を失うのに自分の悪事をばらす人なんていないでしょ。悪いことした奴が責任追及されることなく生きていくというのに腹は立つけど、本当のとんでもない不正を許さないという観点からいえば、必要悪でしょ。

改革をするときの鉄則は、「座布団の裏をめくらずに座布団ごと退場していただく。」こと。不正使用するような人間には退場してもらうことが第一で、血祭りにあげることは第二でしょ。

眠いのにあまりにもあんまりなのでおもわずエントリーにしてしまった。

最後に、文部科学省のみなさま、大学の上層部のみなさま、みなさまががんばってくださっていることは重々承知しております。私は、みなさまのがんばりに敬意を表します。ですが、もう少しポーズではなく実効的なことをいたそうじゃありませんか。ちゃんとやると労力がかかり、コストがかかり、かつ、マスコミ受けが悪いのはわかりますが、日本の人口の半分以上はもう結構よい年なんですからそこらへんは理解してくれますよ。

追記(2008/9/9)

一人や二人の薬物中毒を暴くことで、失ったものは結構大きいと思うのだ。が、世間ではそうした見方が全く見られないようでもある。

おっしゃるとおり。