次のパンデミックでも感染者情報の収集に失敗する見通し

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xtech.nikkei.com

実は、厚労省は研究予算を投じてパンデミック(世界的大流行)を想定した別のシステムも約10年前から開発させていた。「症例情報迅速集積システム(FFHS)」と呼び、集める情報を必要最小限に絞り込んだものだ。2014年度には一通りの機能を完成させ、何度も演習を実施していた。だが厚労省はFFHSを採用せず、緊急事態の中でHER-SYSを急造する。新型コロナ禍が広がりつつあった2020年2月、FFHSを新型コロナ対応に改修する指示を出していたにもかかわらずである。新型コロナ対策のIT化を指揮した厚労省の副大臣らにはFFHSの存在が伝わっていなかったことも明らかとなった。

上の記事のはてなブックマークでしょうかいされていたNHK News Webの記事
www3.nhk.or.jp

国の研究班は新型インフルエンザなど過去の感染症の教訓を踏まえ、新型コロナが国内で感染拡大する7年前の2013年からHERーSYSとは別のシステムの開発を進めていました。それが「症例情報迅速集積システム=FFHS」です。

開発の基本的な考え方は現場の負担を最小限にしながら、必要な情報を正確かつ効率的に集めるというものです。

例えば従来の方法では感染者が出た場合、保健所は医療機関からファックスで感染の発生届を受け、パソコンに入力しなければなりませんでしたが、このシステムではファックスの手書きの文字をOCRと呼ばれる技術で読み取りデータとして自動で登録できます。

また、HER-SYSでは感染者についておよそ120の項目の入力を求めていましたが、このシステムではどの情報が必要かについて自治体などと議論を重ね、患者の年齢、性別や発症日、症状など最小限の18項目に絞っています。

こうした情報は各自治体がリアルタイムで閲覧でき、情報共有に必要な業務の負担を減らすことが期待されていたということです。

さらに研究班では、2013年からこのシステムを実際に運用してパンデミックの発生を想定した演習を、毎年、複数の自治体と行ってきたということです。研究班によりますと新型コロナの感染拡大が始まったおととし2月、システムを新型コロナ向けに改修するよう、厚生労働省からメールで指示を受けたということですが、それ以降、連絡はなく、システムが導入されることはありませんでした。

厚生労働省の元技官で、研究班でシステムの開発を担当した北見工業大学の奥村貴史教授は「過去の教訓にもとづき、現場で起きる課題の解決を念頭に準備してきたので、もし導入されていれば、現場の負担軽減などが実現し、国内最初の感染者からパンデミックの最後に至るまで、患者の情報を全国で効率的に集約することができていたと思う。今回、過去の教訓を生かすことができなかったのは、経験などを継承する力が組織として失われていることが原因の1つではないか」と指摘しています。

厚生労働省 研究班のシステムを把握せず
HER-SYSの導入に関わった厚生労働省の複数の幹部は、NHKの取材に対し研究班のシステムについて「報告を受けていないので把握していなかった」と話しています。

そのうえで、研究を所管していた厚生労働省結核感染症課は「HER-SYSの担当部署に研究班のシステムを共有したかどうかは、未曽有のコロナ対応に追われ記録を残していないため、明確に説明できない。ただ、研究班のシステムは全国で問題なく運用できると確認できなければ、そのまま導入することは難しかったのではないか」と話しています。

記録残さないだから、次回のパンデミックも同じ失敗するよね。