何を業績とカウントするのかというのは、博士号持った人でも他の分野について全然知らないということは普通にあり得るので、ある分野における業績の考え方について分野外の人が知らないのは当然のこととみなさないといけない。現役のみなさま、特に一定以上のポストについて方々は情報発信していくべき事柄だと思う。
たとえば、情報系の例(なお、2018年現在だと機械学習や深層学習は状況が変わっている)。
情報科学における一流国際会議とは、世界的に質の高い投稿論文を集め、それらを3名程度の一流研究者によってジャーナル論文並みに厳格に査読し、とりわけ高品質の論文を厳選して採択する会議を指すことがほとんどである。しかし、情報科学以外で活躍する研究者と話をしていて、情報科学の一流国際会議に漸く採択された話をすると、決まって怪訝な顔をされる。情報科学以外のほとんどの分野では、NatureやScienceに代表される一流ジャーナルに論文を掲載することが大事であって、国際会議はろくな査読もなしに1〜数ページの論文を半ばフリーパスで掲載する一種のお祭りだからである。むしろ、あまり多数の国際会議に発表していると、海外出張ばかりして遊んでいると思われ、かえって、マイナスイメージをもたれてしまうことすらある。元から情報科学で経験を積んだ研究者の場合は別として、他分野の研究者が新たに情報科学研究を志す場合、一流国際会議の発表が下手なジャーナルよりずっと重視され、なおかつその採択率が25%以下、ときには10%以下であるということを知ると戸惑うことが多い。しかも、ジャーナル査読のような反論機会が与えられず、採択されようがされまいが、査読者たちの辛辣な批判に満ちた査読結果が戻ってくるというカルチャーショックを味わうことになる。このような情報科学の独自な研究評価体制は、それ以外の分野の体制とのミスマッチにより、互いの研究実績の正当な評価を困難にし、情報科学内外の研究者の交流や両者を跨ぐ研究の実施にとって、一種の障壁とすらなっている。
(鷲尾 隆 : 一流国際会議発表のための研究戦略とは?(<特集>国際会議に通すための英語論文執筆), 人工知能学会誌, 23巻3号, pp. 362 - 366, 2008年 より)
2010年当時の他分野の会議や雑誌の情報のリンク
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ここ数日のキズナアイがらみで始まった「業績についての議論」への反応。
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