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分野の違いによる文献調査作法が違うのは面白い

CiNiiとは国立情報学研究所の論文情報ナビゲータであり、キーワード検索をする機能がついている。

しかし、このキーワード検索が飽きれるほど使えない。少なくとも社会科学系に関しては、適当なキーワードを入力しても名前も聞いたことのない雑誌や、よくわからない大学の紀要が大量に出てくる。一応、「被引用件数降順」で表示するという機能があるものの、これも適切な重みづけがなされていないようで、使えそうな論文が上に出てきたためしがほとんどない。

CiNiiは、ある研究者の他の論文を検索したり、無料でpdfが公開されているジャーナル(例えば『教育社会学研究』)を見たりするのには役に立つが、キーワード検索には適していない。キーワードで探すなら、Google Scholarの方がはるかにましだ。

CiNiiに格納されている書誌データをGoogleに提供しだしたのがおととしぐらい?日本語の論文についてGoogle Scholarで検索すると、その論文のあり場所はCiNiiであることが多い。ためしにCiNiiのキーワード検索で「子育て支援」と入れたときの検索結果とGoogle Scholarで「子育て支援」と入れてみたときの検索結果を眺めてみたけど、確かに違う。でも、Google Sholarの検索結果の5ページ目までCiNiiに格納されている論文データしかでてこない。

これは一つにCiNiiの検索結果が出版年、論文名、刊行物名、被引用文献数で並び替えされて出てくるためだと思う。Google ScholarGoogleお得意の重み付け(今ではかなり遠くまで行っていると思うけど、基本はページランク。参照度が高いサイトからリンクされているサイトは重要)の結果だと思う。

引用元のエントリーのようにフリーワード検索ならGoogle Scholarを、既に存在が分かっている論文ならCiNiiで直接調べたら良いのではないだろうか?

で、この後段が面白い。

そもそも学部生のレポートで、インターネット上からキーワードで論文を探そうというのが最初にやるべきことではない。自分が調べたい分野のリーディングスに目を通し、そこから芋づる式で文献を探すか、あるいは図書館・大きめの書店の該当する棚に行って適当な本を探し、そこからまた芋づる式でいくつか探すといったことでだいたいは十分だと思う。

学部生のレポートだからかもしれないけど基本は紙媒体の書籍とその参考文献であるというのが興味深い。元エントリーは社会科学系ということだけど、社会科学系はまだネット上には良質の情報源が存在していないということ。

英語の自然科学・医療・工学系は、論文情報データベース(PubMedやWeb of Science)が提供され、むしろ紙ベースの本はどんどん使われなくなっている。みんな図書館に行かず、パソコンで文献を探すのが標準的行動になりつつある。なので、逆に「誰だ文献を図書館から探し始めろと言ったヤツは?」ということになる。

ちょうどいくつか前のエントリーで「研究者の技能として学ぶことは、技術者にも役に立つ」という主張をしたばかりだけど、さっそく、文献調査法という共通技能において分野ごとに作法が違うという事例にぶち当たってしまうという悲しい話。まあ、ちょっとメタな視点に立てば、「自分の興味ある領域において良質の情報源は何で提供されているのかを調べてから、その媒体で効率よく探す方法を見つけなさい。」ということになるわけで、同じだけど。

社会科学に興味はあるけどそちらの研究自体はうまくない、でも、プログラミング得意という人。あるいは、計算機科学系 or 図書館情報系で社会科学に興味があるという人は、ここいらへんの日本語文献横断検索システムを提供したら、お金儲けはムリでも名誉と論文のタネは得られるのではなかろうか。CiNii国立国会図書館API公開しているし。

商売や研究のタネにするなら、本質は「非英語の専門書・論文情報を言語の違い、分野の違いにかまわず統一的に管理し、検索サービスを提供できるか?」になる。日本は非英語圏でかつ漢字、かな、カナ、アルファベットが入り混じる書誌を持っており、翻訳文化も盛んなのだから、書誌情報の複雑さでは非英語圏ではかなりの難度にあるのではないだろうか。とりあえず、日本国内の日本語専門書の分野横断的書誌データベース(クラウド型で、データベースの管理は各分野の人たち、フレームワークの維持はサービス提供型)を作って、次に中国の少数民族の文献、中央アジアの文献あたりまでカバーできれば、ほとんどの非英語圏の書誌情報扱えるんじゃなかろうか?

文化的ODAとして、非英語圏書誌情報データベースのデーターセンターは日本が提供&管理とかにしておけば、アジアのそんな裕福でない国々のインテリ層に感謝されるんじゃないのかな。ついでに、こういうのは欧米諸国のアジア文化の研究者からも求められていると思う。

情報系の文献の探し方はこちらへん

追記

はてなブックマークでさまざまな分野での文献調査法が紹介されているので転載。

  • naya2chan 論文, 研究, 資料 ブコメが素敵。色々な分野の人の探し方がわかって面白く、参考になる。
  • yu-kubo 科学, リテラシー 研究の現場を離れて10年以上。PubMedってなんだ?と思ったら、私も当時使ってたMedlineのネット検索サービスなのね。なーんだ。
  • T-3don 教育 わたすが現役の頃はGoogleなんてなかったっす/だからえーと、まず国史大事典で関連項目を見てー、別に関係する人名を洗い出して人名辞典で確認してー、で、関連資料がどこにあるかを探して閲覧、と。因みに歴史。
  • xiaodong CiNii, search, literacy 「自分の興味ある領域において良質の情報源は何で提供されているのかを調べてから、その媒体で効率よく探す方法を見つけなさい。」
  • funa07 研究 私の分野では、専門知識として必要なものはあまり本になってない印象。ましてや日本語の書籍なんて…。
  • tt_clown 情報系だと「最新の文献(2010年だったら2009年)を一件も引用してないなんて・・・pgr」とか言われたりする.
  • Mukke 研究 史学系だと,CiNiiから本文が読めないことが結構多いんだよなぁ。だからむしろ「自分が見落としている論文探し」的な感じになる。個々の大学の紀要まではW大図書館といえどもカヴァーしきれないし。まだまだ歴史は紙。
  • karpa 図書館にアップ・トゥ・デートな本がかならずあるわけでもないので,インターネットでの検索はすすめて悪くないとは思ってゐる / といふか両方できるにこしたことはない
  • achakeym 最後の方ですごい構想を言ってる/Scholorは最初はいいんだけど/検索は基本的にSciFinderとWebOfKnowledgeに頼り切り.arXiv参照する場合もある.
  • poccopen 研究, 本題じゃないですが→ 酵母屋は楽しててすいません。SGD(Saccharomyces Genome Database)というところで論文のmanual curation(毎週更新)がされてるので、例えば、どの遺伝子がどの論文内で言及されたか(逆引きもOK)簡単に検索できちゃうんですー。
  • blackshadow 400 science, 611 データベース Googleの便利な点はあいまい検索が可能な部分。初めて触れる分野の検索にはかなり使える。ciniiも共起表現や類似キーワードで再検索ができたら便利になるかもね。
  • kitone CiNii APIコンテストで優秀賞を取ったInteroperable Database For Buddhist Studiesを思い出した
  • semi_colon 大学, 教育 PubMedでも味噌と糞が一緒に検索結果として出てくるので初学者にとっては書籍の方が良い場合があるね
  • nminoru 「非英語圏の分野横断的書誌データベールを作る」というのは面白いが、日本の学会の感度の悪さを考えるとムズカシイと思う。例えばIPSJがWebで論文検索ができるようになったのは21世紀なんだよなぁ。