MOOCs: massive open online courses に関するCACMの記事2本

今月号のACMの学会誌 Communications of ACM (CACM)の表紙がインパクト大だったので、ぱらぱら中見を眺めたところ興味深い記事があった。まずはその前に表紙のインパクトをご堪能ください。

閑話休題。p. 5にeditor's letterというコラムがありそこのタイトルが "Will MOOCs Destroy Academia?" という見過ごせないものなので読んでみた。

MOOCsとはmassive open online courses の略。The Shigeta Way:MOOC(Massive Open Online Courses)の盛り上がりと、見えてきた課題での訳は「大規模公開オンラインコース」。

インターネット上で学習コースを無料で公開し、受講したい人は誰でも自由に受けることができる取り組みです。

主な特徴として以下5つが挙げられます。

  1. コース提供者は、学習コースやビデオ講義や配布資料などの教材を、全て無償で提供する
  2. 学習者は自主的にコースを受講する
  3. 学習者は同じコースを受ける人たちのコミュニティに参加し、互いに教え学び合う
  4. 学習者は用意されたテストやエッセイを提出したり、学んだ内容をブログ等で発信する
  5. コースを終えた学習者には、コース完了を証明する「バッジ」(認定証)がコース提供者から与えられる(バッジは有償の場合あり)

The Shigeta Way:MOOC(Massive Open Online Courses)の盛り上がりと、見えてきた課題より)

News Week:ネット大学「有料化」が苦学生を救うでも述べられているとおり、アメリカの大学の授業料の高騰は社会問題になっている。

コーセラの共同創設者の1人であるスタンフォード大学のダフニー・コラー教授は、声明で次のように語っている。「近年、大学の学費高騰は学生たちに壊滅的な打撃を与えている。多くの学生が学費の捻出に苦しみ、学位取得を断念するケースも少なくない。わが社は大学の単位に認定される可能性がある最高レベルの授業を提供することにより、一定の単位を保有した状態で大学に入学し、予定通りの時期に予定通りの学費で、学位を取得できる学生を増やしたい」

Will MOOCs Destroy Academia?のコラムの主題は以下のとおり。

  • MOOCsは大学で行われる教育のすべてを代替するものではなく、大人数向けの講義(教授がずっと説明する形式)の代替手段である
  • MOOCsは教育コスト削減という目的にぴったりなので、MOOCsが大学(教育機関?)の代替となってしまい、(高等)教育が崩壊してしまうのではないか

MOOCsに対して批判的なコラムなので、コメント欄ではMOOCsの可能性を信じる人たちから批判的コメントが寄せられている。Open Course(授業および授業教材の公開。そもそもWebベースでの教育を目的とはしていない)という話は知っていたけど、それがさらに進んでMOOCs(Webベースでの教育が目的)になっているというのは知らなかった。なので、上でリンクしたニューズウィークの記事もOpen Courseの話かと思っていた。

そのコメント欄で紹介されていた別のMOOCsに関する記事も面白かった。

この記事では何が述べられているかというと、Stanford大学で提供されたMOOC向けAIの授業を、Massachusetts Lowell大学の計算機科学科の准教授が自分の受け持ち授業の学生16人に受講させたという話。"the flipped classroom"という形式らしい。

Stanford大学のAIの講義は1コマ45分。週2〜3コマで10週講義をする。ちなみに日本の大学の標準講義は1コマ90分、週1回で15週講義。で、Massachusetts Lowell大学の先生は、上記のオンライン講義を受けさせたのとは別に週に1度75分の授業をおこなったとのこと。授業の内容は、学生がオンライン講義でわからなかった点や賛同できない点についての議論・話し合い。

AIの講義は、160,000人ぐらい登録して、約23,000人が10週完走したとのこと。で、この先生および16人の学生も完走したとのこと。学力の低い学生(weaker students)は苦戦し、少ないながら優秀な学生(strong student)は、退屈してしまったとのこと。なので、この先生はMOOC formatを広範囲に適用するさいには工夫が必要であると感じたとのこと。

記事の中盤および結論部後半は、MOOCsに対して、既存の大学(対面授業ができる大学)はどういう優位性を持つのか/持つべきかについて述べられている。まあ、大学の先生ならばそう考えると思う(私もそう考える)。

The MOOC concept does not even attempt to address the role of a small, research-oriented project-based course. When we individually mentor each student on his or her own ideas, we are doing something that can never be performed by an autograder.

As we know, the modern university is a much larger ecosystem than its collection of courses. Among many other things, students derive great value from being in close contact with their peers, participating in leadership opportunities across campus, and being part of our research labs. It may well be that this new breed of MOOC is a decent replacement for an average, large-sized lecture course. But this is a low bar.

一方、中盤のActive learningの話が本論とどういう関係があるのかわからなかった。でも、Active learningを行う際の注意事項が興味深かった。

  • 問題解決として取り組む良い題材を用意すること
  • 学生が積極的に取り組むことに同意すること
  • 教員は注意深くかつよく作られた授業資料を諦めること(計画どおりに進まないという意味?)
  • 学生からの低い授業評価に対して、教員は防御すること

最初の3つはすぐわかるけど4つ目が面白い。調査によると、学生がActive learningによって従来の授業よりもより学ぶことができたとしても、Active learningの授業を低く評価する傾向があるというのがわかったらしい。

Also, teachers need to be protected from low student evaluation scores. Mazur and others have reported that students give lower evaluations in courses with active learning―even when the evidence shows they have learned more.1,3 Students have grown up with conventional lecture teaching, and just like anyone else, they are resistant to change.

確かにActive learningのような答えが見えない授業は、終わりも見えないため基本難しいし、より多くの時間を必要とする。つまり、学生への負担が大きい。単位を取るという目的からすれば非効率な授業なので、評価が低くなるのはわかる気がする。


まとまりないけど、記事を読んでおもったことをメモ。