少人数学級が学力向上に寄与するかの話

追記:「経済学が〜」と思われた方はぜひリンクしてある「文部科学省:2011年7月:公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第3回) 議事録」の前半部を読まれることをお勧めします。参考人として呼ばれた方々もこれは測定自体が難しい話ですと言っています。

NHKニュース:“教職員定数 5年で1万人削減”案のはてなブックマークコメント

  • いや、財務省はあながちウソ言ってない。少人数学級化だと、上位学力層の競争が緩み、上位学力層が劣化する副作用がある(クラスサイズパズルと言う)。経済学者が立証してるが教育学者は認めたがらない

を読み、Googleでクラスサイズパズルを検索したら以下の議事録が見つかった。簡単な話ではないらしい。

少人数学級というのは、当然ながら、釈迦に説法ですが、一人一人にきめ細かく教育ができるという意味で学力とかさまざまな効果が、よい効果が期待されるという、それをクラスサイズ効果なんというようなことで呼んでおりますけれども、いざそのデータを持ってきて分析すると、どうも必ずしもクラスサイズ効果という、少人数学級、学級の規模を小さく、 1クラス当たりの人数を少なくするとよりよい効果が出るということばかりが観察されるわけではないという、クラスサイズパズルと呼ばれている現象というのが起こっているというのが今の経済学の分野でも一つの論争の種となっております。

経済学的手法と言いますと耳なれないかもしれませんので、まず簡単に、それがどういう概念に基づいて行われているのかを説明し、学級規模縮小の教育効果について分析した既存の研究を紹介いたします。教育政策の分析においては、政策評価の難しさがかなり集約されておりますので、教育政策の効果の推計を意味あるものにするためには、どういう点をクリアにしなければならないのか、という点も強調したいと思います。最後に、最近日本経済学会で発表しましたオリジナルの研究、すなわち、横浜市のデータを利用して学級規模縮小の教育効果を分析しました結果を紹介したいと思います。

結果を先取りいたしますと、小学校の国語のテストの点は、学級規模を縮小したほうが向上するように見えます。しかし算数ではそれが統計的に有意には見られません。中学校に関しては、どちらの科目でも統計的に有意な効果は見られなかったという結論でございます。

混雑緩和効果があるにも関わらず,少人数学級のメリットが観察されにくいのはなぜか。まず少人数学級には,クラス内での競争を通じた切磋琢磨(せっさたくま)が損なわれてしまう可能性がある。

筆者は2004年に公表した研究において,学級規模を小さくすると,能力が低い子どもの学習意欲が増加する代わりに,能力が高い子どもの努力が低下する効果が存在することを発見し,後者の効果の方が前者よりも大きいことを理論的に示した(ただし,能力別ではない学級編成の下で,成績がクラス内の相対評価により付けられている場合を分析した)。つまり少人数化には,格差を縮小させる一方で平均的な達成度を低下させてしまう可能性がある。

大学で卒業論文や修士論文の指導をしている観点からすると、文章とか考え方をきっちり指導するなら20人ぐらいが限度じゃないかなという気はしている。

追記

自分を敗者であると自認してしまうと学習モチベーションが保てずドロップアウトしてしまう危険があるので、単純な能力別はまずいっぽい。

科目数や能力別グループ編成期間を制限し、進路や学級を変更する機会を増やし、進路が異なっても生徒に高いカリキュラム基準を提供することで、早期の進路選択と能力別コース・グループ編成の悪影響を軽減し得る。

追記2

件の記事のはてなブックマークで財務省の説明用PPTのリンクがあった。これは面白い。文科省は厚労省とタッグを組んで財務省の理屈に対抗するべき。少子化を食い止めたいの国の方針なのに、少子化進行を前提に少子化進行が加速しそうな施策を打ちそうになっている。スライド一枚一枚は説得力あるけど、理想との適合度合いやスライド間の整合性に「?」となる。

追記3(2018年8月16日)

少人数のクラスができやすい学校とそうじゃない学校だとその学校間の環境の影響がクラスサイズの影響を相殺しているかもしれないので、それを取り除いて分析したという論文。その結果、クラスサイズ(1クラス当たりの人数)が大きくなるのは学業にも精神面にも悪影響を与えそうだという話。

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