メモ:大学ファンドのそもそもの目的って?

はじめに

「大学ファンドって資金減少に悩む大学を下支えするために生まれたはずなのになんで、選択と集中の強化策になっちゃったの?」と思って、過去の記事をさらってみたけど、はじめっから選択と集中強化策だったのね。

本文

2020年7月15日
www.nikkei.com

政府は大学の研究開発を支援するファンドを2021年度にも創設する。国費から最大10兆円規模の資金を拠出し、運用益で研究者の待遇改善や施設の整備などを補助する。資産運用機関への運用委託を検討する。寄付で集めた巨額の資産を運用する米国の大学を参考にした。

拠出額は21年度予算案の編成過程で詰める。国内外の株式や債券などを中心に投資する方針だ。自民党では10兆円の拠出を求める声がある。

支援するのは東大、京大、東北大など、国際競争力がある研究に取り組む大学に限る。支援するのは(1)若手研究者の待遇改善(2)人工知能(AI)などを使う研究データの管理・利用(3)インフラ(4)スタートアップ拠点の整備――などだ。運用規模にもよるが毎年1千億円以上の支援を目指す。

2020年10月1日
www.asahi.com

支援対象は、東京大や京都大といった国際的に高い研究力がある大学。実験機器の購入やデータの管理といった研究インフラの整備、若手研究者の育成、スタートアップ拠点の整備などに使うことを想定する。

2020年10月15日
newswitch.jp

文部科学省は研究型大学の支援強化で、2021年10月に改組する計画だ。「大学の研究政策は研究振興局の担当」と明確にし、大学行政全体の高等教育局と役割分担する。背景には内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)との連携急増がある。象徴的なのが21年度予算で、両府省共同で概算要求をしている大型基金だ。研究・産学連携に経営を重ねた大学改革が、さらに進むことになりそうだ。

2020年11月16日
www.tokyo-np.co.jp

今回の概算要求は「新型コロナ対応など緊要な経費」に限り、予算の増額が認められている。文科省は「大学の活力が増せばコロナに役立つ研究も進む」などとファンドの必要性を説明。概算要求では具体的な要望額を示さない「事項要求」で予算化を求めた。ただ政府内では「コロナ便乗だ」との批判もある。

~略~

文科省などのファンド構想は数年前から水面下で検討されてきたが、自民党の支持もあり、政府が7月にまとめた経済財政政策の指針「骨太の方針」に盛り込まれた。文科省幹部は「政治と思惑が一致し、制度設計が固まらないまま予算要求した」と認めている。

2020年12月4日
www.nikkei.com

政府・与党が大学の研究基盤整備に充てる費用を確保するために10兆円規模の「官学ファンド」を創設する調整を進めている。国の財政支出を元手に株式や債券で長期的に運用し、利益の一部を政策経費に使う。財務省は国家財政の根本を危うくすると警戒感を強めている。

~略~

「大学の抜本改革」はファンドに反対する財務省と折り合いをつける努力の表れだった。大学にも資金面での主体的な努力を求めれば、一定の歯止めをかけられる。

財務省が最も恐れるシナリオは社会保障や公共事業にも波及し、運用で政策経費を賄うスキームが際限なく広がる事態だった。これから詰めるファンドの制度設計が重要になる。財務省と関係省庁や与党との攻防は続く。

2020年12月7日
www.nikkei.com

20年度第3次補正予算案に5000億円を計上し、21年度予算案の財政投融資で4兆円を賄う。その後は財投の増額や運用益の積み立てに加え、大学側は寄付金などの資金を拠出し、官学で10兆円規模に積み増す。50年間の期限のある基金とし、将来的に参加大学が独自の基金を持てるよう促す。

~略~

イノベーション(技術革新)を成長につなげる好循環を生み出すため、長期的な研究開発を財務で支える体制を整える。運用益を若手研究者の処遇改善や研究インフラの整備などに充て、大学発スタートアップの創出を促す。

政府は大学の運営方法などを定める法案を検討し、22年の通常国会に出す段取りを描く。企業のような資産管理や柔軟な人事が可能な新しい大学のあり方を示す。これに沿った大学への支援を念頭に置く。

2021年3月16日
www.nikkei.com

同会議は「第6期科学技術・イノベーション基本計画」をとりまとめた。ファンドへの参画を希望する大学に「自律した経営、責任あるガバナンスの大学改革へのコミットやファンドへの資金拠出を求める」と明記した。

2021年8月5日
www3.nhk.or.jp

「研究費で、ボールペンが買えない」
ある大学講師のツイッター上の投稿が、大きな反響を呼んだのは4年前。しかし、その後も国際的な競争の中、日本の大学の存在感は低下の一途をたどっている。そうした現状を打開しようと、政府が10兆円規模の「大学ファンド」を設立する。その運用益で、研究インフラの整備などの資金を捻出するのがねらいだ。このため「年間4%超」という高い運用目標を掲げるが、一方で失敗すれば公的な資金が失われるリスクもある。成算はあるのか?運用責任者に聞いた。

2021/9/4
news.yahoo.co.jp

各種指標の下落は国立大学法人化以後に顕著であり、日本以外の主要国でここまで急速に下落している国はみあたらない。普通に考えれば、法人化以後の「大学改革」による現場の疲弊や、「選択と集中」政策により一部トップ大学以外予算が削減されてきた影響だと言いたくなる。

 しかし財務省は、逆に改革が足りていないと考えているようだ。

2021年12月24日
www.nikkei.com

10兆円のファンドの運用益を使って助成する「国際卓越研究大学(仮称)」の制度案をまとめた。22年の通常国会に関連法案を提出する。

支援校の要件として①事業収入の3%増に向けた事業戦略の策定②合議体の設置③高い研究力――の3つを示した。文科相が要件を満たした大学を認定し24年度から運用益を配分する。支援額は1校あたり数百億円規模になる。

合議体の構成員の人数は国立大学の場合は10人程度を想定する。外部人材の登用も促す。

国際卓越研究大学には運用益の配分だけでなく運営面での規制緩和も実施する。国立大学は長期の借り入れや債券の発行要件の緩和を検討する。

2021/12/30
www.kobe-np.co.jp

背景には国内で多くの大学が研究費不足に悩み、研究者の減少に歯止めが掛からない現状がある。文部科学省がまとめた科学技術指標2021では、引用数が多いなど注目を集める論文数の最新ランキングで日本は過去最低の10位。20年前の4位から大きく沈んだ。

危機感からファンド創設を提唱してきた自民党科学技術・イノベーション戦略調査会長の渡海紀三朗衆院議員(兵庫10区)は「各国ともコロナ後の国家像を模索する中、科学技術分野にいっそう投資している。日本も大学を成長させるシステムが必要」と強調する。

一方で、どの大学もファンドに応募できるものの、運用益の提供を受けるには研究力への評価や事業成長が条件。そのため地方の大学や私立大はハードルが高いと懸念する声もある。

2022年1月9日
digital.asahi.com

大学ファンドは、財政投融資を主な原資にして10兆円の基金を運用し、利益を公募で選ばれた数校の国際卓越研究大学(仮称)に配分する構想だ。年間3千億円が上限で、各校に最大で数百億円が渡される。教員の確保や若手研究者の育成、施設整備などについて大学の裁量を高められるよう法律を改め、組織・定員・会計制度を見直す。

支援を受ける大学は、学外者らでつくる経営意思決定機関を新たに設け、その監督のもと、独自に民間資金を獲得したり寄付を募ったりして、年3%の事業成長が求められる。

~略~

しかし「年3%の成長」とは、二十数年後に収入(大学病院を除く)を倍増させることを意味する。寄付文化が根づいていない日本でハードルは高くないか。金目当てに特定の企業や団体の意向に沿ったり、目先の利益が見込まれる研究に走ったりする可能性は多分にある。

2022年1月11日
www.nikkei.com

――「新しい資本主義」では10兆円の大学ファンド設立が盛り込まれています。

東原会長「当社は16年から東大、京大、北大とラボを設立し『ソサエティー5・0』の実現やエネルギー問題、幸福についての研究をしている。大学ファンドもそういった中からでてくるニーズをいかにスタートアップも入れてやっていくのがポイントだ。あと、失敗をある程度許さないと挑戦できない。特に環境問題は100やって1つや2つ社会実装できればいいとなるかもしれない。失敗を教訓にしてどう生かせるか。10兆円ファンドもいいことだが、必ず全て成功するわけではないので失敗をアセット化して次に生かすような工夫をしていただけるとありがたい」

南場会長「日本はイノベーション力も生産性も低く、過去30年、世界における競争力は下がる一方であったことは否めない事実だ。課題の一つは人材の流動性の欠落だと思う。横軸に労働流動性、縦軸に国々をプロットすると明らかな正相関がある。日本の場合、優秀といわれる学生の多くはあるタイミングになるとせき立てられるように就活して、入社後あまり転職しない。仕事に熱意を感じるかというエンゲージメントの割合も5%と諸外国と比べて著しく低い。かといって待遇がいいかというと、給料も低い。自己啓発に時間やお金を使っていない人の割合が日本は圧倒的に高い。すなわち、意欲もないけど何かおきない限りここにいられるので、じっとしていようというスタンスだ」

山際経財相「10兆円ファンドは多くの大学に行くお金ではない。相当激しい競争を勝ち抜いた片手以内のところにお金が行く。スタートアップから大企業になって世界を変えうる企業を育てたい。広くばらまいて(有望企業が)出てくるとは思っていない」

小林会長「私学は社会の中堅を構成する人たちを輩出している。彼らのモチベーションをあげて、社会に出て中堅をなす部分を作っていく役割もある。その辺にも目を向けてほしい」