ある事項について調査していないから判明していないことと調査法自体の限界は別の話

タイトルは科学に携わるものにとって自省に使うべきもの。でも、内容はあんまり関係ない。これから書きたい話もタイトルと関係ない。

だが、チェルノブイリ事故の健康被害について国際的機関がヨウ素甲状腺がん以外認めていないのは、比較対照を必要とする疫学では個々の被曝量が推計しづらいので因果関係を見つけにくいだけの話であり、現地の話を聞けば健康被害の話はゴロゴロしている。
Twitter:morecleanenergyより)

”科学”の名の下にチェルノ事故の健康被害がほぼなかったとして福島での健康被害がないと断言することは、疫学の限界を悪用してチェルノ事故の被害に目をつぶっているだけの話。そんな科学は、いったい誰のためにあるのですか?  
Twitter:morecleanenergyより)

主として仰りたいことは「チェルノブイリ事故の健康被害調査に出ていない健康被害もあるので、チェルノブイリ事故の健康被害調査に基づいて、福島原発事故健康被害を想定してはいけない」ということだと思う。それで、「チェルノブイリ事故の健康被害調査に出ていない健康被害もある」の原因(理由)だけど、以下の可能性がある。

  1. そもそも調査項目になっていない
  2. 調査項目に入っているが、対照地域の調査結果がない(対照データ・コントロールデータがない)
  3. 調査項目に入っているし、対照地域の調査結果もあるが、統計的に有意な差がないと判断されている
  4. 調査項目に入っているし、対照地域の調査結果もあるし、統計的に有意な差があると判断されているが、この差の原因が被曝とされていない

チェルノブイリ事故の健康被害について国際的機関がヨウ素甲状腺がん以外認めていないのは、比較対照を必要とする疫学では個々の被曝量が推計しづらいので因果関係を見つけにくいだけの話」がどれを指しているのかが曖昧。4を指し示している場合は、疫学の限界と言えるかもしれない。でも、1と2の場合は疫学の手法自体ではなく、具体的な調査に問題がある。3の場合も疫学の限界とはいえるが、これをもって科学や疫学がと批判されるのはしんどい。

原因別の対応は以下のとおり。

  1. そもそも調査項目になっていない
    • この調査項目についての重要性を議論した上で、福島第一原発事故においては調査対象に含めるべき
    • そして、実際に調査する
  2. 調査項目に入っているが、対照地域の調査結果がない(対照データ・コントロールデータがない)
    • 西日本では被曝量が少ないので、対照地域として西日本のデータを使うことができる
    • そして、実際に調査する
  3. 調査項目に入っているし、対照地域の調査結果もあるが、統計的に有意な差がないと判断されている
    • 今回は心配する必要性は少ない
  4. 調査項目に入っているし、対照地域の調査結果もあるが、統計的に有意な差があると判断されているが、この差の原因が被曝とされていない
    • 健康被害があることは事実なので、まずは避難して予防する。

参考:因果関係はわからないけど、まずは本当に効果があるのかをチェックしようというのが証拠に基づく医療。代替医療のトリックで証拠に基づく医療について詳しく検討されている。