以下の布陣でパネルディスカッションが1時間半ほど行われた。
- 司会:橋田浩一氏 (産業技術総合研究所)
- ディスカッサント:
- パネリスト:
正直、最初の問題提起の部分を除き、いまいちなパネルディスカッションだった。問題提起についてメモしたものを以下に記す。
東芝の木下さんの問題提起。
- リンクされないデータを利用する仕組みは十分か?
- すべてのデータにタグ付けすることは不可能
- そこそこの精度でリンクされないデータをどう使えばよいか
- データを賢く使えそうな仕組みは十分か?
- 悪意のあるデータをどう取り除くか?
- メタデータにおける言語の問題
- 翻訳しようとしても1対1に対応しない場合もある。
- 世界で使うためには英語で名づけしないといけないが、日本語で名づけした場合に大丈夫か?
- 社会的基盤として活用する際の障害はないのか?
- 変えるべき法律などはないか
- 活用すべき法律、政策的な視点での活動はいらないか?
- Linked Dataをどう増やしていくのか
- Wikipediaはなぜ成功したか?
- データが先か、アプリが先か
- 公共が主導か、プライベートが主導か?
- 新しいビジネスモデルがあるか?
富士通研究所の津田さんの「何かビジネスの役に立つLOD活用に向けて」という問題提起。
- LODがないとできないアプリは?
- セキュリティやプライバシーをちゃんと考えている?
- データをリンクしていく先にあるのは人とのリンク
- 外部に存在するサービスを安全に使えない(履歴から企業の行動を推測されてしまう)
- 日本語の情報の正しさをどう保証するか?
上記の話に関してパネリストから刺さったトピックに対してコメントがあった。
- 岡本さん
- 都市間の競争を進めるために、特定の個人情報を公開したならば市民税の減税などをしたらよいのではないか。たとえば、図書館で何の本を借りたのかをプライバシーを守った上で利用できるならば、いろいろなことができる。
- 武田さん
- 技術面だけでなく、情報共有に対する意識を変える運動が必要
- 神崎さん
- 江渡さん
- データの質について考慮しないといけない
その後、橋田から、上記の問題はかなり議論されてきたので、連携して何かできないか(新しいプロジェクトを立ち上げられないか)を検討してみようという呼びかけがあったのだけど、ここから議論がはずまなかった。
やりとりはいくつかあったのだけど、私には刺さらなかった。そのとき、発言しようと思ってしそびれたアイデアを以下に書く。
私が思いついたLinked Dataという技術の使い道は、「中学生や高校生がアクセスできるキャリアパス検索システム」。
なぜ、必要かというと、現在の日本では、中学から高校、高校から大学、大学から就職/進学のそれぞれの段階で情報が途切れているため。中学生が高校を選ぶ段階、高校生が大学を選ぶ段階で就職までのキャリアパスが見えるように既存のデータをつなぎ、解釈の支援をするサービスがあれば、教育産業および就職産業が盛んな日本においてはお金の入るサービスになると思う。
企業にサービスや製品を提供すること(B2B)を生業としている企業が多い。でも、そのような企業があるということはサービスを受ける側になっていないと知るのは難しい。なので、企業研究をしていない人にとっては、消費者にサービスや製品を提供する(B2C)の企業だけが認識できる企業。中学生や高校生がB2Bの企業を知るのは難しい。なので、B2Bの企業で求められているような知識や技能を知るのも難しい。そうすると、高校や大学を選ぶときに何の専門を選んで良いのかわからなくなり、とりあえず、使い勝手のよい偏差値(模試の合格診断)やイメージで進学先を決める。
でも、データをリンクすれば、自分が進みたい学校や学部、学科のより具体的なイメージや就職先の企業、そしてその企業がどういう業態で何をウリとしており、業績はどうなのかまで、進学先や自分が学びたいことをキーワードとして入力するだけで、可視化できるはず。
まず、各高校は卒業生の進学先を9割近く把握しているはず。あるいは、大学は入学者の出身高校を100%把握している。CiNiiやトムソン・ロイターの論文DB、競争的資金のデータベース、各学科のシラバスを使えば、具体的な学科のイメージをつかめる。学校基本調査のために各大学はかなりの補足率で卒業生の進路(就職先、進学先)をつかんでいる。あとは、会社四季報や帝国データバンクと連携させる。こうすると、進学予定の高校を選べば、個別の会社情報までずいっとたどり着ける。会社四季報と帝国データバンクは有料サービスだけど、残りは公的に公開すべき情報なので文部省令一発で情報公開させることが可能だと思う。私立大学は猛反発すると思うけど(国立は文科省に逆らえない)。
このキャリアパス検索システムは、高校、大学、企業の評価システムとして使われてしまう可能性があるけれども、これらは個人ではなく法人なのでプライヴァシー問題を考える必要はない。特に大学は、オープンデータが結構そろっている。
とりあえず、Linked Dataのうまい利用法としてオープンデータがそろっている大学評価サービス学科単位でやってみせるのがインパクトあると思う。データのリンクはインフラとして行っておき、その解釈が多様ならば、一元的な大学ランキングに陥らず悪くないと思う。