熟議書き抜き:文科省職員の国立大学への出向人事について

kenq.infoさんのコメント

わたしとしては、わざわざ文科省の職員のみを対象にする必要はないと思います。

現状の人事交流の仕組みは文科省からの出向者が優秀かつ、その優秀な能力を発揮できることを大前提としています。しかし、そもそも優秀と思われない方もおり、かつひでまるさんらがおっしゃっているように大学の業務は多岐に渡るようになり、優秀といえどもその優秀な能力を生かすことができるとは限らない場合も増えてきています。それを研修などにより補強するというのはひとつの手ですが、それ以外の方にも門戸を開くというのもひとつの手ではないでしょうか。

たとえば、独立行政法人では折からの天下り批判を受けて役員の公募を今年度から行いはじめ、結果として募集した50ポスト中の38を民間経験者が占めました(官僚OBは6)(http://bit.ly/bk29dQ)。実際にどういう結果を生むかは今後の検証が必要とはいえ、この事実は入り口の時点では優秀と思われる人材が民間に多数存在したということを証明しています。

独法と同様のことを、今後国立大学法人が事務局長ポストに対して行ったとしてもまったく違和感はないかと思います。現状として(大学側からの要請とのことですが)ほぼすべての事務局長ポストが文科省出向者で占められているということは世間的に問題になってはいませんが、それが問題として表面化するのも時間の問題でしょう。組織の自浄能力が試されていると言えます。

今まで職にありついていた方をどう処遇するかという問題はたしかに存在しますが、それが直接的な理由となって大学として、そして国家として有効な選択肢を取らないというのはナンセンスではないかと思います。大学は役人の雇用安定装置ではありません。

ひでまるさんのコメント

ご意見をくださいました皆様に感謝申し上げます。
まずは、少し補足させていただきます。

モンジロウさんがご教示くださいました出向前研修については、法人化前から存在していることについて存じ上げておりましたが、その期間や内容については再考すべき点があるのではという思いで具体例を挙げさせていただきました。ご指摘のとおり、一番大事な要素である「人柄」だと私も思います。しかし、この部分については、出向(予定)者本人のご努力だけでは解決しがたい問題だと思いまして、人材養成システムとしての研修のあり方についてご意見申しあげた次第でございます。

また、異動サイクルについては立場を前回は立場を表明しておりませんでしたが、きのみさんからご指摘のありました「2年は短い」というご意見に賛成です。加えて、公募制の導入についても賛成であることを申し添えます。

加えて、kenq.infoさんから「文科省以外の方にも門戸を開くべき」というご意見を拝読して、頷く部分がありました。これに関連して、2008年に実施された調査をご紹介したいと思います。

「法人化後の国立大学運営における外部人材活用方策に関する調査研究プロジェクト」(研究代表者:国立大学マネジメント研究会会長 本間政雄氏)から「国立大学法人における外部人材の活用方策に関する調査研究報告書」が公表されております。この調査は2006年10〜11月に全国立大学長及び経営協議会の学外委員、学外理事、監事、学外から登用された経営スタッフ全員に対して行った外部人材の活用実態に関するアンケート調査と外部人材による座談会を通じて明らかになった活用上の課題を踏まえ、10の提言がなされております。この提言の中には今回の議論の参考になる内容も含まれていると思いますので、一部ご紹介します。

(以下、一部抜粋)

◆(学外理事)「学外理事の常勤化と民間出身理事の増員」
2007年4月1日現在で、学外出身理事は、87大学132名を数えるが、このうち常勤理事は73名と56%に過ぎず、残り59名は非常勤となっている。しかも、常勤理事のうち58名(約8割)は文部科学省出身者であり、民間企業など「純粋に」学外から常勤理事に登用された者は15名に過ぎない。
また、非常勤理事のうち10名は、担当すら決められていない。大学運営に「学外者」の視点を入れ、民間企業的な経営手法を導入し、経営の効率化を図るという法人化の趣旨を踏まえ、学内登用理事の数を抑制し、民間企業など広く学外の経験者、有識者を常勤理事として登用する。

◆(学外登用経営スタッフ、事務組織における外部専門家)「外部登用部課長に対する具体的目標設定」
その人の持つ専門知識、経験に着目し、学外から経営スタッフや事務局部課長などとして登用する場合、彼らを最大限活用するために、それぞれの業務目標を可能な限り明確にし、必要な権限、予算、組織を与え、そのことを学内の各組織、教職員に周知徹底する。

◆(共通…2)「具体的目標・課題設定による文部科学省派遣幹部人材の活用」
いわば「広義の外部人材」として、数多くの理事、事務局長、部課長を国立大学に送る文部科学省は、法人化後の国立大学の現状と課題、それらの解決に必要な知見について、それぞれの専門分野ごとに事前に十分理解させる。各国立大学も、文部科学省に理事など幹部職員の派遣を依頼する場合は、それぞれのポストごとの業務目標、任期などについて明確にした上で行う。例えば、事務局長には「事務改革・事務組織改革により4年間で最低30%の効率化を実現し、職員数の15%を削減する」、入試課長には「戦略的な広報活動の展開により、4年間で受験者数の数を最低30%増、合格者の偏差値最低5アップを実現する」、留学生課長は「奨学金の充実、学生交流協定の締結などにより、4年間で派遣・受け入れ留学生数を最低30%増を実現する」といった条件を具体的に示した上で採否を決定する。