河野議員のブログの以下の記載が不思議だった。国立大学の学生数が減っている?
その三、事務職員の雇止め問題について
各国立大学が人事権を持つようになった国立大学法人化した平成16年度以降の学生数、教員数、職員数をみてみると、
年度 学生数 教員数 職員数 平成16年度 624,389 60,897 55,545 平成24年度 618,134 62,825 69,371 平成25年度 614,783 63,218 71,511 平成26年度 612,509 64,252 75,556 平成27年度 610,802 64,684 78,034 平成28年度 610,266 64,771 79,278 16年度比較 -14,123 3,874 23,733 学生数が1万4千人減少したのに対して、教員が4千人弱増加し、職員は2万4千人近く増加しています。
人事管理が計画的に行われていたのでしょうか。
この職員増は非正規で対応せざるを得なかったということではないでしょうか。
また、教員に関しても、年齢構成が高齢化し、若手がポストに就けないということでしょうか。
企業がポスドクを雇用せず、ポスドクの行き場がなくなって、ポストを探す研究者が増えたということでしょうか。
(研究者の皆様へ | 衆議院議員 河野太郎公式サイトより)
国立大学は定員を増やすことを文科省に厳しく制限されている(一方で減らす場合は結構許可が出る)。一方で、国立大学にとって学生を減らすということはただでさえ少ない収入の道を断つということなので、国立大学が望んで学生定員を減らすとは思えない。実際、第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会(第1回) 配付資料の資料3-1 国立大学法人の現状等について (PDF)の23ページ「国立大学の入学定員の推移」をみると、H16年度は学部+修士+博士=148,079人、H27年度は152,197人で増えている。入学定員が増えているのに、学生数が減っている理由、しかも14,123人という微妙な減り方はいったい?
理由を考えてみる。
定員管理
入学定員と入学者は異なる(入学定員は募集枠、一方、入試の合格時には辞退者を見込んで多めに合格者を出すため、基本的には入学定員を超える)。文科省はここ数年間で入学者数/入学定員 = 1.X倍に近づけろという指導を行ってきた(Xは1~3ぐらい)(参考:大学の「定員管理」政策!)。なので、一つには定員管理を厳しくしていったため学生数が減ったと考えられる。
実際、先の入学定員の資料ではH16年度は学部96,252人だが、入学者数は学校基本調査H16年度「関係学科別 入学者数 」では、103,552人(超過率1.07倍)、H27年度は学部定員96,277人のところ100,631人入学している(超過率1.04倍)となっている。あれ?あんまり影響なさそう。一応、4倍したら影響があるかな?
この理由の学生数減は教職員削減につながらない。なぜならば、仕事の量が変わらないため。基本的に学科単位、学部単位で学生がいなくならないと教職員は減らせない。
夜間部の縮小
次は上の定員の話とどういう関係にあるのかわからないけど、夜間の学生数の減少。学校基本調査H16年度の「昼夜別 学生数」を見ると学生数のうち夜間の学生数が16,156人なのに対して、平成27年度は7,355人。9,000人近く減っている。国公私立問わず、夜間学部は縮小傾向なのでこの分の学生数が減っているのは確か。これを昼間の定員に付け替えられないと学生数は減る(上の入学定員は昼間だけの定員なのかも)。
夜間学部だけに教員や職員を割り振っているところは少ないと思う(兼任が大半と予想)。なので、ここで学生が減っても、減った割合ほど教職員削減には影響しないと思う。
過年度生の減少
学校基本調査に「学部別 最低在学年限超過学生数」という項目がある。比べてみると結構な差があるのがわかる。
超過年数 | H16 | H27 |
計 | 28,428 | 21,949 |
1年超過 | 17,163 | 13,544 |
2年超過 | 6,442 | 4,752 |
3年超過 | 3,057 | 2,169 |
4年超過 | 1,389 | 1,103 |
5年超過 | 247 | 247 |
6年以上超過 | 130 | 134 |
国立大学では留年率を減らす方向に動いている(進級させられるような環境を作る&望みがなければ退学を勧告する)ので、今までと違い留年率は低くなっていると思われる。また、経済的問題で留年が許されない状況の学生も増えてきていると個人的には感じている。
留年者のために教員や職員を配置している大学はほぼ皆無だと思うので、留年者が減っても教職員削減には貢献しない(むしろ、留年者を減らすために仕事が増えるので増加理由になる)。
追記:博士後期課程の学生の減少
一番あり得るのを忘れていた。学生数、学部生数、大学院生数は「昼夜別 学生数」より、博士後期課程学生数は「専攻分野別 大学院学生数」より。
年度 | 学生数 | うち学部生数 | うち大学院生数 | うち博士後期課程 |
H16 | 624,389 | 459,496 | 146,913 | 51,526 |
H27 | 610,802 | 445,668 | 150,091 | 50,676 |
数字を見る限り、博士後期課程の学生は微減しているものの、大学院生の学生数は増えているので関係ない様子。
とりあえずのまとめ
夜間部を縮小し、従来よりも入学時の定員管理を厳しくするようになり、かつ、留年もさせないような環境を整えているため在学者数は減った。と考えれば、14,123人くらいの学生数が減ったのは説明できるのではないかと思う。この3つの理由のうち、教職員削減が妥当なのは夜間部の縮小のみで、その他はそれを理由として教職員を減らすのは妥当ではない(最低限の提供すべきサービスがあるとき、サービスの受給者が少なくても最低限のサービスを提供するために必要な人材は必要となるため)。
教員、および、職員が増えた理由は
- 学科数が増えているのではないか?
- 外部予算獲得のための人員(外部予算受け入れには事務担当が必要)ではないか
- 大学に課せられた役割が増えたので対応人員が増えたのではないか。たとえば産学連携、広報などは人員が必要。
時間があれば検討したい。