博士進学が決まったあなたが今すぐに始めるべきこと

次の4月から博士課程へ進学することが決まったみなさま。この4月までの間に次のことをやっておくと、あとあと楽ですよ!

業績リストを作る

後述しますが、博士課程に進んだら各種申請書を書きまくらなければなりません。その際に重要なのが業績リスト。今、論文や業績がほとんどないとしても、必ず用意してください。何が業績になるかは分野ごとに違いますから、分野の先達のWebページを熟読してください。

業績リストは「発表順」と「発表媒体別」の2バージョンを用意しましょう。作った業績リストはWebページで公開しておくのが吉です。大学でも、家でも業績リストが使えますし、あなたのアクティビティを示す証拠になります。

えっ?あんまりがんばっていないからWebに載せたくない。わかりました。じゃあ、すぐに退学届を書きましょう。21世紀に入った現在では、博士課程の学生を含む若手研究者がWebで自分の業績を公開しないなど許されません。

自分でWebページを用意するのが大変な人、研究室や大学がそんな場を用意してくれないという人は、Researchmapを使いましょう。

学会に入る

「えっ?いまさら何いっちゃってんですか?」とおっしゃる方もいるかもしれません。それとも「えっ?やっぱり入ったほうがいいんですか?」とお思いですか?前者は頼もしい、OKです。後者には「大丈夫、いまなら間に合うよ」といいたいです。

世間の博士に対する視線は「コミュニケーション能力がないやつら」というものです。アルバイトに研究となるとどうしてもあなたの世界は狭くなってしまいます。今後の就職(大学、研究所、民間企業すべて含む)のことも考えて、学会に入り、人脈を作りましょう。

あなたの分野で投稿できる学術雑誌&学術会議を列挙する

ほとんどの大学での学位の取得要件は学術雑誌に論文をX篇掲載するというものです。とっても、びっくりすることに博士課程に進んだのに自分の分野の学術雑誌や学術会議を知らない人がいます。実は私がそうでした。

モチベーションを高く保つため、また、切羽詰ったときにそんなことしなくてもよくするため、あなたの分野で投稿できる学術雑誌&学術会議を列挙しましょう。たとえばどの会議や雑誌に投稿すべきかの情報を共有するのは素晴らしいのようにとか。

会議や雑誌を調べるときは以下の情報もあわせて調べておくと後々便利です。

  • 論文の募集時期(適宜なのか、決まった時期があるのか)
  • 出版時期(投稿した論文は順調にいって、いつ出版になるのか)
  • ジャンル(何系の研究テーマを募集しているのか)

列挙した学術雑誌&学術会議は、Webページで公開しましょう。誰かの役に立ちますし、あなたが本気で学位をとる気であるということがアピールできます。

あなたの分野で申請できる奨学金/研究助成金を列挙する

日本の博士に対する批判の一つに「日本の博士は自分で研究費をとってくることをしない」というものがあります。一方で、世の中にはたくさんの奨学金/研究助成金が存在します。不況の現在でもです。

もし、あなたが博士課程の後に職業研究者の道を進もうと考えているならば、あなたの一生は申請書との格闘であるといっても過言ではありません。一方、あなたが職業研究者でなく、高度技術者として生きようと思っていたとしても、社内予算やベンチャー資金の確保、各種コンペティションのために申請書やらプレゼン資料やら書き続けることは一緒です。

あなたは論文書きだけでなく、資金集めのための申請書書きについても博士課程のうちに学んでおかなければならないのです。公益財団法人 助成財団センターやご自身の大学の研究助成係(そんなような部署、たとえばこんなの)で、自分が投稿できそうなところを列挙しましょう。可能性を狭くとらず、むりやりねじ込めばどうにかなるなという分野までピックアップするのがコツです。そして、1年に2つは申請書を出しましょう。そうすれば、今から6回は申請書を書く練習ができます。

たとえば、以下のようにまとめて置くと、いつ申請するのか分かりやすいかも知れません。

申請書の書き方についてはこちらが参考になる。

あなたが書いたすべてのドキュメント、図、表をすぐに使いまわせるようにしよう

私は修士論文提出4日前に3日間かけてつくっていたプログラムとシミュレーション結果のデータを間違えて消してしまった経験があります。それ以来、Subversionというバージョン管理ソフトウェアを使って、自分の書いた全てのドキュメント、発表資料、図、ソースコード、実験データを管理していますが、これのおかげで、いろいろな資料を作ったり、申請書を作ったりするのがとても楽になりました。

あなたも、これからたくさんの申請書、たくさんの論文、たくさんの発表資料、たくさんの広報資料を作らなければなりません。そんなとき、すぐ自分が昔書いたドキュメントや図、表を使えるようにしておくと作業の効率が上がります。あなたの計算機に関する知識と計算機環境にあった管理方法を探し、それで全資料を管理するようにしてください。

私は、Subversion(バージョン管理)とUnison(ミラーリング)というソフトウェアを使って、仕事環境を管理しています。このため、新しいPCに仕事環境を構築する必要ができたときも、ネットワークにつながっていれば、2〜3時間で環境を構築できます(ツールのインストール込み)。家でも、研究室のPCでも、ノートPCでも統一的にファイルが扱えるのは便利ですよ!

研究のやり方に関する本を読んでおこう

指導教員からの一子相伝的な学びや私のブログで書かれているような断片的なTipsも良いですが、ここらで一度、研究のやり方に関する本を2〜3冊読んでおきましょう。

私の場合はこんな本を読みました。

異分野の人とのつながりを築こう

何か変な自己啓発セミナーみたいで恐縮ですが、どうしても会う人が少ないと自分の考えも狭くなるので異分野の人とのつながりを作っておきましょう。一番いいのはちょっと分野が違った勉強会やシンポジウムに参加してみることです。興味のままに新しいことを知る楽しみが得られて結構よいですよ。

あと、博士同士のコミュニケーションも重要だと思います。

追記:収集した文献の整理をしておこう

思いついたので追記。博士課程までになると収集した論文や資料が結構な数になっていると思います。この春休みを利用して整理しておきましょう。整理の仕方はたくさんありますが、あまり凝った整理の仕方をすると整理が破綻したときにやる気がなくなります。シンプルで、整理が失敗したときも簡単に復帰できるような方法にしましょう。

追記(2011年2月23日):代替案を考えておこう

進学を決めた人は熟知していると思うけれども、日本において博士課程進学者および博士号取得者に対する視線は冷たい。まだ、認識していない人は以下を読んでみて欲しい。

いきなり、やる気を削ぐような本やエントリーを紹介しているけれども、好き嫌いに関わらず不況下の日本において、このように見られているということを意識しないといけない。でも、めげてはいけない。それはそれ、これはこれ。みなさんは、その上で、きっちりと研究能力を身につけて、その後、ご飯食べて生きていける社会人にならないといけない。

人によっては、退路を断って覚悟を決めて、この道しかないと見定めてがんばれと言うのかもしれないけど、私はあえて「退路を確保しつつ全力を尽くして欲しい」と思う。実際、私もそのように考えて行動しているつもり。背水の陣は非常の策。常道は退路を確保し、再起を図れるようにしておくこと。ぜひ、第一志望の進路がうまくいかなかったときのセカンドチョイス、サードチョイスを博士号取得までに準備しておいたほうが良いと思う。

たとえば、企業とか。

たとえば、留学とか。

博士課程を通して得たメタ研究能力を生かして、研究以外の道へ進むとか。

おわりに

ごめんなさい。あんまり、まとまらなかった。