アルバイトの内容によって学生を処罰可能か?

私もアダルトビデオの出演を「まっとうなアルバイト」と見なす度量はない。けれども、私の感覚では法律に反していなければ大学が該当学生に対して処罰する権限はないと思う。

今年の日本選手権「ライスボウル」を制した立命館大(京都市中京区)のアメリカンフットボール部で、準レギュラーだった4年生が、3年前の1年生当時、アダルトビデオに出演していたとして退部処分を受けていたことがわかった。

大学側も「学生の本分にもとる恥ずべき行為」として処分を検討している。

大学によると、同部コーチらが6月中旬、インターネット掲示板で、この4年生の出演に関する書き込みを確認。同部の聴取に「1年生の時に6回出演した」と認めたため、6月15日付で退部処分にした。
(2009年7月12日18時12分 読売新聞)

立命館アメリカンフットボール部の部員の男子学生(4年)がアダルトビデオに出演し、部から退部処分を受けていたことが12日、分かった。大学も学生への処分と部への指導を検討している。
大学によると、学生は1年生だった2006年から07年にかけてビデオ6本に出演。今年6月中旬に関係者が事実を把握し、「学生の本分にもとる行為」として部の倫理規定に基づいて退部処分とした。学生は「スカウトされ、金になるアルバイトと思って出演した」と話しているという。学生は準レギュラーで公式試合にも出場していたが、「個人的な行動」として部の活動は続ける方針。
ビデオ出演をめぐっては、大阪経済大ラグビー部が大麻取調法違反で部員が逮捕後、部員らのアダルトビデオ出演が発覚し、大学は10日に部活動の無期限停止処分とした。

部活動は学生の課外活動なので部活の執行部と構成員の意思で退部処分をすることはできるだろうけれども、大学が学生に対して処分する権限があるのだろうか?大学の名を傷つけたという主旨の処罰があり得るだろうけれども、どの当たりを処罰の線引きとするのか難しいのは普通に予想できる。まあ、立命館は私立大学だからここいら辺は自由にできるだろうけど。

大阪経済大(大阪市東淀川区)は10日、ラグビー部員3人が大麻取締法違反(譲り受け)容疑で逮捕されたほか、部員2人がアダルトビデオに出演していたことが分かったとして、同部を無期限活動停止にしたと発表した。

大学によると、部員2人は「お金がほしくて出た」と話し、ビデオ出演を認めているという。大学は、学生の本分に反したとして2人を厳重注意。ほかにも、卒業した元部員2人が在学中に出演していたことが確認されたという。

重森曉(あきら)学長は「学生3人が逮捕され、社会の皆さまにご迷惑をかけたことをおわびしたい。ビデオ出演は残念というか遺憾で、良識を欠いたあってはならない行為だ」と話した。

大学によると、ラグビー部は1938年に創部し、全国大学選手権にも2度出場。現在は関西大学Bリーグに所属し、49人の部員がいる。

こちらの場合は大麻取締法違反という犯罪行為にプラスして、アダルトビデオの出演が問題視されたケース。でも、この学長はちょっと軽率ではなかったかと思う。放課後のことは大学は関与しないという方針を貫くのが無難だと思うのだけど。

引っかかる点は以下のとおり。

  • 過去の不道徳な振る舞いに対して現在の学生を罰することができるか
  • 何をもって不道徳な振る舞い(「学生の本分にもとる行為」)とするのか
  • 不道徳な振る舞いを現在行っているとわかったとき学生を罰することができるのか

犯罪行為を犯したけれども服役および罰金刑で罪は償い、更正した人間(たとえば東国原宮崎県知事)が大学に入りキャリアを築くことはできるのに、犯罪ではないけれども「学生の本分にもとる行為」をしたために大学を辞めさせられたり処罰されたりするのはつじつまが合わない。

なので、大学は世論や風潮に流されずに慎重に対処しないと逆に民事裁判などで痛い目みると思う。ちなみに大学の教職員がアダルトビデオに出演していた場合は兼業規定の違反で処分できる。あれ?一応、兼業申請すればできるのかな?まあ、できたとしてもアダルトビデオの出演について兼業申請しないわなぁ。

追記2

apjさんのエントリーにて議論が行われている。この議論を通して大学が学生を処罰することを賛成する人と反対する人の立ち位置の違いが明確になっていると思う。