お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践

とても、面白い本だった。正直、勝間さんの本は帯の勝間さんの写真が選挙のポスターみたいでどうにも嫌いだったのだけれども(清潔感のある笑顔が逆に無個性に見えて、かつ、本屋の平台に積まれていると逆に清潔感のある笑顔が空疎に見える)、社会人だし、金融リテラシーって大事だよねと思って買ってみて正解だった。

p.46に載っている平成18年度国民生活白書からの図「生活時間配分の各国比較」で、日本の有業女性の時間配分を見ると、明らかに家事の時間のために睡眠時間と自由時間、実は労働・学業の時間が男性よりも短い。また、日本の有業男性の家事に費やす時間が短すぎ、仕事・学業に費やす時間が長すぎる。勝間さんの主張である「ゆとりある生活時間を得るためにも金融資産による収入を得るようにしよう」というのもうなづける。

この本のもっともすばらしいところは、次の勝間さんの割り切りにある

(p. 159)
すべての前提は「私たちは金融の相場を予測することはできない」ということに基づいています。

この割り切りの下で、5つの原則が紹介されている。

  • 分散投資
  • 年間リターンの目安は5%で上出来
  • ただ飯はない
  • 投資にはコストと時間が必要
  • 管理できるのはリスクのみ、リターンは管理できない

この詳しい説明は本書を読んだほうがよい。

勝間さんの分析で私も心から同意するのは以下の点。

(p.25)
また、ITの進展によって、熟練労働者もどんどん代替されてきています。これまで熟練工しかできなかったような作業も、センサーやCAD(コンピュータによる設計支援ツール)、画像分析などの技術の発展で、オペレータが一人いれば、その作業をブレなく仕上げられるようになりました。

こうした結果、日本において労働収入によってこれまでと同じ収入を稼ぎ続けようと思えば思うほど、よりきつくて難しい仕事を長時間せざるを得ないのです。

コンピュータにできるようなことはコンピュータにやらせるようにすること、ロボットができるような仕事はロボットにやらせるようにすることを技術者は飯の種にしているのだから、技術者が働けば働くほど、コンピュータやロボットじゃやることのできない仕事を人間がやらなければならないというのが当然の理屈。難しいのだから、仕事に費やす時間は増えざるを得ない。ここが、勝間さんの考えと違うか。「きつくて難しい仕事を長時間せざるを得ない」のは、「同じ収入を稼ぎ続けようと思う」からではなく、仕事が難しいので長時間を費やさざるを得ない(仕事の難易度が上がる速度と人間の遂行能力の向上が一致していない)からだと思う。

話し戻して、もうひとつこの本で良いなと思ったのは、実際の金融商品の一覧を紹介してくれていること。私の選択肢は、定期預金、国債、株式、投資信託、FX、外貨預金くらいだった。不動産、あるいは、住宅ローン、生命保険も一種の金融商品だったとは。驚き。あと、現物も金融商品とみなせるとは。

もしかしたら、これらの情報はWebを検索すれば無料で手に入れられるのかもしれなけれども、自分の時給を考えれば、数時間費やして調べるより、735円払って1時間でこの本を読んだほうがコストパフォーマンスが高い。お勧め。たぶん、この本は研究室の学生、特に女子学生には勧めると思う。