だんだん、また「仕分け」という感覚になってきている。
大学のあり方に問題があるのは同意する。科学技術政策のあり方に問題があるのは同意する。でも、以下の論点を「仕分け」でやる必要があるとは思わない。国民の代弁者である国会議員が国会の各委員会で議論し、方向を定めるべき内容であるはずで、文科省の役人に問い正す性質のものではないはず。「仕分け」というのは行政組織にレクチャーしてもらう時間なの?
教育(大学)<大学改革の方向性のあり方>
- 日本の大学は世界に通用するのか。
- 世界の中で日本の大学のレベルは低下しているのではないか。一方で、大学の総収入・総支出が増加していることをどう考えるか。
- 大学院大学の問題がよく指摘されるが、何が問題か。
- 大学は人材を育てられるのか。
- 大学は、将来を見据えた明確な人材育成ビジョンを持っているのか。
- 大学はどのように改革すべきか。
- 大学が社会の実情と乖離しないよう、また、社会のニーズに十分に対応できるよう、どのように大学改革を進めるべきか。
「何が欲しい」を明確にした上で、「どうやって」を専門家に任せるのが正しいアウトソーシングの仕方。専門家に「あなたたちは私たちに何を提供するのか」と尋ねたら、専門家に都合の良いことを提案されるというのは今回の原発事故でわかった反省点だと思うのだけど。逆に問いたい
- 日本の大学を世界に通用させたいのか?
- なぜ?
- どういう面で世界に通用させたい?
- 大学院大学の問題って何?
- 誰が何について何の観点から述べているの?
- 日本における大学をどういう位置づけの教育機関にしたいの?(日本の大学は多すぎるのかへの解答準備として)
- 自由競争を進めると一時的に競争者は増えるのだけど、それについてどう思うのか?(少子化の傾向である一方、大学数や入学定員、教職員数は増えていないか。定員割れによる学力低下等や赤字経営の大学の増加等の問題をどう考えるか。への解答準備として)
- 国民の代弁者たる衆参両院はどのような人材を大学は育てるべきと思っているのか?
- 誰にとって有用な人材が欲しいのか?(大学は、将来を見据えた明確な人材育成ビジョンを持っているのか。への解答準備として)
- どんな大学が欲しいのか?(大学はどのように改革すべきか。への解答準備として)
- 大学と社会の乖離は具体的にどのように生じているのか?
ここいらへんを考えると、必ず初等教育を含めた一貫した制度修正が必要なはずなのに初等教育と高等教育を分離したままにしておくのは一体どういう話なのか?大学入試が諸悪の根源ならば、高校と大学の接続を検討した上で止めてしまえば良いのに。
科学技術(研究開発)<研究開発のあり方・実施方法>
- 研究開発は、誰が何を何のためにやっているのか。
- 研究開発は役に立っているのか。
- 独立行政法人をはじめとする各種科学技術施策は、投資に見合った成果が現実に出されているのか。施策の評価・検証は十分か。どのような仕組みにより説明責任を全うすべきか。
- 民間・産業界との連携が不十分ではないか。
- 実用化・産業化に向けた意識を高めつつ費用対効果を高めるためにも、民間との連携・民間資金の導入を自律的に強化していく必要があるのではないか。
- 研究開発の施策は誰がどのように決めているのか。
- 研究開発の施策の優先順位付けが十分に行われているか。各省間の連携は進んでいるか。効果的・効率的な施策の実施のため、どのように実効的な優先順位付け等を図るべきか
こちらも、仕分けが大好きな科学技術行政。でも、こちらの視点は比較的まともだと思う。ただし、やはり「研究開発でどういうことを期待しているのか」は国会がまずそれを定めるべき。
去年に文科省が行った熟議の方が具体的な論点がでて有意義だったように思う。科研費の会計年度の問題が指摘されて、基金化が提案されえ、実際に今年度から一部基金化が実現したし。仕分けは目的レベルの話をやめて、こういう具体的な効率的な運用法を追記有していく方向に進んだら良いと思う。
関連過去エントリー
- 日本の教育システムに関する今の私の考え:サービス産業の基盤として大学が必要であるというのが私の考え。
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- 大学の在り方、科学行政関係のエントリー:その他科学技術政策に関連する過去エントリーリンク
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