リンク:日本におけるオンライン・ハラスメントの現状と対策:Twitterでの女性記者のツイート「炎上」を例に

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そこで本稿では、炎上現象を検討する際に、オンライン・ハラスメントという概念を導入する。オンライン・ハラスメントとは、「インターネット上で行われる、扇情的なコメントやヘイトスピーチの繰り返しの投稿(「荒らし」「トロール」)、サイバーストーカー、身体的な脅迫、同意なしに性的に露骨な画像を公開すること(「リベンジポルノ」)、個人情報を公開する(「晒し」「ドクシング」)などの行為」を意味する (PEN America, n.d.-b)。

ソビエラージ (2020) によれば、オンライン・ハラスメントは誰でも被害に遭う可能性があるが、特に加害者の標的になりやすい属性があるという。すなわち、

  1. マイノリティである、
  2. フェミニスト (旧来のジェンダー価値観に縛られない)である、
  3. 政治、スポーツ、外交、防衛、サイバーセキュリティなど男性優位の領域について意見する

場合、ハラスメントの標的になりやすく、これらの属性の共通部分においては最もハラスメントに遭う確率が高くなる(図 1)。

次に、Z氏に対する直接リプライと、元ツイートの引用 RT の関係を分析したところ、炎上を通じてハラスメントを行ったユーザーは、3 つの層に分かれることが見て取れた。すなわち、①インフルエンサー (高頻度炎上関与ユーザー群)、②インフルエンサーの「犬笛」に呼応する炎上加担ユーザー群、③荒らしを行うユーザー群、である。

小山ら(2019) による計約 13 万人の炎上参加ユーザーの分析によれば、炎上参加者は他の炎上にも参加しやすいことが明らかになっている。5 件以上の炎上に関わったユーザー77 名に関する詳細な分析においては、それらのユーザー間にはフォロー/フォロワー関係が密に存在し、高頻度炎上関与ユーザーは多くのフォロワー数を持ち、同じ炎上トピックに対してツイートを行うという、情報の共振構造が確認できたという。

犬笛とは「加害的もしくは有害な意味を持つ二重、もしくはコード化された言葉や記号を使い、インターネット上の加害者グループに特定の標的を攻撃するように合図する行為」を意味する (PEN America, n.d.-a)。