木村草太さんが言う政府が自衛隊を違憲としない理路

Session 22の7月4日放送回で憲法学者の木村草太さんが言う政府が自衛隊を違憲としない理路を聞いてびっくりした。
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Session 22で説明していた理路は、毎日新聞の対談でも書いてあった。

井上 私は護憲派の憲法学者を(自衛権を認めていない)原理主義的護憲派と(自衛権を認めている)修正主義的護憲派に分けていますが、私の憲法解釈は原理主義的護憲派と同じです。私の考えは、9条1項では自衛権は否定していない。つまり、国際紛争や国益追求の手段として戦争はしないが、自衛のための戦力の保持・行使は禁じていない。


しかし、2項により自衛のためでも一切の武力行使を禁止している、というものです。従って、個別的自衛権の枠内なら自衛隊と日米安保は許されているというのは、まったく詭弁(きべん)だと思う。自衛隊は世界有数の武装組織です。戦力ではないと言い張ることはあり得ない。米軍は世界最強の戦力であり、日米安保のもとでは日本が侵略されたときは自衛戦争を共同で戦うわけで、これを交戦権の行使ではないというのもあり得ない。


木村 私も9条の解釈はまったく同じ。違うのは、9条の例外を定めた条文が憲法にあると考えるかです。例えば医者が手術でおなかを切るのは刑法の傷害罪の構成要件に当たるが、例外として正当業務行為を認める規定があるので犯罪にならない。安倍政権を含めて従来政府は9条の例外を認める根拠として憲法13条=2=を挙げている。国民の生命、自由、幸福追求の権利を保護する義務が日本政府にあるから、それに必要な最小限度の実力を持てる。私はこの解釈は成り立つと評価をしている。ただし、集団的自衛権は日本への主権侵害の着手がない段階での武力行使なので、生命などへの具体的な危険がなく、13条では根拠付けられません。

毎日新聞:憲法と安全保障を問う 対談 井上達夫・東京大大学院教授、木村草太・首都大学東京教授より)

木村草太さんの説明する従来政府が自衛隊が意見でないとする理路。てっきり、9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」について自衛隊は軍じゃないからという理屈なのだと思っていた。

  1. 憲法第9条2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とあるので戦力の全面放棄がうたわれている。よって、これに従い集団だろうが個別だろうが自衛権は認められない。
  2. 一方、憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 」とある。
  3. 国外の武装組織が攻めてきたときに国は憲法第13条は守ることができなくなる。
  4. 9条第2項で認められないが、第13条を最低限満たすために、最小限の自衛権(個別自衛権)は保持しなければならない。
  5. 以上の理屈により専守防衛の戦力として自衛隊が合憲となる

他の解釈。

9条解釈

学説では、1項で「永久に放棄する」と定める範囲について、(1)あらゆる戦争と武力行使を放棄している(2)「国際紛争を解決する手段としては」と条件付けていることから、侵略目的では戦争と武力行使は禁止されているが、自衛のためには認められる−−という二つの説がある。そのうえで、2項で一切の「戦力」の保持を禁じているため、(2)も否定されるという説がある。

政府は、1項の解釈では(2)の立場をとり、2項でも戦力保持を否定していると解釈しているが、自衛隊については合憲としている。国家固有の権利として自衛権があり、備えとして「必要最小限度の実力」は認められ、その範囲の防衛力である限り、「戦力」にはあたらないという解釈だ。これには最新鋭装備を整える自衛隊の実態にそぐわないとの指摘もある。

また、2項冒頭の「前項の目的を達するため」を引いて自衛目的の戦力保持は可能との解釈(芦田修正論)もある。

自衛権行使について政府は、9条の文言から「武力の行使を一切禁じているように見える」とする一方、憲法前文(国民の平和的生存権)や13条(幸福追求権)を踏まえ、緊急時には「必要な自衛の措置」を行うことを認めている。この解釈は2014年の閣議決定でも踏襲されている。

毎日新聞:憲法と安全保障を問う 対談 井上達夫・東京大大学院教授、木村草太・首都大学東京教授より)

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