Togetter:何故大学の先生はレポートを返さないのか。を読んで。
レポート指導(not 添削。書かれていることだけでなく、そもそも考え方から修正案を出すことがあるので)をした方が学生のみなさんにとって有意義であるということには心から賛成であるという前提で、なぜ、返さないことがあるのかの私の場合の理由。
レポート指導および返却&再回収に費やすコストを支払えない
一番の理由がこれ。
レポート指導をするにはそれなりに時間がかかる。たとえば、私は担当授業で数学の問題を十数問解かせるという課題を出しているけれども、これの採点でさえ1人あたり10分〜20分くらいかかる。50人の授業で500分(8時間20分)〜1000分(16時間40分)、100人の授業で1000分(16時間40分)から2000分(33時間20分)採点に時間がかかる。採点に1人あたり20分間かけてしまうと、受講生が100人いる授業でのレポート提出週は勤務時間のほとんど(33/40)を採点に費やすことになってしまう。
上記は単なる採点なので1人当たり20分程度で終わらせることができるが、レポートの場合、まともにやれば1人当たり20分〜1時間ぐらい指導時間が必要となる。1人当たり1時間かかるとき、100人の授業ではレポート指導に100時間が必要となる。もし、週の授業の数が多かったり、受講生が多かったりしたとき、明らかに精神と時の部屋が必要となる。
一方で、時間的コストだけでなく、精神的コストも無視できないものがある。さらに、多くの場合、内容の指摘よりも、書式や日本語文法、用語の使い方、誤字・脱字の指摘の数の方が多い。また、多くの学生が同じ書式ミス、日本語文法ミス、用語の使い方のミスをする。この結果どうなるかというと、レポート指導する側のやる気がどんどんと失われる。この結果、レポート指導を熱意を持って長時間続けることができない。短時間に同じ注意事項繰り替えさなければならない苦痛というのなかなかくるものがある。
レポート返却に費やすコストも結構高い。まず、一人一人に返却するのにも時間がかかる。また、ちゃんとレポート指導するならば、どこがダメだったのかを口頭で説明する必要がある。もし、口頭で説明しないならば、レポート自体にちゃんと学生がわかるように比較的丁寧に修正理由や考え方の間違いなどを書き込まないとならない(そして、この書き込みをするとレポート指導時間が非常に増える)。単に返却するだけでも1人0.5分かかるなら100人で50分、説明しながら返すとき1人3分かかるとすれば100人で300分かかる。
また、JABEEや情報公開法への対応のため、成績に関わる文書を保管しておかなければいけない学部・学科・コースがある。その場合、学生からレポートを回収しなければいけない。回収しないようにするためにはコピーをとらなければいけないが、コピーをとるのも量がおおければ、かなり大変な作業となる。
じゃあ、電子ファイルにすれば返却も回収も楽ちんじゃないかと考えるわけなのだけど、いかんせん、レポート指導は紙の方がやりやすいのが現在の状況。
レポートの目的が「レポートの書き方の習得」ではない
上述のようにレポート指導、返却、回収に費やすコストは学生の人数が多いときに無視できない。なので、レポートの目的が「レポートの書き方の習得」でないならば、レポート指導したくないと思うのは人情。
もし、レポートの目的が「レポートの書き方の習得」ならば、上述のレポート指導に必要なコストをどうにか工夫して減らし、レポート指導をしなければいけない。
どうやってレポート指導を実行すればよいのか?
基本的には量がすべてを決しているのでレポート指導対象の学生数を減らすのが素直な方法。レポート指導対象の学生数を減らすには、指導担当者を増やすか、学生を減らすしかない。
指導担当者を増やし、学生を減らす | ゼミ、研究室配属 | ||
指導担当者を増やす | 複数教員、TA、学生同士の指導 | ||
学生を減らす | 受講者人数制限 |
レポートの書き方の習得を目的とした授業であるならば、書式や日本語文法、用語の使い方、誤字・脱字の指摘レベルの指導を学生同士で行わせ、論理展開やテーマとの整合性、レポートの完成度の評価などはTAと教員が行うようにするのがベターだと思う。
おわりに
私の場合、ちゃんとレポート指導や論文指導をするならば同時期に10人が限界。20人になったら大まかな一言コメント。70人くらいまでは○△×の評価、それを越えたら総評しか無理。
なので、受講人数やレポートの性質を勘案した上で、どういうフィードバックがあるのかを評価して欲しいところ。