デザイン思考が世界を変える

良い本だったのでちゃんとしたエントリーにしようとしたら一か月も寝かしてしまったのでメモ。

この本はIDEOという会社を知っているか知っていないかで最初の印象が変わる。知っているならば初めから「すげー」と感心モード。知っていなければ「なんかしゃらくさいなぁ」「自慢タラタラだなぁ」とちょっと批判的見方になるかも。もちろん、私は後者。

この本で述べている「デザイン」とは単なる形や色を決めるものではなく、もっと大きくシステム(not 情報システム)を設計するもの。単なる「デザイナーがすげえんだぜ!」「デザイナー最強!」という話ではない。でも、最初の数十ページはそう思った。「いや、そんな能力なら博士号持っている人ならだれでも持ってますし!」と常に心の中で反論していた。後半にいくにつれて「あれ?これって単なるデザイナー最強自慢じゃない!?」という感じになり、最後は「問題発見こそが自分が訓練してきたものだ」と思う人にとっておすすめの本という印象になった。

この本でわたしが印象に残ったメッセージは以下のもの。

  1. 先入観や仮説を持たず、まずは問題発見をしようとしている環境に飛び込め
  2. 己の専門性をアンテナとし、己の専門性を信じて、その環境にないものを見つけ、人々が言わないことに耳を傾けろ
  3. 観察した結果から、問題を見つけろ
  4. 問題を解決するためのプロトタイプを作り、実験し、また、プロトタイプを作って実験しろ

特に「すごいなぁ」と思ったのは、まずは先入観や仮説を持たずに環境に飛び込み観察しろという話。この観察者として人文学の研究者が活躍している(しようとしている)というところ。

大半の人々は、訓練次第で腕の立つ鋭い観察者になることができるが、中にはこのプロセスのあらゆる段階を経験豊富な専門家に任せている企業もある。実際、現代のデザイン業界の大きな特徴のひとつは、学会以外で働くことを選んだ教養豊かな社会科学者たちが数多く存在しているということだ。第一次世界大戦後、経済学者がちらほらと政府に加わるようになり、第二次世界大戦が終わると、社会学者が少しずつ民間企業に参入するようになった。こういった人々は、以前の学会仲間からは常に憂慮の対象とみなされていた。しかし今日では、行動科学の独創的な研究が、デザイン思考を重視する企業の支援で行われている場合もある。
(pp. 61 - 62より)

なお、この本のタイトルにある「デザイン思考」については最後まで定義がない。なので、何がデザイン思考なのかはさっぱりわからないけれども、いろいろなエピソード紹介を通して、面白い話が読める。大学院に進学した人は分野問わずに読んでみて面白い本だと思う。