Togetter:「wikipedia.jaを充実させる2ヶ月間(仮)」賛同者募集のお知らせの修正追加版です。なお、この企画の良い名称募集中です。良い企画名がありましたら、このエントリーのコメント欄およびTwitterの@next49までよろしくお願いいたします。
追記(8月28日23:30)
@monodoiさんの
「WikipediaをAcademicな立場からもある程度のQualityあるものに充実させましょうョ!」企画、略してWAQWAQ(ワクワク)企画として推すつもりです。
が面白いので、本企画をTwitter上で議論する際のハッシュタグは #waqwaq とします。日本語版Wikipediaの質問や要望は #jawp をつけてつぶやいていただけると援助が得られると思います。
概要
10月3日のノーベル賞受賞者の発表から、12月10日のノーベル賞授賞式までのおよそ2ヶ月間に、研究者、専門家そして、その卵たちが学んだ専門知識をwikipedia日本語版を充実させることによって、社会還元する企画を開催したいと思います。
詳しい方法は検討中ですが大雑把に以下のようにするつもりです。
- 10月3日 0:00 から12月10日 23:59までの間に賛同者が個々の判断で充実させるべきWikipedia日本語版の記事を決め、充実させる
- 記事を充実させた場合はその旨を報告する(報告方法および報告場所はこれから検討します)
- 記事の充実は大まかに分けて以下の方法のどれかが考えられる
- 大学院生の企画参加者を対象に優秀新規記事を投票&表彰(5,000円相当の何かをプレゼント)
何でこの企画をやろうと思ったのか?
2009年に行われた事業仕分けをきっかけに、「科学コミュニティが一般社会から離れている」と多くの人が考えているという事実が明確になりました。また、先日の東日本大震災およびそれに続く福島第一原発事故において、科学および技術コミュニティに対する不審がより大きくなったように感じています。
一方、東日本大震災および福島第一原発事故に直面した人たちの中には、ネットを利用して情報収集を行い、自分や家族、知人の健康や財産を守ろうとする人も多くいました。そして、そのときに利用された情報の多くがネットに公開された科学者、技術者の論文、解説などでした。ネットの普及とその利用法の習熟により、科学文書・技術文書を非専門家の方々がダイレクトに利用できるようになり、実際に利用しているわけです。
しかし、非専門家の方々にとって、原著論文や他の専門家向けの解説文書を読むのは難しく、時間のかかることです。このため、仕事に忙しい社会人のみなさま、家事や育児に忙しい親御さんたち、高校までしか進学していない方々がほとんどである高齢者にとってはそのような文書を読むのは簡単なことではありません。
もし、非専門家の方々が最初に専門知識にたどりつくための簡単な解説および良質な資料へのリンクが存在するならば、ネットを利用して専門知識について学びたい方々にとって非常に役に立ちます。一方で、そのような簡単な解説および良質な資料の提供者が、大学院生、大学院修了者および専門家であるならば、科学・技術コミュニティは、専門知識を社会に還元する意図があり、かつ、実際にそれを行っていることを非専門家の方々にアピールできると考えられます。
自分の分野の常識をWebでアクセスできるようにしておくことというエントリーで書きましたが、そのような簡単な専門知識の解説および良質な資料へのリンクを個々人のブログや組織のWebサイトで公開しておいてもよいのですが、そのような情報は一箇所にまとめられていた方がその利便性が高まります。
Wikipedia日本語版は、この用途においてとても有用な候補の一つです。第一に中立的な組織が運営するサイトでありますし、第二に数年から十数年のスパンでそのサイトが存続することがきたいできます。
また、福島第一原発事故が示した事実は、科学や技術だけではこのようなトランス・サイエンスの問題は扱いきれないということでした。われわれには、自然科学およびその応用分野だけでなく人文学の知識も必要です。さらに我々の社会の場においては「伝統」「一般常識」を理由とした不合理に思える発言や振る舞いが多く見られます(たとえばこれ)。これらの「伝統」「一般常識」へのカウンター情報として、人文学の各分野における常識が、Web上で簡単にアクセスできるようになっていることはとても重要です。そして、このような人文学の各分野における常識を記載しておく場としても、Wikipedia日本語版は適切な場であると思われます。
どうして10月3日から12月10日までの期間にしたの?
Wikipediaの記事はどうやって書くのかを学ぶのに半日。記事の内容を考えるのに1日。実際に書くのに1日と考えると社会人のみなさまがこの企画に参加するには週末が二回(二週間)必要です。実際には仕事や近所付き合い、家族サービスやプライベートの用事などで忙しかったりすると余裕を持った方が良いと考えました。
そして、これから年末にかけて一番科学に関する興味が盛り上がる期間はどこかといえば、ノーベル賞発表から受賞までの間であると思います。毎日新聞の報道によれば2011年は10月3日から受賞者の発表が始まるそうです。そこで、10月3日から12月10日までのおよそ二ヶ月間を今回の企画の期間といたしました。
また、大学院修士課程2年生や博士課程3年生の方に参加していただくことを考えると、あまり12月以降にしてしまうと学位論文の締切と重なりうまくないというのも理由の一つです。
何をネタに書けばよいの?
Wikipedia日本語版の記事を充実させるために書いて欲しい内容は、分野外の人はあまり知らないけれども、あなたの(研究・専門)分野においては常識であることです。
福島第一原発事故の後、放射線量測定に対して多くの人が興味を持ち、実際に測定しようとしています。もし、測定者が大学や職場などで実験の設計方法を学んでいるならば「対照実験」の知識は常識中の常識として身につけているはずです。しかし、実験を設計したことがない人にとっては「対照実験」が絶対に必要であるということはさっぱりわからないと思います。他にも普段から放射線量を測定している人たちの常識は、新たに放射線量を測ろうとしている人たちにとって非常に有意義な情報となります。
- 参考:放射線量測定をしようと考えている方はまずは「怪しい伝説」を見よう中のガイガーカウンターミーティングへのリンク
また、なぜ「この程度の放射能汚染は安全」という学者が多いのかにあるように、最近、放射線の知識を促成で身につけた我々からすると信じられないような放射線医療の従事者の常識もあります。このような常識に賛成するかしないかは別として、この常識が存在することを知っているのはさまざまな判断の基準を増やす観点からとても有用なことです。
こんな風に書くと大学院修士課程の方は「えっ、常識と言われても」と思うかもしれませんが、自分が学んだ教科書を紹介するということだけでも、非専門家の方々にとってはとても役にたつ情報です。本があふれている現在において、その分野における定番の教科書や文献を紹介してあげるというのはとても重要です。また、同様にWeb上の定番サイトを紹介するのも重要です。
ですから、記事の充実は大きくわけて以下のものがあると思います。
- 新規記事の作成
- 日本語によるオリジナル版の作成
- 他国語版 Wikipediaからの翻訳
- 既存記事への加筆(他国語版 Wikipediaからの追加訳含む)
- 既存記事への参考文献の追加(自分の分野の標準教科書の追加)
- 既存記事への外部リンクの追加
- 既存記事における出典の追加および出典不明の指摘
「新規記事の作成」は、Wikipedia日本語版にはまだ存在しない、自分の分野における常識を記載するページを作ることです。方法は大きくわけて二つあり、ひとつは自分で記事を書くこと。もう一つは、既に良くまとめられている他国語版Wikipediaの該当記事を翻訳することです。学術記事においては英語版Wikipediaの内容が充実していますので、自分が書きたい内容とほぼ同じであるならば、翻訳するだけでも素晴らしい貢献になると思います。
「既存記事への加筆」は、既に存在する記事の足りない部分を加筆することです。間違っている部分を修正してもよいのですが、編集合戦になる可能性もありますので「ノート」の項目で間違っている可能性を指摘するだけにとどめておいたほうがよいと思います。他国語版の該当記事の部分訳を追加するのも良い貢献だと思います。
「既存記事への参考文献の追加」は、参考文献が偏っている、あるいは少ない場合に、自分の分野において標準的な教科書や専門書を紹介することです。日本語文献はもちろんのこと、英語文献も紹介してあげるととても親切だと思います。また、非専門家の方々がもう少し専門知識を学びたいと思ったときに、この参考文献の紹介はとても役にたつことと思います。
「既存記事への外部リンクの追加」は、外部リンクが偏っている、あるいは少ない場合に自分の分野において標準的、あるいは、より詳しい内容が書いてあるWebサイトを紹介することです。Web上には有用なサイトがたくさんありますが、非専門家にとって、どれが有用でどれが有害なのかの判別はつきづらいものです。また、本は入手に時間がかかりますから、目的によってはWebサイトの紹介の方が有意義なことがあります。
「既存記事における出典の追加および出典不明の指摘」は、Wikipediaの重要な方針である検証可能性を保持するために必要な出典情報を追加してあげること、また、出典が不明確なものを指摘してあげることです。Wikpediaは玉石混交といわれていますが、出典をつけることで、その記事に信頼度を向上させることができます。適切な出典情報の追加、あるいは、出典が不明確なものについての指摘も重要な専門知識の還元であるといえます。
「新規記事の作成」が一番労力が高く、以降「出典の追加および出典不明の指摘」につれて比較的労力が低くなっていきます。他にもフォーマットの修正や「てにをは」の修正などもありえますが、それは専門知識の還元という観点からは別の方に任せた方がよいことだと思います。
修士論文や博士論文を書く際には、必ず第一章にその分野の背景を書くと思います。Wikipediaに記述する内容は、背景のように既に確定した事柄が適していますので、論文を書く前に自分が調べた先行研究をまとめる場としてもWikipedia日本語版は役に立つと思います。
Wikipediaの記事を書く前に
この企画にご賛同いただける方は以下の記事作成の注意事項をお読みください。たぶん、全部に目を通すのに数時間かかると思います。
まずは、Wikipediaの基本方針について理解しましょう。
- Wikipedia:五本の柱
- Wikipedia:中立的な観点
- 基本的に事実のみを書いてください。意見を書く場合は、その意見への反論も併記しないといけません。特に疑似科学についての項の熟読が必要です。
- Wikipedia:検証可能性
- 検証可能性の項目については論文執筆訓練を受けた方にとって特に問題ないはずです。事実を裏付ける資料として使ってよいものの基準は学術論文の参考文献に使ってよいものと同等の基準です。
- Wikipedia:独自研究は載せない
Wikipedia:ウィキペディアは何ではないかは必読です。特に同記事内のウィキペディアはマニュアル、ガイドブック、教科書、学術雑誌ではありませんは、今回の企画において重要なポイントです。How to を書くことを目的とする場合は、マニュアル、ガイドブック、教科書とみなされる可能性があります。
Wikpediaに載せた文章、図、表などはすべて再利用可能になりますので著作権に注意する必要があります。
- Wikipedia:著作権
- Wikipedia:翻訳のガイドライン
- 他国語版Wikipediaの翻訳にも一定のルールがありますので翻訳を検討する方は必ず目を通してください
- Wikipedia:原典のコピーはしない
- Wikipedia:自著作物の持ち込み
実際の記事作成、編集の注意は以下をお読みください。
また、Wikipedia:自分自身の記事をつくらないからすると、自分が著者の発表済み査読論文や本をベースに記事を書かない方が無難なようです。今回の目的は、自分の分野における常識を書くことですので、あまりそういうことはないと思いますが気をつけてください。
以上の記事に一通り目を通したあとは、自分が書こうとしている記事と類似の秀逸な記事や良質な記事をざっと眺めて、どういうフォーマットでどういう風に書けばよいのかを確認してください。
実際に記事を書く際には
まず、アカウントを作成しましょう。今回の企画では誰がいつ編集したのかが重要ですのでぜひアカウントを作成してください。Web上でハンドルネームで活動している方はハンドルネームで、実名で活動している方は実名にちなんだ名前でアカウントを作成すると、記事充実に貢献したとアピールする際に誤解を招かず助かります。
また、どういう記事を書くかについては @whymさんの方針が役にたつと思います。
ご自身の専門分野で何かウィキペディアに記事を書いてみたいというときには、加筆依頼や 各分野のポータルなどを見ると求められている記事が分かります(これらが全てではありませんが)
(@whymさんのつぶやきより)
その他の事柄
現在検討中です。ご意見やご提案がございましたら本エントリーのコメント欄かTwitterの@next49までご教示ください。