いきなりネガティブなタイトルで恐縮ですが、よろしければ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
頂いたコメント
卒業研究・修士研究時の悪循環を防ごうに3.5年生さんから頂いたコメント(改行についてnext49が変更しました)。
はじめまして。卒論、鬱で検索していてここに辿りつきました某国立大学理系の新4年生です。エントリーを読んでいて「鬱症状を起こしやすい学生」に自分の性格が結構当てはまっていて、驚き半分納得しました。
実はいま、研究室のことで悩んでおり初期(だと思います)の鬱状態になっています。まだ正気は保っていますが。
4月から卒研のための研究室に配属されることになるのですがここ1カ月ほどで、自分とその指導教官の性格が合わないというか「卒論」に対する認識に隔たりがあるのではないかと感じるようになりました。
端的に云うと、教官はどうやら放任主義ないしは「学部生の卒論だし、研究の練習と思って適当にやっておこうね」という考えの持ち主であるようなのです。
もちろんそうした考え方もありだと思いますし卒論の考え方としては別に的外れな考えでもないと思います。問題は、そうした教官に指導された(はずの)旧4年生の卒論が「卒論」としての形にすらなっていなかったことなのです。私としてもあまり悪くは言いたくないのですが、ちょっとこれはどうなの? という卒論内容でした(実験をほとんどしてない、考察をしてない、何が分かったのか不明、テーマと無関係な作業をしてそれを卒論の「結果」として提示する etc)。
これではだめだ、自分から動かないと大変なことになると思い、積極的に教官の所へ行き、色々質問したりつっついたり独自のテーマを立ち上げて議論してみようとしてもなんだかぼんやりとした返答ばかり。卒研のスケジュールについても他の研究室に比べて随分とのんびりしているように感じ。さらに今後のスケジュールや予定を聞いてみても曖昧な返事しか返ってこず不安が募るばかりです。
実は教官の側も、就任されて日が浅いので、卒論の指導要領が掴めきれていないのかもしれません。あるいは学生のレベルが分からず、どの程度の難易度のテーマを示しどのタイミングでどの程度指導すればよいのか手探り状態なのかもしれません。
しかし教官の言動を側で見聞きし、質問を重ねていると、教官はどうやら「卒論」をあまり重要視していらっしゃらないように感じられるのです。もちろん過度に卒論を重んじ、自分の面子のためにいい結果を出せ、というような方は論外ですが、逆になあなあ過ぎるのも考えものだと思います。
少なくとも私は嫌です。
そこで色々してみたのですが、最近ではのれんに腕押し状態に疲れてしまい卒研のことを考えると吐き気がしたり無気力になったり、参考論文を読んでいると泣けてきたり、ただ座ってるだけなのに、血の気が引くような感覚がしています。
研究室を変えることも考え、実は前にも学生相談課の人や他の教官と相談の場を設けたのですが「彼もまだ慣れていないだろうから」ということで当面はいまの研究室でやっていくことになりました。ですが、どうしても教官への不信感と齟齬感が払拭されず、むしろ体の調子は日に日に悪化していっています。この旨を訴え、研究室を変えてくださるようお願いした方がいいのかな、とここ数日は考えています。
しかし研究室を変えるとなると、今度は別種の問題が頭の中に浮かび(どこが受け入れてくれるのか、そこで自分は何をするのか、受け入れ先と元いた研究室の関係が悪くなったりしないか、あまり騒ぐと今の教官が傷ついてしまうのではないか)躊躇してしまいます。加えて私は院進学を考えていたため(当然、いまの研究室でそのまま持ちあがるつもりでした)そのことも考えなおさねならず、もうどうしていいか分からない八方ふさがりの状態に陥っています。
自分の頑張りが足りないのかな、とは思います。もっと質問すればいいのかな、とも思います。でも何をどこまでどのように頑張ればいいのかが全く見えず、教官の反応も薄いままで
何だかあがくのに疲れてしまいました。もうどう動いても誰かに迷惑をかけたり困らせたりするくらいなら休学してしまうのも道かな、と考え始めています。ぐだぐだとやくたいもないことを書いて申し訳ありません。
上記コメントを読んだ際の私の理解
- 3.5年生さんは、理系の大学生であり卒業研究のために研究室に配属されている。
- 3.5年生さんは、博士前期課程(修士課程)への進学を考えている。
- 3.5年生さんが、研究室に配属されたのは2011年の2月〜3月である。
- 3.5年生さんは、ちゃんとした卒業研究を行いたい。
- 3.5年生さんは、今の状況に危機感を持ち、自分から行動を起こしている。
- 3.5年生さんが見るに、この研究室の先輩の卒業論文はまともなものとはいえない。
- 3.5年生さんが見るに、指導教員は「卒論」をあまり重要視していない。
- 3.5年生さんが受ける印象としては、指導教員は3.5年生さんの行動に反応を示していない。
- 3.5年生さんは、卒業研究のことを考えたり、卒業研究に関連することを行おうとすると肉体的、あるいは精神的に調子がよくなくなる。
- 3.5年生さんは、研究室の変更を視野に入れている。
- 3.5年生さんは、研究室の変更を行うことに不安を感じている。
以上のように理解しています。
やる気を持ち、行動を起こした自分を褒めよう!
まず、3.5年生さんの卒業研究への意欲と実際におこした行動に心から素晴らしいと言いたいです。
- 誰にも言われないのに、昨年度までの卒業論文に目を通した。
- 自分から指導教員とコンタクトをとり、研究を進めようとした。
- 自分で研究テーマを考えて、指導教員に提示した。
- 研究に関連する文献などを読んでいる(しかも、体調が悪いと自覚しているのに)。
また、状況がうまくないと感じてすぐに第三者(学生相談課の人や他の教官)に相談しにいったのも素晴らしいと思います。
ぜひ、やる気を持ち、行動を起こした自分を褒めて、自己肯定してあげてください。少なくとも私は3.5年生さんを素晴らしいと思います。
カウンセリングに行こう!
一方で、私は3.5年生さんの書き込みに若干の不安を覚えています。その不安は、「3.5年生さんが卒業研究を通して本当に得たいことを自分自身で把握しているのだろうか?」という点です。
既に3.5年生さんが自分で感じられているとおり、少し憂鬱な気分になっているようです。こういうときに、自分の内部を掘り下げるとネガティブなことしか思いつかなくなると聞きます。ぜひ、専門技術を持ったカウンセラーの助力を得ましょう。
ほとんどの大学では、保健センターや学生相談所にカウンセリング技術を持った教職員がいますので、ぜひ、予約をとってください。既に、学生相談課の人や他の教員の方に相談しているとのことですが、教務のことに関して詳しくてもカウンセリング技術を持っていない素人の可能性がありますから、カウンセリング技術を持った教職員に相談してください。
3.5年生さんが卒業研究への高い意欲と自主的な行動をとれるのは素晴らしいですが、私の感想としては、1か月でいろいろと行き詰ってしまうのは、ちょっと早いと思います。カウンセラーさんの力を借りて、どうして1か月強で、こんなに追い込まれてしまったのかちょっと考えてみてください。
卒業研究を通して得たいことは何ですか?
3.5年生さんのコメントを読んで私が不安に思ったのは、3.5年生さんが卒業研究を通して本当に得たいことを自分自身で把握しているのかという点です。卒業研究を通して得たいことが曖昧なのに「これではだめだ、自分から動かないと大変なことになる」と思う必要はありません。というのは、何が良くて、何が大変なことなのかは、卒業研究を通して得たいことから決まるはずだからです。
カウンセラーさんの助力を借りて、卒業研究を通して本当に得たいことは何かをはっきりさせましょう。
指導教員が頼りないのですが…
まずは、大学教員の言う事を聞くことは良いことなの?を読んでみてください。
少なくとも研究室を構えるならば、指導教員は講師以上だと思います。今の大学事情では、講師以上になるためには、それなりの業績が必要です。ですから、学生指導の経験を少なくとも、研究者としての能力は十分なはずです。また、少なくとも博士後期課程(博士課程)の間は、学生指導をしていたはずですから、安心してください。
3.5年生さんは、研究室の卒業生の卒業論文を読んでみて「私としてもあまり悪くは言いたくないのですが、ちょっとこれはどうなの? という卒論内容でした(実験をほとんどしてない、考察をしてない、何が分かったのか不明、テーマと無関係な作業をしてそれを卒論の『結果』として提示する etc)。」と思われたそうですが、これは必ずしも指導教員の指導不足を示すわけではありません(まあ、上を目指せばいくらでもキリがないわけですが)。
「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」ということわざを良く思い出してください。
また、そもそも、全力で取り組んでいたとしても、卒論生が書き上げることができたのがその程度の論文かもしれません。自分で書いてみるのと、他人が書いたものを読むのは難易度が違います。私の長くない卒論指導の経験からすると、卒論生にまともな技術文書を書かせるのはそんなに簡単な話ではありません。
指導の方針は人それぞれ
研究の分野やテーマによって、あるいは、指導教員の考え方や今まで指導教員自身が受けてきた教育によって、学生指導の方針ややり方は人それぞれです。研究関連の本やこのブログでいろいろと書いているとおり、ある程度は共通に行うべきことがありますが、それをどのように学生に提示するのかは、本当に指導教員の個性がでます。
ですから、放任主義気味であるからといって、3.5年生さんの指導教員がかならずしもやる気がなかったり、3.5年生さんを軽視しているわけではないと思います。
ですので、指導が合う合わないは個人差があります。人によっては適切な指導に感じていても、別の人にとっては耐えられないと思うこともあります。ですから、指導が合う合わないについては、自分にだけ、あるいは指導教員だけに原因を求めるのは生産的ではありません。
研究室を変わるのはまずいですか?
配属されて1か月しかたっていない、今の段階で、研究室を変えるのはオススメしません。さすがに指導教員としても良い気持ちはしないと思います。というか、意味がわからないと思います。教員にもよりますが、修士課程に進む際に研究室を変わるのは基本的には問題ありません。
大学院入試への願書を出す段階でも、研究室を変えたいと思うならば、防御的研究室生活の手引きを参考に、卒業研究ではメタ研究技術の習得を目的としたら良いと思います。
修士課程において研究室を変える場合は、こちらを参考にしてみてください。
では、何をどうしたら良いのか?
3.5年生さんが卒業研究に対して高い意欲を持っているのは良いことですが、まずは、目線を自分の手元に落とすことが重要だと思います。それの第一歩として、いつそれができるかを別として、カウンセラーの助力を借りて、3.5年生さんの今の状態をおよび希望を指導教員に伝えた方が良いと思います。
- 大学が提供するカウンセリングサービスに予約をする
- カウンセラーの助力を借りて「卒業研究を通して何を得たいのか」をはっきりさせる
- 自分が卒業研究を通して何を得たいことから考えて、今の指導方針や研究室の環境が耐えられるのか、そうでないのかを検討してみる
- 研究室を変えるならば
- 所属したい研究室を探す。必要に応じて訪問する
- 卒業研究はメタ研究技術習得を第一目標とする
- 研究のやり方に関する本を2〜3冊ほど読む
- カウンセラーの助力を借りて、指導教員に自分の今の状態および希望を伝える
おわりに
以上、お役に立てれば幸いです。