熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理

「熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理」
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はじめて、読んだリスク管理の本です。どこかのサイトで情報系ならこれを読むべきだと紹介されていたので気になっていた本です。

リスクを考えていろいろな物事を行っていくべきであるということは、なんとなく分かっていたのですが、具体的にどう行うのか?という点に関しては全く思いもつかなかったので非常に面白く読めました。

私は、ソフトウェア開発現場に所属したことがなく、自分で組んだプログラムも高々1万行程度ですので、実感としてリスク管理手法を理解することはできませんでしたがおおまかにはどうするべきかが分かったような気がします。

特に興味深かった内容は、「N(ナノパーセント)日を締め切りではなく、完成する可能性がある日にちの最初に持ってきなさい」と「リスクを回避、軽減、抑制、かわすの違い」「手のつけられないリスクについても考えるべきである」という3点です。(今理解できる部分についてですが)

N日とは、楽観的に考えて製品が完成する日付のことです。まあ、私を含めたリスク管理の素人が考える「製品完成日」のことです。これを完成日と考えるなという指摘は当然といえば当然ですが、やっぱりこの本のようにきっちりと言い切られると衝撃を受けます。

リスク回避、軽減、抑制、かわすの違いについては、きっちり定義してくれていることに驚きました。リスク回避とはリスクがあると思われるプロジェクトに手をつけないということ。リスクの軽減とはリスクが現実に起こったときに、その被害が最小限になるようにあらかじめ対策を施しておくこと。リスク抑制とは、リスクが現実のものとなり、被害を受けたときに必要となる費用をあらかじめ用意しておくこと。そして、リスクをかわすとは何も対策をせずリスクが起こらない事を祈ることです。

上記の分類と説明の中で、リスクの軽減に関しての説明に目から鱗が落ちました。
「リスク軽減を行うとき、必ずコストがかかる。」これも当たり前のことですが、言い切られるとあらためて考えさせられます。本中では「バラ色の未来が少しくすんだバラ色になる」と述べられていますが、やはり人情としてはバラ色は輝いていて欲しいですよね。リスク軽減には、リスクが起ころうと起こるまいとコストがかかるというのは肝に命じるべき言葉だと思いました。

手のつけられないリスクについても、リスクを認識すべきであるというのは思いもつかない考えでした。手がつけられないのであれば、考えるだけ無駄であるという私の持論が崩れてしまいました。「現場が手のつけられないリスクは、実は上の階層で対処すべきリスクである。」おっしゃるとおりですね。多くの場合は下っ端だから対処できないリスクであるわけで、上の方が対処してくださるのであればどうにかできるかもしれません。「儀式を行いリスクを上に手渡せ」名言です。「儀式を行い」のところに英知が結集されています。

私の現在の知識ですと、後半の実際のリスク管理については細かい点が理解できませんでした。特にインクリメンタルな開発という部分の説明はより知識を増やさないと理解できないでしょう。ぜひ、再読したいと思います。

この本は本文も面白いですが、付録の「信念の倫理」も非常に考えさせられるので面白いと思います。中学校や高校の道徳の時間は、この「信念の倫理」を読ませディスカッションさせればもう十分だと思います。メディアリテラシの基本的なスタンスについてもこいつを読めば万全であると思います。悪徳商法マニアックスをはじめとする悪徳商法マニアのみんさんであれば、この信念の倫理には深い共感と恐れを感じると思います。