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卒業論文・研究のためのアンケート依頼で留意して欲しいこと

卒業論文・研究のためのアンケートの依頼メールが届いたので思ったことをいくつかメモ。なお、私はアンケート調査を実施したことはありません。ですから、これは床屋談義です(まあ、このブログに書いてあることほとんどがそうですが)。

追記:やはりいろいろとおかしなことを私は主張していたようです。適切な参考文献の提示をしていただいています。

まとめ

イメージしてください。あなたに毎年20通のアンケート回答依頼が12月中旬にまとめて届きます。回答期限は年末ぐらいです。一つのアンケートに回答するのに10分から2時間ぐらいかかります。そして、回答しても、その後、何の音沙汰もありません。そして、次の年にもまたアンケート回答依頼が届きます。内容は昨年と、二年前と、三年前と…と同じです。しかも、依頼者が所属する大学・学部は昨年と、二年前と、三年前と…同じだったりします。あなたは、どう感じます?

次のことを忘れてはいけません。

  1. アンケートへの回答はコストがかかるということを忘れない
  2. 自分以外にもアンケートの依頼が届いている可能性を忘れない
  3. 依頼された側はあなたの依頼に答える義務はないということを忘れない
  4. あなたが卒業しようがしまいが他人にはどうでもよいことを忘れない
  5. 人間扱いされないのは誰だって悲しいということを忘れない

この不等式が成り立たないと回答してもらえません

  • あなたや所属研究室、所属大学への好意+若人を応援する心+社会貢献+興味 > 回答に費やされるコスト

大学教員のみなさまへ

  • 調査方法と注意点をちゃんと教育しましょう
  • 同一組織から同じような調査が毎年届くというのはあまりにもアレですから、せめて大学内では実施した調査の生データを共有できる仕組みをつくりましょう。

あなたが大変なのはわかります

厳しい就職活動が終わり(あるいはその合間をぬって)、始めての研究という体験。何をやってよいのかわからないし、誰に聞いたらよいのか、何を調べたらよいのかわからない。

お金があれば謝礼や調査人員の確保などなんでも解決できるけどそんなお金はない。そもそも生活費を稼ぐためにアルバイトをしなければいけない。じゃあ、時間を使えばよいのだけど、卒論提出の締切は迫っているし、精神状態をまともに保つために余暇の時間もある程度はとらないといけない。

時間はない、経験はないとないないづくしの中、教員からは「根拠はあるの?」「データはあるの?」と言われる。そのくせ、どうやって調査したらよいのかを丁寧には教えてくれない。

わかります。しんどいですよね。他人のことを思いやる余裕はないですよね。でも、だからこそ、いろいろと注意点を考慮した方が結果として、円滑な調査につながるんです。

あなたがしんどくて、誰かにそれをわかってほしいのと同じように、調査に協力する側もしんどいこと、うんざりしていることをわかって欲しいのです。

アンケートへの回答はコストがかかる

簡単に調べられることならばアンケート調査を行う必要はありません。個別に教えてもらいたいことがあるからこそアンケートに答えて欲しいわけです。まだ公開していないことに回答するには、それなりにコストが必要です。

  • 回答を考える時間コスト、人的コスト
  • 正確な回答、および、回答の妥当性を示すための証拠準備の時間コスト、人的コスト、金銭的コスト
  • 外部に情報を提供することに対する同意を得る時間コスト、人的コスト、金銭的コスト(組織ならば、上長の承認が必要な可能性があります。プライバシー保護との兼ね合いもあります)

本来の仕事にプラスして、利益を生み出さない事柄に時間を使ってもらうわけですから、これらのコストは純粋に回答者側の持ち出しです。あなたのアンケート回答依頼は、回答者に無駄なコストを使わせるお願いです。まずはそれを認識しなければいけません。なので、以下の関係が成り立たないかぎり、あなたの回答依頼は無視されます。

  • あなたや所属研究室、所属大学への好意+若人を応援する心+社会貢献+興味 > 回答に費やされるコスト

なので、回答してもらうためには、回答に費やされるコストを出きる限り下げて、その上であなたや所属研究室、所属大学への好意を損なわず(可能ならば増大させ)、若人を応援する心を萎えさせず、社会貢献の一環であるということを理解してもらう必要があります。さらには、その調査自体に興味をもたせる必要があります。

自分以外にもアンケートの依頼が届いている可能性

「回答時間は5分で十分だから負担じゃないよね」という考え方は、依頼者が1人であるときには正しいです。でも、依頼者が100人いたら?

とっても失礼な言い方で恐縮ですが、特に素晴らしいひらめきや着眼点を持っていないであろう普通の大学生であるあなたが思いつくような調査を年間何十人が思いつくでしょうか?そして、それに回答できる機関は日本(地域)にいくつあるでしょうか?

また、過去5年間で同じような調査を考えた大学生は何十人いるでしょうか?そして、それに回答できる機関は日本(地域)にいくつあるでしょうか?

あなたは、自分と同じような調査をしている人で、かつ、来年の3月に卒業したいと思っている人が何十人もいることに思いをはせるべきです。そして、過去数年間に同じような調査をした人も何十人もいるということに思いをはせるべきです。

ほとんどの事柄において、初体験は新鮮なので興味深いものです。一方で、どんなに面白いことでも短期間に繰り返されるとつまらなくなります。ですから、あなたが調べることや依頼する内容は、できる限り初めてであるべきです。下に行けば行くほど「またか…」という感じになります。

  1. その人や組織において初めての回答依頼である
  2. その人や組織において新しい事柄に関する初めての回答依頼である(今までの調査とは違う)
  3. 依頼者が属する組織からの初めての回答依頼である
  4. この卒業論文シーズンで初めての回答依頼である
  5. 過去5年間で依頼者が属する組織から何度目かの回答依頼であり、かつ、この卒業論文シーズンにおいても何度目かの回答依頼である。

よって、次の努力をしたほうが無難だと思います。

  • 自分が調査したいことについてすでに調査済みでないかを調べる
    • 特に自分の所属コース・学科・学部・大学において、同じ組織に同じような調査依頼をしていないかを調べること
  • 災害やトラブルなどで疲弊している相手に対しては調査を自粛する(たとえば、東日本大震災被災者、自治体、企業は、回答依頼が届きすぎ、調査疲れしていることが指摘されている)
  • 似ているような調査なのに新たに回答依頼をする場合は、以前の調査をふまえていることをちゃんと説明する
  • 他のライバルたちが回答依頼を送るよりも早い時期に回答依頼を送る

依頼された側はあなたの依頼に答える義務はない

すでに述べていることと被りますが、とても重要ですのでもう一度確認を。

回答依頼はあくまでもあなたの「お願い」であり、相手の好意にすがるしかありません。相手の好意を削がないためにも、信頼できる人間であることを示し、相手の事情を配慮しましょう。

  • コストが高い依頼方法であるほど、「これほどのコストを払うくらい真剣である」という印象を与えることができます。
    • 訪問して依頼(もちろんアポイントはとる)> (アポイント)お手紙・FAX・メール+(依頼)電話 > いきなり電話 > メールのみ
  • 情報開示していればしているほど、いざというときに責任をとるという印象を与えることができます
    • 氏名、所属(大学、学部、学科・コース)、所属研究室、指導教員名、調査目的、調査内容
  • 相手の回答コストを下げるように努力すればするほど、真剣であるという印象を与えることができます
  • 相手から情報を取得するだけでなく、相手にとって役立つ情報が提供できると、回答コストの重みが減ります(回答者側にとって収支が若干改善します)

あなたが卒業しようがしまいが他人にはどうでもよい

あなたのおかれている状況を説明して、共感や同情を得るというのは良い方法ですが、それをやり過ぎると居直り(脅迫)に感じられます。基本的に卒業したいのは、あなたであって、回答者ではありません。調査が不十分で卒業できないとしたら、十分な調査を実施できなかったあなたが悪いのであって、回答しなかった人が悪いのではありません。

回答してもらえなかった相手に対しても、あなたと同じようにいろいろな事情があるということを理解しましょう。回答しなかったことを非難するのは筋違いです(それが3分で回答可能なことだとしてもです)。

人間扱いされないのは誰だって悲しい

リンク. Geekなぺーじ:「教えて君」からの質問でも書いたのですが、一方的に情報をむしりとられるのは誰もが嫌なものです。メールで簡単に依頼できるようになりましたが、メールを読むのは人間です。Googleなどのソフトウェアではありません。与えてもらったら、ちゃんと与えましょう。

お金のない大学生が謝礼として渡せるのは調査結果のみです。調査前に指導教員から調査結果のフィードバックの許可をもらった上で、調査を行い、調査後は調査結果をフィードバックしましょう。また、同組織内ではその調査の生データ(機微情報はもちろん省くこと)を公開し、今後、卒論生が利用できるようにしましょう。

大学教員のみなさまへ

分野外の私が言うのも何ですが、アンケート調査(インタビュー含む)を卒論生にやらせる前にはちゃんと講習をいたしましょう。めぐりめぐって、所属大学、研究分野、さらには大学全体、研究者全般への不信感が醸成されてしまう可能性があります。

そして、同一組織から同じような調査が毎年届くというのはあまりにもアレですから、せめて大学内では実施した調査の生データを共有できる仕組みをつくりましょう。