自分は正常性バイアスにとらわれていたか?で書いたとおり、正常性バイアスおよび今回の事態を小さなものに見積もりたい意識があるせいだと思うけれども、長崎大学の山下さんや東大放射線科の中川さんへの風当たりが非常に強くなっている理由が良くわからない。
たとえば、産経新聞:「人体への影響100ミリシーベルトが目安」「喫煙や飲酒のほうが心配」 東大放射線科・中川恵一准教授に対するコメント(Twitter+はてなブックマーク)Ceron.jpを見ると非常にきつい反応。でも、書いてあることは100ミリシーベルト以下の被曝に対してどれだけのリスクがあるのかの説明。
これが批判される理由は、 低線量被ばくの人体への影響について:近藤誠・慶応大にあるとおり、山下さん、中川さんのリスク見積もりが甘いから?
あるいは、人より〜が得意であるということを理由として、それが不得意な人の要求に応じる義務はないで抜き出した欠如モデルの観点でみるならば、中川さんが「心配する必要はない」と判断を下してしまっているのが問題かもしれない。
それとも、自分に非がないのにリスクが増えたことを「気にするな」といわれているように感じて、それに対して「ふざけるな」ということだろうか。
山下さん、中川さんの見積もりが甘いとして、厳しい基準で考えるとどのぐらいのリスクになるのか?今中哲二:低線量放射線被曝とその発ガンリスク(PDF)と低線量被ばくの人体への影響について:近藤誠・慶応大によれば、1sVあたりの過剰相対リスクは0.97とのこと。しきいなし線形モデル(放射線量の値に比例して過剰相対リスクが増減する)で考えると、
放射線量 | 過剰相対リスク | ||
1Sv=1000mSv | 0.97 | ||
100mSv | 0.097 | ||
10mSv | 0.0097 | ||
1mSv | 0.00097 |
長崎大学:「放射線医療科学」e-Learning_用語解説によれば、過剰相対リスクは相対リスクから1引いたものらしいので、国立がんセンター:がん相対リスクに上記の値を対応してみる。全く体に悪いことをしない集団のがんによる死亡率を1として、それの何倍がんによる死亡率が増えるかが相対リスク。※飲酒については、エタノール換算量を示す。
相対リスク | 1Svあたり0.97 | 1Svあたり0.5 | 他の要因の相対リスク | ||||||
1.50〜2.49 | 1Sv (1.97) | 1000-2000mSv (1.8) | 喫煙者(1.6), 大量飲酒(450g以上/週)※(1.6) | ||||||
1.30〜1.49 | 500mSv (1.48) | 500-1000mSv(1.4) | 大量飲酒(300-449g/週)※(1.4) | ||||||
1.10〜1.29 | 100mSv (1.097) | 200-500mSv (1.19) | 肥満(BMI≧30)(1.22), やせ(BMI<19)(1.29) 運動不足(1.15-1.19), 高塩分食品(1.11-1.15) | ||||||
1.01-1.09 | 100mSv (1.097) | 100-200mSv (1.08) | 野菜不足(1.06) , 受動喫煙<非喫煙女性> (1.02-1.03) |
何かあんまり変わらないなぁ。しきいなし線形モデルの考え方がおかしいのかな?