非常に勉強になった。
- 本音で訊く!マイナンバーの深層&真相&新相
マイナンバーと個人番号カードと公的個人認証
個人番号カード(マイナンバーカード)の機能
受け取った個人番号カードの裏には、個人番号が明記され、そのほかICチップが内蔵されています。そこに「署名用」と「利用者証明用」という2つの電子証明書の機能が付与されています。前者の署名用は、基本4情報(氏名、住所、性別、生年月日)が含まれており、本人確認の手続きを電子証明として代用できるものです。一方、利用者証明用の電子証明書には基本4情報は含まれていませんが、公的個人認証として利用し、マイナポータルへのログインや、各種サービスが受けられるようになります。政府では、後者の電子署名は、その検証者を拡大する方向で検討が進められています。
((2)中小規模事業者の具体的な対応策より)
インターネット上の自分用ポータル(マイナポータル)を使う際には、マイナンバーでなく、個人番号カードの公的個人認証を使うとのこと。
坂下:そうですね。マイナンバー制度のセキュリティの問題で誤解されているのが、マイナンバーが地方自治体や国の情報連携ネットワークにそのまま流れてしまうというものです。確かに自治体の窓口では行政手続きのためにマイナンバーを受け取りますが、機関間の連携ではマイナンバーは飛ばず、機関別符合(暗号)でやり取りされます。また、そのネットワークもLGWAN( Local Government WAN:地方自治体をつなぐ広域ネットワーク)というクローズド環境のネットワークでやり取りが行われます。
ですからネットワーク上での情報漏えいの可能性はかなり低いといえるでしょう。国民は個人番号カードの公的個人認証により、自身のポータルサイト(マイナポータル)にログインし、機関別符号で集約された自分の個人情報を閲覧できるようになります。マイナポータルは現在構築中で、2017年1月からの運用が予定されています。
このマイナポータルの利活用として考えられるのは、オンラインで、転職時に電子化された資格証明を入手して企業側に送ったり、採用時の転入・転出、ガス・電気・水道の解約・加入などの手続きを一括で行うことが可能になることでしょう。またマイナンバー制度では医療費も把握できるようになると言われていますので、自動計算による医療費控除も可能になるでしょう。
((1)中小規模事業者が知っておくべきことより)
セキュリティに関する懸念について
向井:誤解されているのが、マイナンバー制度そのものと、それに付随するカードや公的個人認証の話が混同して語られていることです。マイナンバーそのものは、公的な番号なので、端的には役所に対する書類関係のみで使うものです。中小企業や個人事業主は、税・社会保障関連、たとえば源泉徴収や社会保険など従来の書類にマイナンバーを加えて提出することになります。一方、行政側はマイナンバーで手続きの効率化が行えます。国民は申請手続きの利便性を享受できます。これがマイナンバー制度そのものの話です。
一方で、利活用の話はマイナンバーカードに付随する「公的個人認証」を民間に公開することから派生するものです。これにより民間企業は、インターネットで個人認証などが行えるようになります。企業側の論理は、マイナンバーカードが普及するならば、公的個人認証を使ったサービスを広げていきたいという話です。現実に利用するのは大企業でしょうが、たとえばコンビニ業界や関連の中小企業にも活用範囲が広がるかもしれません。
((3)番号制度担当室長が語る本音!より)
個人はどのくらいの感覚でマイナンバーをとらえればよいか
林:少し違うかもしれませんが、クレジット番号みたいなものと考えればよいですか?
向井:クレジットカードというよりも、キャッシュカードに近いイメージです。ただし、マイナンバーカードにはICチップも入っているため、キャッシュカードより偽造リスクは少ないはずです。そういう意味ではマイナンバーは「口座番号」に近いかもしれません。
((4)番号制度の誤解と本質的な狙いより)
事業者にとっての注意点
事業者の対策の中で、一番大事な点は「特定個人情報等の取扱状況が分かる記録を保存する」ことです。個人番号の「取得」「利用」「保存」「提供」「削除」というプロセスにおいて、システムログや、紙でもよいので、しっかりと記録しておくことが必要です。パートやアルバイトが頻繁に入れ替わる職場の場合は、業務フローをつくることで、誰がやってもきちんと取り扱える仕組みづくりが必要でしょう。また、「特定個人情報等の定期的に点検を行う」ことも大切です。なお、本人確認した上で取得したマイナンバーや、それを記載した帳票類は、数名程度で多くない場合は、カギのついた場所に保管すれば十分だと考えています。
さらに、気を付けないといけない点は、「特定個人情報等を削除・廃棄したことを、責任ある立場の者が確認する」という点です。基本的に帳票類は7年間の保管(申告書等の場合)が義務付けられていますから、その期限が過ぎたら、速やかにマイナンバーが記載された書類を削除・廃棄し、それを記録する必要があります。このあたりが、中小企業にとって最低限知っておくべきことです。
直近でマイナンバーを記載すべき書類は「平成28年度分給与所得者扶養控除(異動)申告書」
坂下:多くの企業で、一番最初に個人番号を記載しなければいけないのは、「平成28年度分給与所得者扶養控除(異動)申告書」ではないかと思います。これは平成28年最初の給与支給の前日までに提出しなければならないものです。そのため多くの企業では年内に用意しておいたほうがよいでしょう。その他の書類については、必要に応じて記載していくことになります。
((2)中小規模事業者の具体的な対応策より)
その他来年の1月に気をつけるべき書類
向井:端的に申しますと、税と社会保険(保障)の分野で、役所に提出する書類関係にマイナンバーを振っていただくということが原則ですね。これまで自分がどういう書類を出してきたのかを確認してもらうことから始めればよいでしょう。マイナンバーによって増える書類は一切ありませんから、去年まで出していた書類を引き続き今年も出してもらえれば大丈夫です。ただし年金や医療関係は一年遅れになります。個人営業の場合は、従業員の源泉徴収(平成28年から)と自分の確定申告書(平成29年から)、国民健康保険の申請(これまで加入している場合は提出する書類はほとんどない)の手続きが必要です。
林:源泉徴収については来年度なので、従業員に関しては来年12月頃まで用意できればよいわけですね。いま中小企業が恐れ戦いているのは、来年1月に何をしなければいけないのか、ということです。
向井:アルバイトを雇ったり、講演や原稿を頼んだりして源泉徴収が発生する場合など、一発モノのときが処理しなければいけない典型例ですね。それ以外はありません。
林:中小企業では、雇用契約書を新規につくって、それがすぐに終わるケース……。
向井:いえ、新規雇用の場合は関係ありません。ただし、雇用が終わるケースでは考えなければなりません。通常であれば来年(2016年)3月に従業員が辞めるため、その際に大量の処理が発生するでしょう。企業側で雇用保険を支払っている場合も入社段階で資格が発生するため、申請書を出す必要があります。雇用保険だけは平成28年1月からになります。厚生年金や健康保険は平成29年1月からですね。
((3)番号制度担当室長が語る本音!より)
個人営業主などの小企業はどのくらいの管理コストにどれくらいかければ良いのかの話
林:こういう表現が適切か分かりませんが、従業員の個人情報は印鑑やお金の話だと思って意識してもらったほうがよいですね。
向井:おっしゃるとおりです。マイナンバーはお金に直接結びつくものではありませんが、従業員の給料は他人に見えないようにするのは当たり前。従業員に分からないものが、外から侵入したものに分かるわけはありません。したがって印鑑やお金と同じレベルで管理すれなよいのでは? という説明をさせてもらっています。
林:経理担当は従業員の個人情報を扱うため、少し教育しなければいけませんが、そういう体制に組み込めばよいと……。
向井:特定個人情報は管理者を決めて管理する必要があります。経営者ご本人が担当していれば、自分が担当だと言えばよいだけです。規定集のひな形も出ているので、適宜参照していただくことになりますね。