心配していることはどちらも一緒なのだから対立しないようにしてほしいところ

嫁は息子を法学部へ進ませたいらしい。
理由は「就職に有利だから」だ。
私は腸が煮えくり返るような思いがした。
彼女は大学を就職予備校だと思っている。そして我が子に『一番良いルート』を勧めている。
放任とまではいかないが、普段私は息子にうるさくあれこれ指図したりはしない。
しかしこの一件については明確に自分の考えを伝えた。

学問はそれ自体に価値がある。

就職するための手段でもなければ、モラトリアムを頂戴するための口実でもない。
仕事のことは考えるな。学びたい智慧を修めろ。
息子がスリランカ史を大学院まで勉強しても構わない。
卒業後ポスドクにさえなれず、ゴミ収集員になっても構わない。
どんな職に就いても、あるいは就けなくても、私は息子のことを誇りに思う。
子に対する親の愛情ゆえではない。学問に対するリスペクトだ。どんな専門領域でも、私は学のある人間に敬意を表する。

立派な考えだと思うのだけど、経済的に大丈夫ならば、もっとカジュアルに「〜っておもしろそうだな」という軽い気持ちの進路選択を認めてあげてよいように思う。「就職 vs 学問探求」という二項対立にしてしまうと、子供の将来を心配されている奥様も「なんで、そんな悪の権化みたいな扱いなの?」と思うだろうし、息子さんも「そんなに覚悟突きつけられても」と感じると思う。

正直、大学の「学部」で身につけるべきは「学ぶ姿勢」と「学ぶ技術」が一番重要で、専門知識は姿勢と技術を学ぶための方便&研究を始める前の準備体操だと思うので、ある程度能動的に興味を持って取り組める(「あれって何だろう?」と思える。思った際に自分で調べるのが苦にならない)ならば、どこの分野進んでも良いと思う。

法学部行った人がみんな弁護士や法務につとめるわけでないし、経済学部行った人がみんな経理になるわけじゃない。奥様の心配を受けとめて、かつ、息子さんを支えるという覚悟に基づき、息子さんの視野を常に広く保つようにいろいろお手伝いするのがよいのではないかなと思う。具体的には、コンピュータとネット環境を用意して、情報発信と情報収集の練習させとくのがよいかなと。あと、ご自身の分野の展示会とかに息子さんと奥さん誘ってみるのも良いと思う。あと、この本をぜひ、プレゼンとしてあげて欲しい。ある分野で学んだことを別の分野に進んだときに無駄にしないためのヒントとなると思う。