指導教員や先輩の助言にしたがい、たくさんの作業をやっているのに、結局何も仕上がっていない or 研究が進んでいる気がしないというとき、指導教員や先輩が無能な可能性もありますが、一方で、あなたが指導や助言を体系化できていない可能性もあります。
当座の研究目的あるいは研究の最終目的を達成するという観点から、もらった指導や助言は、目的の達成するための道筋のどこに位置するのかを整理(文章化 & 図示)してみましょう。無駄仕事だったと思っていたことが、次の作業への準備になっているかもしれません。少なくとも、無駄仕事だと思っていたことの作業経験や成果の一部が別の作業に再利用できるかもしれません。
指導教員や先輩が無駄仕事製造マシンに思える背景
- 真面目にやっているならば、自分の研究の課題や進捗状況、直面しているトラブルについてもっともよく理解しているのは、研究を行っているあなた
- 指導教員や先輩がいくら研究経験豊富であったとしても、あなたほど、研究についての今の状況を理解していない
- 一方で、指導教員や先輩があなたに対して優位な点は、俯瞰的視野をもっていること
- 指導教員や先輩は、あなたの研究の目的とあなたから得た情報に基づき、指導や助言を行う
- あなたにとっては自明な背景や現在の状況は、指導教員や先輩にとってはかくされた情報
- このため、多くの場合、指導や助言は、俯瞰的にみて役立つのだけど、即効性がないものであることも多い
- 目的を達成するためには不可欠であるが、現在の状況や状態からすると数段階先の話
- 目的を達成するためには不可欠であるが、目先の目的(マイルストーン)達成には不適合
- 現在の問題を解決するための原理・原則であり、現実への適用には具体化が必要
- 現在の問題を解決するための別解であり、今、取り組んでいる解法に役立つものでない
- あなたにとってみれば、言われたとおり助言・指導に従ったのに、現在の問題や目先の目的が達成できないことが連続する
- 一方、指導教員や先輩からすれば、研究の目的達成のために良い指導や助言をしたのに、どれもこれも中途半端にやりっぱなしで、研究も進んでおらずガッカリ
- 「口ではハイハイ言うのに実際に作業しない」 vs 「お前の指導や助言は私の仕事を増やしているだけだ」
どのように整理するのか
基本は可視化です。
目的、当座の目的(マイルストーン)、これまでの作業、作業の生成物・成果(作業の結果、新たに得た疑問や質問も含む)、指導・助言をグラフの節点とし、節点に So, What?(だから、何なのか?)、Why, so?(なぜ、そうなのか?)という疑問を投げかけて、その答えに当たるもの同士を辺や弧(矢印)で結びます。Mindmapなどを書くツール(FreeMindなど)を使うと書きやすいと思います。
新たな節点を生み出す質問として、以下のものも役にたつと思う。以下、質問テンプレートより転載。
行為に関して洞察したいとき(特に評価やテストなど)
- 「〜というのはいったい何をどうすることなの?」
- 「何がどうなったら、〜ができたといえるの?」
- 「何がどうなったら、〜は失敗したといえるの?」
- 「〜を終えるための手順は何?一番最初に行うことは?」
- 「その行為を行う理由は何?」
- 「その行為以外に目的を達成できることはないの?」
- 「その行為を始めるには何が必要?その行為によって何を得られる?」
- 「その行為における大前提は何?」
- 「その行為は誰がどういう状況のときに行うの?」
研究の基礎を固める場合
- 「何が問題?」
- 「その問題はどうして解決しないといけないの?」
- 「その問題について現状はどうなっているの?」
- 「その問題が発生する根本原因は何?」
- 「あなたの解決方法は、どうして有効なの?」
- 「他に解決方法はないの?」
- 「他の解決方法に比べたあなたの解決方法は何が良いの?」
- 「その解決方法を詳しく説明すると、何を何のためにどうすることなの?」
- 「研究の目的は何?」
- 「何がどうなったら、その目的を達成できたと言えるの?(目標は何?)
- 「いつまでにどこまで行うの?」
- 「目的を達成するためにやらなければいけない仕事は何?」
- 「もう一段仕事を分割するとどうなる?」
- 「もう一回だけ仕事を分割するとどうなる?」
- (仕事が「〜のためのアルゴリズムを構築する」だった場合)「『〜のためのアルゴリズムを構築する』ためにはまず何をやれば良いの?」
- (何がわからないのかわからないとき)「どこまでがわかる?」
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おわりに
体系化してみた結果、やっぱり「お前の指導や助言は私の仕事を増やしているだけだ」と思えるならば、相手を怒らせない程度に指導や助言を流せば良いです。