National Information Exchange Model

クラウド」そのものではないが、省庁間「組織横断・情報共有」ために、DHS(国家安全保障省)のNIEM(National Information Exchange Model)が情報交換基盤として寄与しており、連邦クラウド・コンピューティングを推進する手段となっている。NIEM により、財務活動報告の週単位提出、資金供与通知、受領報告提出の透明性が向上したと言っている。「Rcovery.gov」のための情報交換にも寄与している(DHS:Donna Roy、Anthony Hoang)。

災害時や緊急時に適切な対応方針や方策を判断するには、各機関における素早い情報共有や情報交換が必要となる。しかし、各機関の独自の情報システムや専門用語等のため、必要な情報を他機関から得るには数々の調整や書類のやり取りが必要であった。こうした作業の非効率性ひいては経費の無駄を省くために、機関間の情報に関する“橋”の構築が必要となった。

DOJ(司法省)が、法令管理などで基礎となるプログラムを開発し、その部署がDHS に統合され、上記のような問題を解決し、情報交換の標準を定義するものとして、2005 年に米国司法省と国土安全保障省の協同によりThe National Information Exchange Model(NIEM)として設計された。NIEM は政府の各機関の情報システムや設備の橋渡しを行い、情報の共有を図ることを目的に考案された。2007 年にはNIEM の第2 版が公開された。NIEM は今
や、ニューヨーク、フロリダ、ミネソタ、テキサス等の州政府や各連邦政府機関で利用されている。また、海外でも入管手続きをなどで、100 ケ国以上で利用されている。日本の入管手続きでも利用されている。

DHS では、機密性の高い情報を各機関(Recovery.Gov など)や部門で効率的共有できる仕組みとして、“DHS ISE(Information Sharing Environment)”と呼ばれる基盤を構築した。中核となる情報交換のためのXML スキーマセットがNIEM(National Information Exchange Model)である。

NIEM によるデータ交換標準はグローバルな法務情報の共有化を皮切りに実装に成功し、GJXDM(Global Justice XML Data Model を拡張することによって、安全保障、緊急時、および災害対応機関や国土安全保障関連に関わる官庁や企業間横断的な情報共有を促進した。情報共有の基盤としてNIEM は以下のような役割を果たしている。

  • 各関係者の専門領域間で緊急事態時に共有が必要な情報項目を決める。
  • 共通語彙およびオンラインの情報共有をサポートするための情報交換用のパッケージ文書のオンライン・レポジトリーを開発するための標準
  • データ検索や普及支援、ドキュメントの交換・共有・再利用のための技術的なツールの提供
  • 企業向けの情報交換・共有のための技術支援や訓練や実装のためのサポートサービスの提供

NIEM は、すでに6,000 を超えるスキーマセット(モデルと呼んでいる)を抱えている。その目的は部門間の情報交換にあり、EA におけるESB(エンタープライズ・サービス・バス)である「DHS OneNet」の主要技術となっている。

「Recovery.gov」における組織横断の情報交換で、XML をカストマイズする場合と、NIEM利用の場合を比較したコスト比較が示されている。100 事例で情報交換用のコンテナ(IEPD)を再利用することで、72%のコスト削減になったとしている。
(1.5.7. NIEM(National Information Exchange Model), pp 115-117より)

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