岡本真:世界と日本におけるGov 2.0の現在

「リンクするデータ、リンクするサービス」の続き。

2番目は、Academic Resource Guideの岡本さんの講演。

Gov 2.0という概念と現状どういう取り組みがあるのかについての紹介だった。Gov 2.0の発端はオライリーの方のティムの文書より。

私も多分読んだと思うのだけど、「電子政府でしょ?Web 2.0がはやったから味をしめちゃったのね」ぐらいにしか思っていなかった。でも、今日の講演を聞いた限り、単なる電子政府の話とはどうやら違う様子。

そもそも論でいうと、Governmentは「政府」という言葉と一対一対応しないらしい。辞書の訳語だと統治という言葉が第一義にくるとのこと。なので、Gov 2.0は単なる電子政府ではないらしい。

岡本さんのまとめによると、Gov 2.0の要素は以下の3つ

  1. 透明性(Transparency)
  2. 参加(Participation)
  3. 協同(Collaboration)

そして、透明性がある程度高まった段階で、参加・協同が進むとのこと。

オバマ大統領になってから、アメリカでもGov2.0が盛り上がってきたが、オバマ大統領は、イギリスのブラウン政権の取り組みを参考にしているとのこと。ブラウン政権では、データの公開による透明性向上の取り組みや、公開したデータを用いてより良い政策実施方法の提案を求める取り組みを行っていたとのこと。WWWの方のティムは、このブラウン政権の政策に関係していたとのこと。

現在、アメリカではGov 2.0やOpen Governmentとして、動きが本格化しているとのこと。Gov 2.0 Summit, Gov 2.0 Expo(それぞれ2009、2010と開催)にワシントンの政府高官を招待しているらしい。

岡本さん曰く、Gov 2.0 SummitやExpoのスポンサーがシリコンバレー系の会社であるので、ある程度はGov 2.0への移行にともなうWeb業界の振興を目的にしていると思われるとのこと。

一方、日本ではそれほど動きがなく胎動が感じられる程度。

今回の講演でTwitterに流れている「レファ協」というキーワードが何を指し示しているのかがわかった。

海外でのGov 2.0の事例で面白かったのは、Challenge.gov 。このサービスは、行政版クラウドソーシング。クラウドソーシングのプログラム開発だと
TopCoderというのが有名らしい。

クラウドソーシング」とは、インターネットを通じて不特定多数の人々に業務をアウトソーシングすることだ。
(海外ソーシャルウェブに学ぶ成功の秘訣:いくつご存知ですか?海外のクラウドソーシング事例をまとめてみました

行政側が課題を提示し、それを解決できる能力を持っている人に解決法を提示してもらう仕組み。

行政において優秀な人材を雇用し、難問に取り組ませるというのも良いのだけれども、社会は変化し、日々新しい問題が生じている。営利企業ならば不採算事業はすぐに切って、採算がとれる事業に注力できるけれども、行政は不採算事業だけを扱うのが基本なので、従来の事業をいきなりきることはできず、慢性的に人材不足になる。

なので、このようなクラウドソーシングの仕組みは必要不可欠であると思う。また、このような仕組みは、行政からの委託業務よりも、民間シンクタンクの形成や博士号取得者の活用に有用だと思う。

岡本さんのGov 2.0の事例紹介サイト

第5条 議会は、町民自治を基礎とする町民の代表機関であることを常に自覚し、公開性、公正性、透明性、信頼性を重んじた町民に開かれた議会、町民参加を不断に推進する議会を目指して活動する。
2 議会は、議会が、議員、町長、町民等の交流と自由な討論の広場であるとの認識に立つて、前項の規定を実現するため、この条例に規定するもののほか、別に定める会議条例等の内容を継続的に見直す。
3 議会は、委員外議員の制限規定を廃止し、多様な討議を展開して委員外議員を含めた委員会活動の充実強化を図る。
4 議会は、ホームページを利用して、会議の議案・調査資料等を事前に情報提供する。
5 議長は、町民が議会の審議内容をわかりやすく傍聴できるよう、傍聴者に議案の審議に用いる資料等を提供し、傍聴者の意見を聴く機会を設けるなど、町民の傍聴意欲を高める議会運営をする。
6 議会は、会議を定刻に開催するものとし、会議を休憩する場合には、その理由・再開の時刻を傍聴者に説明する。
7 傍聴に関し必要な事項は、福島町議会への参画を奨励する規則(平成21年議会規則第1号)で定める。

講演の最後に岡本さんが、行政が持っているデータを公開したり、役に立つサービスに利用するさいの敷居として以下を挙げていた。

  1. 特定サービスの依存回避。横浜市統計GISはYahooやGoogleと連携しているという点で快挙だったらしい。
  2. 広告掲載サービスへの忌避。行政がUstreamを使わない理由の一つがこれらしい。
  3. 入札参加資格による調達方式の伝統。クラウドソーシングへの妨げの一つ。

その他、個人情報やプライヴァシー、著作権などに関わる法律の改正も必要であるとのことだった。

検索して見つけたサイト

武田英明:日本におけるLinked Dataの課題とその解決への試みへ続く。