所属をどう感じるか?

渋滞の論文はよくも悪くも(^^;)いろいろ話題になっているようで、ありがたいことです。
ひとつわかったのは、この研究のような研究組織はなかなか理解してもらえないということです。「組織」っていうより、単なる「集団」で、単に集まって一緒にやってるだけなんですけどね。今のところ、研究資金で結びついてるわけでもないんで。

〜中略〜

研究グループそのものが理解しづらいらしい、ということはわかりました。だからどうだということではないですが。理論物理なんかにはこんなやりかたはいくらでもありそうなんだけど。
とにかく強調しておきたいのは、これは阪大の研究だとか名大の研究だとか、そういうものではないということ。うーん、組織に属さない研究、なんです
kikulog:研究組織より)

上記に対するコメント

いしやま ― March 6, 2008 @17:46:32
「組織」に対するセンスって、企業と大学とで違いますからねえ。ちょっと表現が微妙になるかもしれませんが、その辺の話を書いてみます。
大学の先生ってのは、一人一人が自営の社長さんのようなもので、それぞれ個人が人格を持ち、意思決定を行う。所属する組織(大学)名は、社長さんの事務所がある住所地名といった程度の意味しかない。大学の先生たちが集まってする仕事は、企業で言えばJVみたいなものですよね。
けど、企業の場合は、組織が人格を持ち、意思決定を行う。組織に所属する人たちには(言い方微妙ですが)人格も意思もない。組織の意思に従って動いているだけ。
企業の人が企業のセンスで大学を見ると、大学に人格があり、そこに所属する各先生には人格がないものと思い込んでしまう。だから「**大学は」といった主語になる。
逆に、大学の先生(工学系の先生方は両方の事情を知ってるから別だけど)は、企業に所属する人の各人に人格があると思い込んでしまう。だから、論文や学会発表で、プライベートで連名してる会社員の勤務先名を平気で書いてしまう。これ、ほんとはマズイんですよ。勤務先名は、業務外では使っちゃいけない。これが書かれてしまうと、企業に所属してる人は、勤務先の組織としての意思を代表して連名したものと判断してしまう。
kikulog:研究組織:コメント欄より)

なるほど。どこまで一般化できるかわからないけれども、こういう考え方はありえるかな。大学の先生は大学から給料もらっているけれども、研究に関しては個人営業主の感覚が強いものね。

大学にもよるけれども、基本的に研究に関する各種経費は研究費から出す。そして、研究費は、自分で稼いでこないといけない。なので、出張費は出張費に当てられる研究費があれば、出張費として申請可能。国際会議参加費も同様。雑誌論文投稿時に別刷代(事実上の掲載料。掲載してもらった方が払うのが普通の意味と違うところ)も同様。各種実験に使う備品・試料代も一緒。学生をアルバイトで雇ったときの費用も一緒。もし、研究費がないのに、上記のような費用が発生したらどうなるか?自腹で払うしかない。だって、財源ないもの。

財源がある場合には、だいたい会社と一緒。ただし、財源は個人や研究グループ単位でつくので、上司に稟議書を回す必要はない。また、発注も自分で行ってよい(というか自分で行わなければならない)。ただし、国立大学の場合は高額(100万円以上)の場合に入札をしなければならない。

研究費をとってくるのもある意味では会社と一緒かな。プレゼンをして、予算をとってこなければならない。プレゼンする対象が社外(大学の外)であることが多いぐらい。国が用意している競争的資金の代表的な科学研究費補助金で平均採択率5分の1、他の財団法人の研究費補助は5分の1〜三十分の1ぐらいの採択率かな(分野によって大きくことなる)。

何を研究しなければならないのかは、ほとんどの場合、大学の教員一人一人が自由に決めてよい。例外としては共同研究をしている場合やテーマ付き研究費補助に採択された場合がある。どこの会議や雑誌に論文を投稿するかも自由。誰と組んで研究するかも、大学の知財方針とかち合わない限り自由。最近は、時限付きのアカデミックポストが多くなったので、業績をあげられないならば、個人営業主と同じように破産する(契約の更新をしてもらえない)。

なので、私のまわりの先生方の流動性は高い。教員が30人弱しかいないのに毎年入れ替わっている。

そう考えてみると大学=商店街 or 百貨店、大学教員=テナントという関係がぴったりくる。

  • 大学のポスト(空き店舗/空きスペース)は一定なので、自由に店舗数を増やすことはしにくい。
  • 同じ商店街/百貨店で店が被るとまずいので、テナントを募集するときには一定の制限ができる。
  • 売り場面積や立地条件のよい店舗に移りたいならば、同じ商店街/百貨店で空きがでるのを待つか、他の商店街/百貨店へ移動するしかない。
  • 売上が悪ければ、契約を更新してもらえない。