定員割れを起こすと何が起こるか


中日新聞:私学助成、定員割れさらに減額 文科省 充足率50〜68%の196校

文部科学省は12日、定員割れの学部・学科がある私立大・短大に対する経常費補助金を本来の額から削減する減額率を、本年度から強化することを決めた。定員充足率が50%以下の場合は現行と同様、補助金交付の対象外とする。

 助成額の削減を求めた政府の「骨太の方針2006」に沿った措置で、文科省は「定員規模を適正化し、経営改善に取り組んでほしい」としている。

 文科省によると、定員充足率が50%超で59%以下の学部・学科に対する減額率は昨年度までマイナス15%だったが、本年度はマイナス18%とし、来年度はマイナス23%に、2011年度にはマイナス45−50%まで強化する方針。

 昨年度までマイナス12%だった定員充足率59−68%の学部・学科についても、本年度はマイナス15%とし、今後さらに減額率を上げる。

 本年度の入学者数で見ると、定員充足率が50−68%で、今回の減額率強化の対象となる大学・短大などは計196校あり、1校当たり平均224万円減額されることになる。

Asashi.com:文科省補助金、定員割れ私大の減額拡大

文科省補助金、定員割れ私大の減額拡大

2007年03月02日09時29分

 文部科学省は、私立の大学と短大、高等専門学校への補助金を大幅に見直し、07年度から実施する。定員割れしている学部の統合や廃止に取り組む大学への補助金を新設する一方、定員割れを放置する大学への補助金のカット率を、現在の最大15%から5年後に3倍程度へ引き上げる。私立大などは定員割れが半数に迫っており、「全入時代」を迎えてさらに増えるのは必至。文科省は私学助成の「アメ」と「ムチ」で現状の改善をはかる。

 私大などへの補助金は、学生や専任教員の数などで金額が決まる「一般補助」が中心で、05年度は全991校のうち879校に年間約2200億円が出ている。一般補助は、「定員確保の取り組みを促す」(文科省)狙いから、定員割れになると最大15%減額される。

 それでも、定員割れが生じている私大などは45%に達している(06年、日本私立学校振興・共済事業団調べ)。ここ数年、少子化が進む中でも、生き残りをかけて短大が4年制大学に改組したり、大学が学部や学科を増やしたりする動きが続き、思うように学生を集められない例が目立っている。大学当局が定員割れ学部を見直そうとしても、教授会が抵抗するケースも多いという。

 文科省は「定員割れは、大学側の考えが世間の求めからずれている表れ。国費を投入し続けることに国民の理解は得られない」と判断。「努力しない大学を延命させる」と批判が強かった補助金体系を一部見直し、定員割れの学部について募集停止や定員減、統合などに取り組む大学向けに「特別支援経費」(4億円)を新設して改善策を後押しする。

 定員割れに伴う補助金のカット幅も、5年かけて順次拡大していく。ただ、小規模校への影響が大きいため、「地域の中核になっている」といった各校の事情を考慮する方向だ。

 同省は、一般補助とは別に個別の項目に基づいて配分し、ほぼ一貫して増額してきた「特別補助」も見直す。

 特別補助は「社会人を受け入れる」「海外研修を行う」など項目が38にも分かれ、項目ごとに上限額があるため、大学側がむやみに多くの項目で補助金を申請し、結果として特徴が出ないきらいがある。新しい仕組みでは38の項目を3分野に大ぐくりして上限を分野ごとに改め、各大学が力を入れたい項目に特化しやすくする。文科省は「特徴が出れば定員割れの改善にもつながる」(私学助成課)と見ている。

 文科省は07年度から私立向けの一般補助を36億円減額し、国立大でも04年の法人化にともなって「運営費交付金」を毎年1%ずつ削減している。その一方、07年度予算案に、世界的な研究拠点作りを支援する「21世紀COEプログラム」を発展させた「グローバルCOEプログラム」用に158億円を計上するなど、競争的資金を増やしている。大学間の競争と、それに伴う再編・淘汰(とうた)に拍車がかかりそうだ。

現代教育新聞: 定員割れ私大 助成金減額幅、最大3割へ

文部科学省は、全体の4割を占めるといわれている定員割れ私立大学への補助金助成を見直す方向で審議を進めている。年明け1月に発表される予算案の決定に反映させる見通しで、補助金の減額幅を最大30%まで拡大する考えだ。

 少子化による「大学全入時代」を控え、受験人口は毎年2〜3万人ほどずつ減少しており、学生確保のため各大学は知恵を絞らざるを得ない。私立大の本年度入試での受験者数は、約5%減少している。
 私学への助成金制度に関しては、公教育以外の事業への「ばらまき」問題として議論され続けてきた。現在は、ある程度の割合まで定員割れした私立大学に対しては補助金額を3〜15%の幅で削減している状況だが、補助金制度にメリハリをつけることで、各大学がそれぞれ主体となって経営基盤の改革をしていくよう努力を求めていく。
 文部科学省は、平成19年度「私立大学等の経常費に対する補助」の概算として336,250,000千円を要求している。定員割れ解消に向けた具体的な改革に取り組んでいる大学には「特別補助」をつけるなどの検討も含め内容を固めていく。

本質的に良いことだと思うが、反面、毎年必死になって行っている定員確保をこれからも必死になってやらなければならないことがわかった感じ。以前、5号館のつぶやきのコメント欄で追求されていた、定員割れをすると運営交付金が減らされるペナルティは都市伝説じゃないの?という話に信憑性が与えられたような。

35歳PD at 2007-12-28 21:34

定員を下回ることは特に厳しく注意を受けるようで、場合によってはペナルティとして運営交付金を減らされるという話を良く聞きます。

毎回この手の話を聞いて思うのですが、実際にどなたか直接文科省に聞いたことがあるのでしょうか?また、実際にそれが理由で運営交付金を減らされたという例があるのでしょうか?
以前、一種の「都市伝説」ではないか、という話がでてきて、だったらどっちもどっちじゃないかと・・

5号館のつぶやき:国立大はお金が欲しくて定員を超過させていたのではありませんのコメント欄より)

国立大学の教員数や運営交付金の数は学生定員を基礎として計算されるため、定員数を減らすと教員が減り、運営費交付金が減り、結果として国立大学の研究力、大学院における教育力が低下してしまう。理由は以下のとおり。

  1. 学生に受けさせる講義数は学生数に依存せず一定(極端な話、学生定員が1人でも教えるべき内容は変わらない)
  2. 講義数は一定なのに、教員数が減れば当然のことながら、教員一人当たりの講義担当数が増える
  3. また、規模に関わらず事務仕事は一定の割合で発生する(入試、広報、学部・学科運営など)
  4. 事務仕事の量は変わらないのに教員数が減れば当然のことながら、教員一人当たりの事務仕事量が増える
  5. 以上から、研究に費やされる時間は減る
  6. 運営費交付金が減れば、人件費はほぼ削れない固定費なので、研究費から減らされるのは常識(どの私立大学、国立大学もこの手を使っている)
  7. 研究をやりたければ、研究費は外部から調達する必要がある
  8. 競争的資金は研究業績が良いものから割り振られるのが常識。
  9. 研究時間が減るので業績を出しづらくなり、外部資金の獲得もしづらくなる。
  10. 以上から、研究費がなくなる
  11. 以下、典型的な悪循環

まあ、国立大学に限った話ではないけれども。